愛の沼に沈むということ
元 蜜
愛の沼に沈むということ
私には5歳年上の夫がいる。
結婚15年。いつからだろう、生き方、金銭感覚、すべてにおいて意見が異なり、気づけば埋まらないほどの深い溝ができた。話し合ってもお互い歩み寄れず分かり合えない。今はただ安定した生活を送るためだけに一緒にいる。
もちろん二人の間に愛情はないし、今さら夫に愛されたいとも思わない。
でも、私にとって愛情とは、自分に自信をつけさせてくれる大事なもの。今、夫との間にそれがない以上、私はいつも愛してくれる存在を探し求めている。
そんな私に彼氏ができた。
彼氏とはネット上で出会い、誕生日が一日違いの同い年ということに運命を感じ、半年前から付き合い始めた。
夫とは違い、同じ趣味で、考え方も似ている私たち。彼氏に愛され、彼氏のことを愛することで、自分にも存在価値があるんだと安心することができる。
でも、たまに連絡が飛々になる彼氏。仕事や相手の都合もあるから普段は気にならないけれど、愛情が足りていなくて、今すぐ相手をしてほしいような淋しい夜はどうしても耐えられなくなる。
だから私には、彼氏ではない男性が別にいる。
二人の間に恋愛感情はないけれど、同じような淋しさを抱えている私たちは、何気ない連絡を取り合うことでお互いの淋しさを紛らわしている。
でも、私以上に孤独感を抱える彼。他にも連絡を取っている人はいるらしい。私のことを『他の人よりかは特別』と言ってはくれるけれど、彼から数日連絡がない時は不安で心が乱される。
だから私はまた新しい人を探してしまう。
もう止めたいと思いながらも、いつも安定して与えられる愛情を求めている私は、一体いつになったら心の底から満足することができるのだろうか……。
きっとそんな日は来ないだろう。愛の沼に沈むということは、たくさんの人を裏切り続けるということ。だから、この苦しみは私に課せられた罰だ。
完
愛の沼に沈むということ 元 蜜 @motomitsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます