序列365日位の太陽

朝之雨

第1話 プロロー……フラグ。


──戦場。

銃弾魔弾魔法が飛び交い、剣を切り結ぶ。戦場で戦士英雄の覇気が轟き。空には黒い暗雲が流れ、策士ここにありと勝者は勝ちどきを掲げる。

ただここに立つため彼らは行く戦の戦場を超え、常人を超える努力を積み重ねたか。

中には何十年かけてたどり着いた極地の戦士をさらなる才で押し潰す絶望も広がる。その英雄に英気を捧げ、付き従ってきた騎士策士たちはなにを思うか。

もしこの戦場に物語に登場する英雄や神が見れば嘆くか微笑むか。俺は笑うにかけるね……。なにせ現に初めてここに立った自称夢見る英雄願望者(ははっ、冗談)の俺はそんな戦場で考えた。やはり異世界ファンタジー最高。


俺は先ほど購入したラノベ『太陽の調和』を読み終え。本を閉じる。一応説明しておくと、この本は現代ファンタジーに分類される系のラノベで、異世界要素も存在する。もちろんみんな大好きラブコメ要素も存在し、悪魔っ子やケモミミ美少女、エルフ美人なんかも登場す。さて、お気づきかと思うが今までのプロローグ的な流れは俺の妄想である。この本を読んだうえでの。俺の本音、一番の感想を言おう。


──絶対にこんな戦場はごめんだ。


だって痛いのは嫌だし? 苦しいのも神が与えるとやらの試練や運命の挑戦とかもすべてごめんだ。なんで物語の主人公たちはこのやたら厳しい世界でそんあ笑顔を浮かべていられるのか。そりゃ、傍に「わたしが傍にいてあげる」「あなたの剣に──」とかイケメン顔負けのセリフを吐くような美少女がいれば頑張れるのか? 俺は三十秒ほど熟考した結果、ヒロインがそこまで頑張ってくれるなら俺頑張らなくてもいいよね? ふむ、自分で出た結論ながらクズだと思う。俺、津土時明の最大の欠点はやる気がないことだと自分でも自覚している。俺のクラスの担任にして教育指導の先生である吉永先生が、あの手この手で俺のやる気を引き出そうと頑張ってくれているのだが、悲しいかな、頑張れと言われると頑張れなくなるのが人間なのだ。俺は日々吉永先生の声援を無視して総合太陽学院の一年目の生活を送っている。総合太陽学院では世界中から頭脳戦闘能力で才ある者たちが勉学に励む学院なのだが、いまだにこの学院に俺が入学できたのか甚だ疑問だ。なにせこの学院では学年ごとに生徒に序列が付けられる制度があるのだが、俺、序列365位なんだよね。600百人中とか、1000人中の365位とかじゃなくて、365人中の365位。つまり最下位の劣等生なのだ。ただこの学院に入学できる時点でなにかしら才能があることが認められた証明になるから学院最下位でも風当たりはそよ風にも及ばない。なんなら序列上位の男友達が居るのだが、そいつのお尻を蹴っても笑って冗談だと思って許してくれるぐらいにはこの学院は温かい。そいつの名前、前風高志というイケメンなのだが、なぜ俺の友達でいてくれるのか。あまりにも戦闘能力が高い人間が優遇される学院にしては緩い温度感で逆に焦ってしまいそうになる時がある。俺はそう思いながらも今日の休日に新刊を買いに本屋さんに行く。ファンタジーを求めて。物語の中だけのものなら、いくらでも歓迎だから──。

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