99回ループした勇者の娘は魔王に転生した

第1話 99回のループ

「流石は勇者様の一人娘さんね。こんなに優しくて親切なのは、親子そろって似ているわねえ。」

ああ、まただ。

また、私は私を見てもらえない。

どんなに頑張っても私を見てくれない。

私が、どうがんばっても、私の肩書きは勇者の娘なんだ。

最後に自分の名前を呼んでくれたのはいつの誰だっけ？

もう、思い出せないほど、遠い昔だった気がする。

もうだめなんだ。

私のことは、誰もがうらやむ勇者の娘、と誰もが認識するんだ。

誰も、誰一人として私を見ようとしない。

私の肩書きばかりを見てたくさんの人が集まる。

もうたくさんだ、こんな人生。

何度そう思ったことか。

どうして私は99回もこんなくだらない人生を繰り替えしているのだろう？

どうして、神様は私に何回もこの人生を繰り返させるのだろうか。

何度繰り返しても、選択肢を少しずつ変えても、それでも人々は私ではなく私の父＿勇者を私と重ねて見る。

誰も私のことを見てくれない。

どうして？

もう嫌だ。

こんな人生散々だ。

私はそう思って、死んだ父＿勇者が好きだった種類のお酒を一気に飲み干した。

意識がぼんやりとかすむ。

あ、これ、やばいかも。

それが、最後に思ったことだった。