第2話 出逢いと別れ
それから数年後、真央は『
不思議なことに、
しかし、一つだけ違っていることがありました。
真央は、山で採れた薬草で新しい薬を作り、治験のために夫の全身に塗っていました。
「これは、肌を艶やかにして、怪我も治してくれる軟膏なの」
真央は、十人もの子どもを抱えてお金に困っていました。何せ夫は世にも稀な
手っ取り早く儲ける方法はないか、そこで思いついたのは、毛生え薬の開発でした。いつの世も、毛生え薬の需要は絶大でした。
作った毛生え薬を試さなくてはならない。身近にいたのは
従って、頭皮以外の皮膚で試すほかなかったのです。こうして、いつしか夫の
毛生え薬は、薄毛に悩む男性達に飛ぶように売れました。真央は、頭髪以外には使用しないように言い含めて、その薬を売りました。
しかしそれを全身に塗って毛むくじゃらになってしまった
ある夜、子ども達を寝かしつけた後、真央が言いました。外は猛吹雪で、戸口や窓に雪が強く吹きつけて、ガタガタと大きな音をたてていました。
「こんな吹雪の日には、十八歳の頃にあった不思議な出来事を思い出します。あの日、貴方にそっくりな
「その男は私の母親を、吐く息で凍らせて殺してしまいました。恐ろしい出来事でしたが、あれは夢だったのでしょうか、それとも
真央がそう言うと、
「お前が見た
だが、ここで寝ている子ども達のことを思うと、どうしてお前を殺すことができようか。
しかも、俺はこんな毛むくじゃらの身体になって、村人や子ども達まで俺を化け物扱いする。俺はもうここにはいられない。
俺を実験台にして作った毛生え薬の売り上げで、お前と子ども達は何不自由なく暮らして行けるだろう。子ども達を立派に育てておくれ」
そう言い終えると、雪男は毛むくじゃらの身体で、大きな足跡を残しながら、雪深い山の中に去っていきました。降りやまぬ雪は、雪男の身体を真っ白に染めていきました。
それきり、雪男の姿を見た者は無かったということです。
おしまい
何故雪女は美女なのに雪男は毛むくじゃらなのか 七月七日-フヅキナノカ @nyakosense
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