第5話
「もしも~し、警察屋さんですか?。私、誘拐されちゃったみたいです。助けに来てくれませんか?。・・・・、へっ、今忙しい?。見たいテレビがある?私も早く帰りたいんですけど!ry」
スマホにむかって少女が喋っているが、内容が酷い。
とてもではないが、本当の事だとは思えなかった。
ちょいイケメンの男も自分もスマホを確認してみたが、圏外と表示されていた。つながるはずが無い。
茫然と少女を見ていたどっかのバカだったが、彼女の行動は虚偽だという結論にした。多分頭がおかしいのだろうと。こんなのを召喚した自分を少し後悔した。
『ヤバい奴を召喚しちゃったな~・・・ozr。でもおかしい、シュミレーターではこんな事は起こらなかった・・・。何故?』
不意に袖をつかまれる。そこには亜理紗と呼ばれたホムンクルスが普段見せない表情で何かを訴えている様だった。
どっかのバカは、優しく亜理紗の頭を撫でる。
「大丈夫よ。心配しないで。あの村は必ず守って見せるから・・・」
そう言った直後だった。
ちょいイケメンの男が突然姿を消した。なんの脈絡もなく突然にだ。
「は・・・?」
何が起こっているのか解らない。
そして、目の前の時空が歪む。
新たに3人の人間が目の前に現れたのだ。
「私、今ムカついています。ドラマがいいとこだったのに・・・。貴方は許さない!」
現れた一人が銃らしきものを構え、こちらを睨んでいる。
さっきまで、スマホでしゃべっていた少女がいつのまにかこちらに武器らしき物を構え、こちらを見ている。
「時空誘拐の現行犯として貴方を拘束します。抵抗は無駄です」
「亜理紗ちゃん!?」
どっかのバカは、咄嗟にホムンクルスに時空移動を促すが、ホムンクルスは首を横に振るだけだった。
「私が話してる間にこの場所の装置は後ろの人が全て無効化しています。観念しなさい」
「装置を・・・無効化・・・って、ありえない・・・」
後にいた冴えない男がこちらに歩いてくる。
「お疲れ様。相変わらず見事なお手前ね!」
「お世辞を言っても何も出ないぞ」
「相変わらずつれないわね。ちょっとは私に優しくしてくれてもいいじゃない」
冴えない男はギャルっぽい少女を相手にせずどっかのバカに話かけた。
「誘拐した男は元の世界に送還した。あの男の時間を巻き戻したから、この場の記憶は残ってない。今頃元の世界で呆けてるだろうよ」
どっかのバカは茫然としながらつぶやいた。
「時間を巻き戻した?・・・そんな・・・そんな事が出来るのは私達の世界でも・・・」
「お前はここまでだ。大人しく保釈金を収めろ。只、一つ気になる事がある。そのホムンクルスは違法製造されたものか?嘘は無駄だぞ。大人しく喋れ。違法製造ならこの場で処分する」
どっかのバカは呆けていたがその言葉に意識を戻され必死に懇願してくる。
「この子は正規品です!。調べてもらえれば解ります。だから、・・だからこの子は何も悪くないんです!。信じてください!。お願いします」
どっかのバカはホムンクルスを守るように抱き着きながら答えた。
「ふむ、興味深いな。嘘ではない様だ。少尉。この娘を送還しろ。後でじっくり話を聞かせてもらえ」
「ハッ、了解しました。さっさと行くぞ!」
「待ってください!。あの村はどうなるのでしょうか?。あの村には何の罪の無い人々がたくさんいます・・・。どうか、どうか」
「我々は他の世界に無暗に干渉するわけにはいかない。諦めろ」
「そんな!?。待ってーッ。」
その一言を残し、後に来た3人とどっかのバカとホムンクルスは姿を消した。元の世界へと時空移動したのだ。
ギャルっぽい女と冴えない男が残った。
「俺は少し用が出来た。お前も早く帰還しろ」
男がそう言うと不意に目の前の空間が歪んだ。
現れたのはホムンクルスの少女、瑠奈だった。
「瑠奈ちゃん久しぶり~。相変わらず可愛いね!」
女が瑠奈に抱き着くが、瑠奈の髪飾りはまさに真っ青だった。
無表情だが、瑠奈は女をじっと睨むように見ている。かなり機嫌が悪いようだ。
まさに飼い犬がうっとうしがっている様な感じだ。
「瑠奈、悪いがコイツと先に帰ってくれ。1時間後にまた来てくれ」
瑠奈は頷くとすぐに時空移動装置を起動した。
「あ、ちょっと待ってry」
女は何かしゃべろうとしたが、消えてしまった」
「さて、俺は用事を済ませて来よう」
暗い森の中、男は歩いている。
そこはには近くに村がある。
不意に獣の唸り声が聞こえてくる。かなりの数だ。
「サーペントタイガー。やはりこの世界の生物では無いな。検索用兵器ではこの数と戦うのは不可能だ」
現れたのは体調3メートルはある獣だ、かなり凶暴で一頭でも村に入れば全滅の恐れがあるだろう。
「あの召喚された人間ではまともに戦う事すらできなかっただろう。あのホムンクルスは恐らく・・・・」
男は一度村の方に視線を向けたがすぐに視線を獣に戻した。獣は恐らく百頭を超えている。
男は銃をかまえた。フォトン・イレイサー。超文明の究極の光子兵器だ。
「この世界の自然現象なら何もしなかったが、これは調べる価値がありそうだな」
獣が男に向かって数頭襲い掛かってくる。すごい迫力だ。だが男は表情も変えず只引き金を引いた。
それだけで襲ってきた獣は跡形もなく消え去ってしまった。
それを見た獣達が一瞬たじろぐ。しかし男は許す気は無い様だ。
「お前達には恨みは無い。が、この世界の生物ではないお前達をここで見逃す事は出来ない」
男は躊躇なく引き金を引いた。それだけで百頭以上いた獣たちは全て消えてしまった。
不意に男の前の空間が歪む。瑠奈だ。
「あのバカの願いをかなえてやるのは癪だが、あのホムンクルスに懇願されたのだろう」
瑠奈はじっと主人を見る。
「ホムンクルスが犯罪に手を貸す事は無い。でも心の、そう、本能にはその自制心も勝てなかったという事だろう。恐らくあのホムンクルスはあの村の・・・・」
男は何か言いかけたが、そこで口を紡いだ。
男はそっと瑠奈の頭を撫でてやる。さっきまであんなに青かった髪飾りが赤く染まる。
「あのサーペントタイガーの群れも気になる。俺達も帰還しよう」
瑠奈は主人からそう告げられると、時空移動装置を起動する。
男たちはその場から跡形もなく消えてしまった。
その世界の人間は誰も知らない。
こんな事態になって村が滅びかけていた事も。
そして人知れず村を救った男の事も。
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