第4話 股間

 だから僕は味をしめて、ヨガ教室の日は、毎回〈稲子ちゃん〉の唇を《うば》うことにしたんだ。


 〈稲子ちゃん〉も僕と同じ日に、ヨガ教室へ来るようにしてくれたのは、きっとピンクのレオタードを見せる事も、僕へのお礼だと思っているんだろう。


 僕がトイレに行くふりをして、教室を出ると、〈稲子ちゃん〉も出てきてくれる。

 事務室の机の下に、僕と〈稲子ちゃん〉は潜り込んで、唇を重ねるんだ、もう強引にはしていない。

 その必要がないんだ、〈稲子ちゃん〉はもう慣れたのか、僕の背中へ手を回してギュッとしがみついてくる。


 時々、「はぁ」と吐息といきもはいているぞ。


 「〈稲子ちゃん〉は、色っぽくなったよ」


 「やだな。 ふぅん、そんな事言わないで」


 本当にそう思う、二年生になった〈稲子ちゃん〉は胸が大きく成長して、僕の視線を釘付くぎづけにしてしまうんだ。

 ふくらみを僕から隠そうとはしないし、ずっと見てても嫌とは言ってはこない。

 だから僕はキスをしながら、良い事を思いついたんだ。


 「〈稲子ちゃん〉を動画でらせて欲しいな」


 「えぇー、やだぁ。 そんなの恥ずかしい」


 「〈稲子ちゃん〉は、すごく可愛いから、動画で残しておきたいんだよ」


 「えっ、私は可愛いくはないよ。 でも〈町田君〉は、私のことを可愛いと思うの」


 「うん、思っているよ。 すごく可愛いし、レオタードもめっちゃ似合っている」


 「ほんとなの」


 「ほんとも、本当さ。 だからキスがしたかったんだよ」


 「んー、少しだけなら。 でも他の人に見せたら許してあげないよ。 絶対に見せないでね」


 「うんうん、僕の宝物を見せるはずがないよ」


 〈稲子ちゃん〉は「私が宝物」ってつぶきながら、真っ赤に全身を染めながらも、動画を撮らせてくれた。

 ポーズをとってと言っても、ぎこちなく動くだけだ、けれどそれがすごく〈稲子ちゃん〉らしい、ベリープリティ〈稲子ちゃん〉だ。


 僕と〈稲子ちゃん〉は、ヨガ教室がある週に一回、キスをしてから動画を撮っている。

 キスを重ねるごとに、僕達のキスは進化もしているんだ。


 〈稲子ちゃん〉の小さな歯茎はぐきめてもみたし、可愛い舌を吸ってもみた、口の中をジュルジュルとかき回すこともしてあげた。


 進化のたびに、〈稲子ちゃん〉は「やだぁ」と言うのだけど、僕の背中に回した手の力が強くなっていく。


 キスをする時に、〈稲子ちゃん〉を抱くことになるんだけど、すごく柔らかくて気持ちが良いんだ。

 特に胸の部分がポヨンポヨンとしているがすごいんだ。


 汗に濡れたレオタードを見るのも最高だ、肌にピッタリと張り付いて、〈稲子ちゃん〉がまるで裸のように見える。

 特に胸の先が、チョンチョンとなっているが良い。


 「ううん、そこのアップは撮っちゃ、いやだぁ。ムズムズしちゃうの」


 股間のアップを撮ろうとしたら、〈稲子ちゃん〉が両手で隠してしまった。


 「むっ、手をどけてよ」


 「もお、〈町田君〉のエッチ。 そこはダメ。 もう少し大人になってからにしてよ」


 「えぇー、もう少しって、いつなの」


 「うーん、高校生かな。 もう一回キスしても良いから、怒らないでね」


 「しょうがないな。 高校生になったら良いんだな」


 〈稲子ちゃん〉は返事の代りに、初めて自分からキスをしてくれた、それでまあ良いか、と僕は思った。

 僕も案外あんがいちょろいところがあるな。


 〈稲子ちゃん〉の口数は徐々に増えて、学校での出来事も、普通に話せるようになってきた、今みたいに言う事を聞かない時もたまにある。


 最初はプルプルと、チワワみたいに震えていたくせに、慣れって怖いもんだ。



