第8話 旅の理由

 少し寂しい、そんな事を思っていると風が止みます。私は今、図書館での仕事の合間の時間に中庭にいます。


 ふと、ハーモニカを取り出すと奏で始めます。


♪♪♪


「にゃんこ族のキキリさんなのに悲しい曲ね」


 一曲奏で終わると館長のサリサさんが声をかけてきます。


「エヘヘ、バレた、死んだ妹への曲よ」


 私は心の底から強がります、でないと泣き崩れてしまいそうな気分です。


「ごめん、聞いてはならない事だったみたい」


 サリサ館長は下を向き言葉を探しているようです。ここは私の方から話すことにしました。


「妹は風邪をこじらせてね。にゃんこ族の里は田舎だから、栄養剤しか薬が無くて、簡単に死んでしまったわ。だから、私は死んだ妹のぶんまで世界を見たくなったから旅人になったの」


 私はハーモニカをしまうと何時もの明るいキキリに戻ります。


「サリサ館長、私は旅ができて幸せです。にゃんこ族は何処に行っても歓迎されます」

「よかった、キキリさんに笑顔が戻りました」


 サリサ館長が安心した様子でいると。


 不意に強い風が吹きます。まるで死んだ妹が喜んでいる気がしました。


「サリサ館長、キキリさん、こんな所で油うってないで仕事して下さい」


 タイムさんが私達を探しにきました。


 さて、お仕事です。


 今日も書庫を片づけた後、カウンターでゴロンの仕事です。

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花咲く、にゃんこ族の図書館 霜花 桔梗 @myosotis2

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