第4話 ロレンツィオ、あなたは私だけのものよ。

 奈落は、魔獣を倒しても倒しても現れてくるとしか思えない、通路としか言えなかった。とにかく前に進むしかなかった。どのくらい進んだか分からなかったが、どのくらい時間が経ったかもわからなかったが、遂に出口までたどり着き、外に出ることができた。そこが、異世界だということだけがわかった。別段、極端に変わったところがあるわけではなかったが、そう直観したのだ。

「最高神め。何をさせるつもりなんだよ。」


 お~い、ロレンツィオ君。この世界のことを教えてあげるね。それから、ちょっとだけギフトをあげるよ~。大いに感謝してね~。


 そして、ロレンツィオはある都市に入った。彼の身分証明書であるメダルは、その都市への入場を許可させた。

「あんた。凄い腕っぷしだな。それを見込んで頼みがあるんだが、・・・もちろん報酬は弾むよ。」

 彼が、ちょっかいをかけてきた一団を鎧袖一触したのを見て、見るから都市の実力者であることのわかる恰幅のいい男が現れた。

 彼に、乱暴な女を懲らしめてほしい、都市の屈強な冒険者が何人も痛い目にあったのだと説明した。だから、その女を、その女冒険者を懲らしめてほしいのだと言う。報酬額と他の条件が良かったので、引き受けることにした。すると彼は恰好を崩し、ロレンツィオを居酒屋に連れて行った。彼の指さす方向に、簡易な鎧を来た、いかにも遠いところから来たという感じの女冒険者がいた。女にしては長身で、黒髪のナイスバディの女だった。彼女は注文した料理の来るのを待っている風情だった。

「あの女・・・かなり強いな。魔力も腕っぷしもな。」

「まさか、怖気づいたのか?」

「強い奴を見るとワクワクするんだよ。中だと・・・色々と壊し過ぎるだろうから、外に連れ出すよ。」

「すまんな疑って。しかも、なかなか配慮してくれて・・・頼むぞ。」

 するとロレンツィオは、チャッラーン、ヘッチャ・・・と、周囲の連中には訳の分からない歌を口ずさみながら、女に近づいていった。

 女はその声が聞こえていたが、わざと無視した。殺気と攻撃してくる素振りを感じたら、即座に対応できるように、わからないように身構えていた。しかし、その男はそのまま彼女の向かい側の、テーブルを挟んだ椅子に座った。

「お前は何だ・・・え?ロレンツィオ?」

「魔王様がどうしてこんなところにいるんだ、ラウラ?」

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前世のトラウマを消してあげてね(最高神はまだお願いをする) 確門潜竜 @anjyutiti

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