第4話

瑠奈と出かけようとした時だった。


俺の端末に連絡が入ってきた。


「あいつからか・・・・」


隣にいた瑠奈の髪飾りがさっきまで、あんなに赤かったのに、紫色に近くなる。


喋れないホモンクルスには感情を見せる為、アクセサリーがその役目をはたしている。


俺といる時はいつも赤い(非常に機嫌がいい)のだが、機嫌が悪くなると青く染まっていくのだ。


「今日は非番なんだけどな・・・」


苦笑しながら瑠奈の頭を撫でる。そうすると幾分青くなりつつあった髪飾りが赤にもどった。


「どっかのバカがまたやらかしてるみたいだ。手伝いを頼まれた。」


瑠奈は俺をじっと見つめている。


・・・そんな風に見つめられると非常に心苦しい。


まさに飼い犬が散歩をキャンセルされたような感じになっている。


おのれ、どっかのバカ。




一人のどっかのバカが、異世界の神殿の後地みたい場所で撮影の準備をしていた。


映された撮影機に向かって話しかける。


「こんにちは~。今日は勇者召喚をやるよ~」


どっかのバカはまたあの世界にカメラを向けて視聴者に話しかている。


視聴者のコメント・も好意的なものばかりだ。ただやはり少数ではあるがそれは犯罪だ、というコメントもある。


勇者召喚。普通に人攫いだ。


文明的に劣った世界の者をさらに劣った世界に強制的に時空移動させ、この世界の検索用兵器を貸し与え冒険させるのだ。


その世界の人々がこの世界の兵器を使用したところを撮影し、売り物にする。


特に、人が未知の物に遭遇した反応がこの世界の人にとっては娯楽にになっている。


驚愕の表情や、それを使用して悦になった人間の様子を面白おかしくコメントを付け笑い飛ばしているのだ。


「今回は~、糞女神役に挑戦したいと思います、えへっ。適当に~二人ぐらい低ランクの兵器を与えて~、あと冴えないおっさんに中ランクの解りずらい兵器を与えるの。」


コメントはかなり賑やかな事になっている。


「それで~。最初は冴えないおっさんに無能だとか言って追放するの。でも、きちんとフォローするから大丈夫。後からすごく強くなった所で前の二人と私をざまぁさせるの!。いい感じでしょ!。きっと面白い映像になると思うよ!」


どっかのバカだが見かけはかなり良い。異界の人間には女神様と納得させられる程だ。無駄にキラキラしている。


「それじゃ~。誘・・コホンッ、召喚する人の映像を映すねッ。ほら、この人達なんか良さそうでしょ!。この人たちにします。!」


映像には3人。1人は女性で制服を着ている。高校生なのだろう。スマホを操作している。見た目はギャルっぽくてあまり賢そうには見えない。


後の二人だが、ちょいイケメンといった感じでこれも賢そうには見えない男と、30代ぐらいのくたびれたスーツを着てるいかにも冴えなさそうに見える男が寂びれたバス停にいた。


「それじゃ~始めるよ~。亜理紗ちゃんお願いね!」


亜理紗と呼ばれた者はその場にいないが時空移動装置を操作できる事を考えるとホムンクルスだろう。


どっかのバカの前と後ろの空間が歪む。時空移動の前兆だ。


現れたのは画像に映っていた3人と、後方に1人可愛らしい少女が現れた。


現れた3人は最初は全く反応をしめさなかったが、ちょいイケメンの男が事態を把握し始めたのか騒ぎ出す。後の二人は何故か全く無反応でギャルに至っては未だにスマホに熱中している様だ。


「はっ?、な、何処だここ?、俺さっきまでバス停にいたよな・・・」


かなり狼狽えている。無理もないだろう。そこにどっかのバカが無駄にキラキラして話しかける。


「ようこそゼオグランドへ。初めまして。私は愛と美と闘争の女神アホロディータ。あなた達は勇者として選ばれこの世界を救う為、この地へと召喚されました」


その声は響くようなエコーがかかっていて神秘的だった。


「勇者?、召喚?、もしかしてラノベとかでよくあるヤツなのか?」


ちょいイケメンの男が何か興奮してとても嬉しそうにしている。とっかのバカは細く笑みを浮かべる。あの世界の人間はバカで話が早いと。


「ラノベ?、というものは良く解りませんが恐らくその理解で間違いないでしょう。あなた達3人はこれからこの世界の魔物を排除してもらう為行動してもらいます」


「という事は、残りの二人も?」


「私は貴方とそちらの女性、お二方を召喚したつもりなのですが・・・」


「という事はキミも勇者として召喚されたんだね!。俺は唖穂野葉嘉(アホノハキ)、よろしくな!」


男が少女に話しかけるが、少女は未だスマホに夢中だ。全く反応しない。


男は全く反応しない少女に苛立ったのか、肩に手をかけようとすると、初めて少女が反応した。


「何、何ですか?。貴方誰ですか?触ろうとしないで下さい。人よびますよ!」


男は少女の反応に少し驚いた様子だったが、すぐに気を取り直した様だ。


「いや、今の状況解ってる?。どうやら俺達は異世界に勇者として召喚されたみたいなんだ」


男がそう言うと少女は初めて周りを見渡した。明らかにいた場所と違う事に困惑する。


「は!?、何処ですか此処!?。貴方で誰ですか?。もしかして犯罪者ですか?。私帰りたいんですけど!。帰っていいですか!?」


「いや、キミは俺と勇者に選ばれたみたいなんだ。そこに女神様がいるだろ?。本当かどうか聞いて見れば解るよ」


男にそう言われると、少女は女神の方を見て驚いていた。


どっかのバカが少女に語り掛けた。


「あなたは勇者としてこの地に選ばれました。この地をお救い下さい。あなたにはその力があります」


少女は驚いた様子だったが、スマホを一瞥して話だした。


「勇者?。何言ってるの?。勇者って何かを成し遂げた人で職業では無いよね。召喚?、普通に人攫いの犯罪だよね。なんで人攫いのお願いなんか聞かないと行けないの?。私帰りたいんだけど、これって、ry・・」


少女が最もらしい事を延々に語り出した。結構ながい・・・。


流石にどっかのバカも予想外だったのか、少し慌てている。


少女が最後に通報すると言って、スマホを操作しだした。


流石に異世界。つながる筈がない。どっかのバカがそう思っていると、思いの外つながった様だ。はっ?。

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