第6話
暗い部屋
一人の女性が端末にむかっていた。
「また失敗ね・・・。今回はうまくいくはずだったのだけど」
あの女が誘拐した人間には到底殲滅できない数の獣を揃えた。絶対に他の世界から送り込んだ事はバレていない。
通常なら奴らは事元犯罪以外は動かない。たとえその世界の人間の命が亡くなろうと他の世界に過剰に干渉する事は無いのだ。
あの状況であの男あの場にいた事。そして村を救う行動を起こす事は想定外だった。
「今回の件ではあの子達は動いてないはずなのに・・・。でもあの男があの場所にいたという事は・・・」
女はため息を吐き飲み物を口にする。
「あの子達がその気になればすでに私はこの世にいない。あの子達はこの世界の利益を守るだけ。私と基本的に利害がぶつからない。私など全く眼中に無いはず。邪魔なのはあの男だけ。でもどうする事も出来ないか・・・」
女は端末に向かい次の行動を起こす。
「でも次は流石にあの男でも邪魔は出来ない。これ以上邪魔されたら本当に赤字になっちゃう」
女はそう呟き端末をいじるのだった。
事元監査官と呼ばれる機関の一室。
男は端末に向かっていた。最近はで払っていた為、事務作業が溜まっていた。
男の名は
その部屋にもう一人、人形の様に可憐な少女がソファーに座ってくつろいでいる。瑠奈と呼ばれていたホムンクルスの少女だ。
事元監査官とは、星団国家の防衛軍の機関の一つで主に他の世界にこの世界からの事元犯罪を防止する為の機関だ。
通常、防衛軍ではなく公安が行うような仕事だが、流石に他の世界にこの世界の公安組織が介入することは事実上不可能な事だった。普通に能力不足なのだ。
何故そのような機関が必要なのか?
この世界は文明が発達しているが、失われた文化も多数ある。
文明レベルの低い世界を調査する事によって失われた文化を研究する事も必要なのだ。
それを行うのが、検索者協会という組織だ。
ただ、検索者協会は民営で検索者の補助は行うがその検索者に対する責任は持てない状況にあるのだ。
つまりほぼ検索者は野放しなのだ。
他の世界で好き放題やっていいと勘違いする人間も出てくる。
酷い時には検索するだけのはずがその世界を滅ぼす一歩手前の状況になった事すらあった。
そんな事になればこの世界でも利益を損なう事になりかねない。
この世界は全ての世界と併合し、共存する事を目指している。
けして占領ではない。占領しようと思えば今すぐでも出来る。
ある文明レベルまで到達しないと表だった接触は禁じられている。
それを破ればただの侵略者になってしまい後に遺恨を残す結果になってしまうからだ。
話を戻すと、単純に勘違いした検索者を取り締まる機関が必要なのだ。
それが事元監査官と呼ばれる機関の目的だった。
不意に一室の扉が開き、一人の少女が入ってくる。それを見た瑠奈の髪飾りが赤から青に近くなった。
「ノックぐらいしろ」
入っていき少女の名は
「え~、可愛いい娘にもっと優しくしてもいいじゃない?。お父さん」
男はため息は吐き、少女を見る。
「仕事中は少佐と呼べ。このバカ娘」
「はいはい。解りした。お父さん。この前の取り調べの報告に来たのよ。」
男は一瞬顔を顰めたが、すぐに無表情に戻る。
このバカは言っても聞かないヤツだ。仕方ない。
「それで、例のホムンクルスはどうだった?」
それを聞いていた瑠奈がピクリと反応する。気になっていた様だ。
「あのホムンクルスは正常だったよ。信じられないけど正規品だったよ。後あの女はry・・」
報告は常図ね予想通りだった。
ただ、この子は話出したら止まらない。
もう殆ど報告は終わってるのだが、まだ喋ってる。
この子も今年で十九歳だ。
俺が十八の時の子供だ。
この世界の人間は十六歳で成人を迎える。教育も十五で一通り終わってしまうのだ。
この世界の人間は大体十五から八十歳ぐらいまで容姿も体力も変わらず、それを過ぎると段々と老けていき、寿命は百八十ぐらいが平均だ。ただ、この世界では容姿を偽る事はいくらでも出来るので本当の歳は外見では解らない。
瑠奈もこの子が小さい時は良く面倒を見てくれた。瑠奈も見た目はこの世界では八歳ぐらい(あの世界では十二歳ぐらい)なので、その頃はとても可愛らしかった。
今では鬱陶しいのか来たら髪飾りが青くなるが、本当の意味では嫌って無いのは解っている。本当に嫌なら髪飾りは黒に近くなる。まあ恐らく自分より成長した明が羨ましいのだろう。
この子は俺の事を父と呼んでるが、もうこの世界では家族という概念は失われつつある。
何故かと言われたら、若い者に子孫を任せられなくなったからだ。任せていたら少子化で世界が滅んだだろう。完全に
人造母体というモノが出来てしまい、女性は代理で子供を産んで貰えるようになったのだ。中には普通出産もいるが割合は極小だ。
子育てはもう、親の仕事ではなくなった。当時はかなり子育ての為の税金が上がったらしいが今はそれが普通だ。
「それでね~。あのホムンクルスだけど後の事話したら、モードを白くして涙したのよ。ホムンクルスが泣いたとこ初めて見たよ」
あのホムンクルスは製造元を調べたらやはりあの世界から魂の根源を採取された事が解った。
あのホムンクルスにはこの事を告げられていない。
本能というものは思いの外ホムンクルスの行動に多大な影響を与えるのだという事だろう。
「なんで泣いたのかって、聞いても解らないって首を振るの。それでね~ry」
お前はまだ喋るのか。そんな事を思ってると不意に入口の扉が開いた。
ノックは無かった。
こいつもここに来るとはね。今日は厄日なのかもしれない。
「死亡フラグが立ちすぎてる彼女を何とか救いたい」というゲームの世界に転生してしまったので彼女を救おうと思います?。 @osushi4042
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