つま先立ちの感想論 ~低評価レビューのあれやこれ~

牛戸見しよ蔵

初めまして

 右を見ても左を見ても多種多様なエンターテイメントが溢れるこの時代。

 投稿サイトには小説や漫画が公開され、頻繁に行われているコンテストで書籍化が決まり個性豊かな作品が世に出ていくのを横目に眺めるこのご時世。

 対人関係にも向き不向きがあるように作品にも好き嫌いが必ずと言っていいほど存在します。それは既に書籍化された作品────言わば「世に認められた作品」にも言えるものです。


 今から約二年前の春頃、私はある小説を購入しました。近所の書店に立ち寄った際にタイトルとあらすじに惹かれて何度かチラ読みし、ようやく決心がついてレジに持っていった一作です。偶然開いたクライマックスのシーンに釘付けになってしまったこの作品、一体どんな面白いストーリーが待ち受けているのかと期待に胸をふくらませていました。


 ですが、結果は散々でした。作品自体のレビューではないので具体的にどこが悪かったなどは言えないのですが、期待していたよりあっさり物語が終わってしまった。拍子抜けとも言うのでしょうか、読了後はまさに幻想を打ち砕かれたような心地でした。ハッキリ言って「面白くなかった」のです。巡り合わせと熟慮が足りなかったのでしょう。紙の本で購入したこともあり確かにモヤモヤとした感情は残りましたが、その時はそれほど気に留めることでもありませんでした。苦い思い出は心にしまい、私は静かにこの作品とオサラバしました。



 一方その頃、頭の中では──。


「ペッチョラビャッぺァァァア!!!」


「おいおいおいおいどうしたんだよ感情」


「どうしよう理性、イヤな問題にぶち当たっちゃった」


「……なんとなく予想がつくが一応聞いておこうか」


「少し前、あらすじとチラ読みしたストーリーに惹かれて買った小説があるだろ? それがいざ読んでみると期待してたのに全然刺さらなかったんだよ!!」


「……はぁ。だからモヤモヤを吐き出すための低評価レビューを書きたいと」


「そう、さすが理性! 分かってるね~」


「記憶共有してるんだから当たり前だろ。で、それのどこが問題なんだよ」


「実はレビューを書いたはいいんだけど、気付いて読み返したら『全体的に面白くなかった』とか、マイナス発言だけの空っぽな内容になってたんだよね。これってあからさまなアンチコメントじゃん? 他のレビューの雰囲気も濁しちゃうし投稿するのやめようかと思ったんだけど、やっぱりモヤモヤが残るから誰かに見て欲しい気持ちもあって……」


「なるほど。要はただヘイトするだけじゃない低評価レビューを書きたいというわけか」


「それで奇声を上げてました」


「李徴子もびっくりの発狂ぶり」


「ついでに言うとその作品、出版されたのも購入したのも数年前なんだよね」


「お前のしぶとさ庭に生える雑草レベルじゃないか?」



「────ゴホン、それじゃあ低評価レビューについて迷える感情のため、『低評価レビューを付けるときに心得たいこと』、『低評価レビューのメリットとデメリット』、『レビューを書いても愚痴が止まらないとき対処法』の三つを紹介していくぞ」


「何でそこに絞ったの?」


「人生経験少ないからネットから拾った情報も加えてこれぐらいしか考えられなかった(すみません)」


「切実~」




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