第39話 白羽は幻黒に舞う

 6.0 haven が陥落するその前に茉莉花の想いがその身を抜写す。


 そこにはクダチとコーラスの他に鉄パイプを持って構えている暁 一条がいた。


「茉莉花‼︎ 」各々が口にした。


 何があったかは概ね察しがついた。

「ここを死守してくれていて助かった、礼をいう 」


 茉莉花の穴だらけになった異装がリネンとの戦いの壮絶さを物語っていた。


「着替えるから向こうをむいていて……くれないか 」

 そう言われた暁 一条は何気に横を向いて視線を外すと、茉莉花は素早く異装を展着しなおした。


 座り込んで再生に注力している茉莉花に向かって暁 一条は聞いてみた。

「茉莉花ちゃんって天使なの?」

「残念だが違う。ただのセラフィムだ」


 クダチが割り込み捲し立てる。

「茉莉花ーッ、大変だったんだぞっ &£$※£&$ ──── 」

 いっぱい説明されて訳がわからない、だが何とかなって良かった


「茉莉花さん、無我夢中どうなるかと ──── 」

 コーラスよ、上手くやって退けたな、ありがとう



 茉莉花は 6.0 haven が陥落したこと、リネンがこの世界の在り方に向き合い闘っていたことを説明していると鏡にガブリエルが姿を表した。


「伝令です。haven への再接続が確立されました」

「お姉さんって茉莉花ちゃんの友達? 出てきてウチの店においでよ」


 茉莉花は溜め息をすると

「ガブリエル、新しい避難所は見つかったのだな」そう言って続く言葉を求めた。


「速やかに帰還することをお勧めします。そちらの人間については、こちらにて対応しておきます」ガブリエルはニコやかに答えた。



「ああ、帰還する。だがこの2名はレリジョンさせない。わたしの麾下きかに加えるか使者としてここに残るか、選択させてやって欲しい」


「茉莉花、オレはオマエについていくよ 」

「茉莉花さん、わたしも一緒に行きます」


「ガブリエル、聞いての通りだ。この人については対応は任せるが尽力についての褒章を頼みたい 」


「俺もついて行くぜ。君のためなら何でもできると思うんだ、何かわからねぇけど 」

「そうか同じ意見で助かる。では、わたしのために少し寝ていてくれ」

 茉莉花の労りのボディーブローが暁 一条を静かな眠りへと誘った。



    約束していた通り 礼をする


     茉莉花は展着を解いた




 低次ここで起きた出来事は記録として残されても、ただ埋もれていくだけなのだろう。誰にも読まれることもなく、引き戻されて再び開き見ることのない数ある証跡の一つとして。


 新たな haven が誘う、ポータルを潜り抜けたその先は ────



「茉莉花。アイツ、記憶をガブに消されたのは残念だったな」

「そうか。わたしは助かったよ」

「どんなに頑張っても無駄ですよね、茉莉花さん」


「そうでもない、わたしはこう見えて押しには弱い」


 クダチとコーラスが茉莉花をジト目でみている。


「茉莉花さん、あの人は何を願うのでしょうか?」

「どうせテメェーの力でも出来るくだらないことじゃねーか」


「わたし達は知らない方が良いのだよ」



 暁 一条は店のソファーで目を覚ました。


「昨日の飲ませ放題キツかったな、片付け途中で眠ってたか…… ん?」

 胸元に羽が乗っていることに気づくと親指と人差し指で柄をつまんで羽をクルクルとねじって回し眺めていた。


「必ず Destiny Nation でNo.1ホストになってやる」

 そう誓うともう一度ソファーに寝転がった。






  6.0 haven など数ある haven避難所 の一つでしかない

  【ZAIRIKUザイリク】も何処かに幾つもあるのだろう



  だからこうしてまた表れる




「伝令です、あなたの担当する地域は ────



     ──── には十分な配慮が必要です。




「──── ポータルに接続してください」

「条件が成立しました。ポータルに接続してください」

ガブリエルは繰り返して云う。



「ADAPTした」



おわり

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都市熾天 カザリナの月 @KAZARiNA_LUNA

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