嬉野貴緒に鬼の嫁入り?

五木史人

妻・娑鬼

やたら縁起の良い名前の嬉野貴緒うれしのたかおは、鬼使いだ。


召喚した上級鬼の樓鬼るきが、金棒が欲しいというので、ネットで注文してあげたら、大喜びだ。

樓鬼るきは早速、街に出て、悪そうな人を追いかけまわし、どつき始めた。


樓鬼るきく~ん、ダメだよ~人をそんなんでどついたら」

「こいつはもう人権喪失した悪人ですぜ。地獄に落ちたらこんなもんじゃすまないくらいの」

「でもここはまだ人間界だからね」

樓鬼るきを制止すると、人権喪失した悪人が、

「お前、なんや!コラ!ぶっ殺すぞ!」

と言うもんだから、樓鬼るきに、意識を失うまでどつかれてしまった。


しかし、さすが鬼。

生かさず殺さず状態でどついている。

素人と違い、押しただけ死んじゃうなんて事は、ないらしい。

逆に恐い。


「ダメだって樓鬼るきくん」

「はあ、正月から清々しい気分になった。

そんな拙者は、嬉野貴緒うれしのたかおに、良き事をしたくなったぜ」

「良き事?」



嬉野貴緒うれしのたかおは、樓鬼るきに言われるまま、鬼を召喚した。


「初めまして嬉野貴緒うれしのたかおあたしは貴方の妻・娑鬼さきでございます。嬉野貴緒うれしのたかおの噂を聞き、嫁になりたしと思っておりました」


娑鬼さきは可愛く美しくはある。しかし鬼だから角がある。


可愛く美しい娑鬼さきは、少し照れながら嬉野貴緒うれしのたかおが映った生写真を提示した。


「なぜ?写真が?」

「拙者の副業」

「・・・」

「・・・」

「まあ、良い。しかし、この可愛い鬼は何?」

「最近、人間界では鬼嫁が流行だと聞いてな、主にもと思い」


「いや、鬼のような嫁であって、鬼の!嫁ではないのだよ!」

「人間界は複雑だぜ。似たようなもんでしょ?」

「似て非なる者だ」

「はあ、人間って細かい。そう言う訳で娑鬼さき今日のところは」


「えええええ、そんな、あたしの乙女心はどうするのさ!」

「じゃあ、とりあえず人権喪失した悪人をどつきにでも行くか?」

「良き♪」


「主、安心してください。良い人には手を出しませんから♪」

そういって樓鬼るき娑鬼さきは、街へ狩りだして行った。




        


      完


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