【よみきり】背伸びするほど、君が好き。

空豆 空(そらまめくう)

背伸びするほど、君が好き。

鈴香すずかは小さいなぁー」


 彼氏のなぎと歩いていると、凪は無邪気な笑顔を浮かべながら私の頭をポンポンと撫でた。私の大好きな笑顔。


 でも――私より3歳年上で、身長だって高い凪は大人っぽい。そんな凪に少しでも近づきたくて。


「小さくないもーん」


 私は背伸びをしてみた。これで凪との身長差がちょっと縮まる。――と、思ったのに。


「んー? 小さいままだけどー?」


 イタズラっ子みたいな笑みを浮かべて、凪まで背伸びをしたからその身長差は変わらない。


「ちょっとー!! もうっ凪まで背伸びしたら意味ないじゃんー!!」


 私は凪に抱きついて、なんとかかかとをつけさせようとしてみた。



 凪に見合う女の子になりたくて、せっかく今日はちょっと大人っぽい格好をしてきたのに。やっぱり私はいつまでたっても子供っぽいままだ。


 そんな自分に少し悲しくなった時、凪は前かがみになってふわっと私を抱きしめた。


 凪の大きくて温かい腕の感触と、大好きな凪のにおいに包まれる。

 ああ、好き……そんな気持ちが私の頭の先からつま先まで押し寄せてくる。


 けど……私ばっかりが好きなのは、ちょっと寂しい。そう思った時。


 凪は私の頭のてっぺんに優しくキスをして、優しい声で言った。


「背伸びしてる鈴香も可愛いけどさ? 俺は等身大のままの鈴香も好きだよー?」


 それはまるで、大人っぽい格好なんてしなくても、普段のままの私が好きだと言ってくれているようで。今のままの私を受け入れてくれているようで。嬉しさで胸がきゅっとなる。


 けれど照れた私は咄嗟に可愛い言葉なんて言えなくて。


「凪。ずるい。私ばっかり喜ばせる。私だって凪のこと大好きなのに」


 少し唇を尖らせた私に、凪はさらっと甘い言葉を言った。


「何言ってんの。俺だって大好きだから、鈴香のこと」


 返す言葉が見つからなくて、けれどどうしようもなく好きって気持ちで胸がいっぱいになってしまって。溢れそうなこの気持ちを、凪に伝えたくなった。


 だから私は、やっぱりつま先にグッと力を入れて背伸びをすると――


「――大好き」


 凪の唇に、キスをした。




 ――背伸びするほど、君が好き。(完)


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 読んで下さりありがとうございました。

 今回は、カクヨム公式さんの『お題で執筆!! 短編創作フェス』第三回目のお題、『つま先』を元に書いた読み切り作品となります。


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