 ある日僕がエレベーターの中で、〈稲子ちゃん〉の動画を見ていたら、それを背後から覗き込のぞきこまれてしまった。


 うっ、マズイぞ。


 覗き野郎は、隣に住んでいるFランク大学にやっと合格した、小太りのお兄ちゃんだ。

 油断をしていたな、げ口をされたらヤバいな。


 「うへへっ、可愛い子だね。 もっと見せてくれよ。 お金はガバッと払うからさ」


 課金のためにお金は欲しい、けど動画は見せたくない、〈稲子ちゃん〉は僕のものだからな。


 そこでパッとひらめいた、〈パッ〉とはどうあれ、僕は頭が良いんだ。

 盗撮小僧の〈はると〉から、動画を安く買えば全てが上手くいくぞ。


 「お兄ちゃん、この子より、もっと可愛い子の動画があるよ」


 この売り文句は嘘じゃない、〈はると〉は学年で一番の〈れいなちゃん〉の動画を、一番熱心に撮っていたはずだ。


 「うほぉ、そうなのか。 そうなんだな。 うほぉ、動画は言い値で買い取るよ」


 学校で〈はると〉から、〈れいなちゃん〉の動画を、三本千円で僕の携帯へ送らせた。


 「うしし、僕の芸術作品が評価されたぞ。 動画に命をける事にするよ」


 何が芸術作品だ、単に女子中学生の着替えシーンじゃないか。

 芸術作品と呼べるのは、僕が撮った〈稲子ちゃん〉のピンクのレオタードだ。


 「ほら、可愛い子でしょう。 学年で一番なんだよ。 特別価格の一本一万円で分けてあげるね」


 「うひょー、とんでもなく可愛い子じゃないか。 本当に三万円で良いのか」



 勝てなかった、またもやガチャ運に負けてしまった、カスしか出ないから泣いてしまったじゃないか。


 リベンジするしかない、今度は〈はると〉から、〈れいなちゃん〉の排泄はいせつシーンを手に入れたんだ。

 はぁ、排泄シーンをどうやったら撮れるんだ、そこにいたるまでには、驚愕の創意工夫ならびに、たゆまない努力が必ずあったはずだ。

 もはや尊敬にあたいするぞ。


 僕が事務室で好奇心に負けて、〈れいなちゃん〉の動画の創意工夫と努力に、感心していたら、またも背後から覗き込まれてしまったんだ。


 「うっ、私の動画を見ていると思ったら、〈れいなちゃん〉の方が好きなんだ。 不潔ふけつよ。 〈町田君〉なんか、大嫌い」


 「えっ、ちょっと待ってよ。 僕は創意工夫と努力を見ていただけなんだ」


 〈稲子ちゃん〉のピンクのお尻を必死に追いかけたが、もう一歩のところで、お家に中へ逃げ込まれてまった。



 それから〈稲子ちゃん〉は、学校にも来なくなってしまい、ヨガ教室も閉まったままだ。


 お母さんが聞いた噂によると、〈稲子ちゃん〉のお父さんが、不倫をしていたらしい。

 その現場を〈稲子ちゃん〉に発見されて、大騒ぎとなり、離婚してしまったようだ。


 〈稲子ちゃん〉は、お母さんに引き取られて、田舎へ引っ越してしまった。


 僕はヘナヘナと崩れて、悲しみに明けれるしかなった、〈稲子ちゃん〉が好きだったのに。


 高校生になったら、股間を見せてくるのは、嘘だったんだな。

 よくも僕をだましたな、もう女なんか一生信じられない、クズの僕よりも、ひどい生き物だ。



    ― 完 ―


「騙されたフリをして結婚したんだ、不倫の慰謝料をたんまり盗ってやる」に出てくる、クズ部長の青春時代です。


https://kakuyomu.jp/works/16818093082621103273



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死んで中学生に戻った僕は、クズだから、助けた君にキスを要求し続ける 品画十帆 @6347

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