公園の少年
@makkyun
。
これは自分が子供の頃に体験した話です。
あれは多分自分が小学2年生か3年生の頃でした。当時の自分は親にあまりゲームを買ってもらえない子供でした。母子家庭で生活が苦しかったからかもしれません。
友達はみんなで集まってゲームボーイアドバンスとかをやってました。自分は持ってなかったので、学校が終わった後は近くの公園で1人で遊んだりすることが多かったと思います。
ある日、自分が公園に行くと誰もいない公園のブランコに1人の男の子が座ってました。名前は覚えていませんが本人に聞いたら同じ学年でした。
ですが自分はその子に見覚えがまったくありません。その公園のすぐそばに自分の通ってた小学校があったので、この公園に来るということは同じ学区だったと思いますが自分はその子を知りませんでした。
その子は公園のブランコで1人、ゲームボーイアドバンス(以下GBA)で遊んでいました。シルバーで裏にシールがいくつか貼ってありました。(ポケモンかデジモンかなにか)
自分はその子が羨ましくなって、その子に声をかけて一緒に遊ぼう的なことを言ったと思います。そしてその子が持っていたGBAを借りて、遊んでいる間はずっとやってました。ソフトはファイヤーエムブレム封印の剣でした。
その子とどんなことをして遊んでいたかはゲームに集中しすぎていてまったく覚えていません。気づけば自分は日がほとんど沈んだ薄暗い時間に、自分の家の前で1人ぽつんと立っていました。その子とどこで別れたのか、どうやって帰ってきたかはその時まったく思い出せませんでした。ただ手の中にはその子に借りたGBAがしっかりと握られていました。
自分はその子のGBAを借りたままなのに気づいて、急いで近くの公園に走っていきましたが、公園には誰もいませんでした。その子の家の場所も知らなかったので、自分は申し訳なく思いつつも次に会った時に返せばいいやと思ってそのGBAを一旦家に持ち帰りました。
親にGBAを持っているのがバレるとマズイので、自分はそれを家の中の絶対に見つからない場所に隠しました。ベッドの下の裁縫道具セットの中だった気がします。
次の日、GBAを持って公園に行きましたが、その男の子はいませんでした。その次の日も、そのまた次の日も男の子はいませんでした。
そして3日目に自分が隠し場所を見ると、GBAが無くなっていることに気づきました。自分は母にバレたのかと思ってものすごく焦りましたが、怒られるのを覚悟で恐る恐る母の様子を見ると、特に変わった様子が見られませんでした。どうやらバレてはいなかったようでした。
となるとGBAがどこに行ったのか分かりません。自分は母に怪しまれないように注意しながら家中ひっくり返した探しましたが、GBAは見つかりませんでした。
完全に失くしてしまったと思い、自分は激しく動揺しました。ですがどこを探しても見つからないので、次にその子に会った時に潔く謝ろうと思いました。
そしてその次の日、いつもの公園に行くと、誰もいない中でその子が1人ブランコで座っているのが見えました。
その子はどうやらGBAをやっているようで、自分はその子が新しくGBAを買ってもらったのかと思いましたが、近づいたらそれが違うことに気づきました。
その子が持っていたのは昨日自分が完全に失くしてしまったと思っていたGBAとまったく同じものでした。シルバーで裏にポケモンかデジモンかなにかのシールが貼ってあるやつです。細かな傷の位置までまったく同じでした。
今思うと相当に奇妙でしたが、その時の自分は疑問に思うよりも安堵が先に立ちました。
ゲームがあの子の手に戻っているなら、自分は謝らなくていいし、母に白状して怒られることもないと、当時の自分は思っていたのです。
その日もその子に声をかけて一緒に遊びました。どんな遊びをしたのかは一切覚えていません。気づけば自分は前と同じように、薄暮れの中1人ぽつんと家の前で立っていました。どのようにあの男の子と別れたのか、どうやって帰ったのかはやはり覚えていません。そして同じようにシルバーのGBAが手の中にありました。
自分はその子を探し回りました。公園だけでなく、学校の周りや自分がよく通る道なども探しましたがやはりその男の子はいませんでした。次の日も、その次の日も、自分が彼に会うことは出来ませんでした。自分の通っている小学校にもいませんでした。
そして3〜4日後、またもや隠してあったGBAが無くなっていたのです。今度こそ母にバレたのかと思いましたが、やはり母は何も知らない様子でした。
そして次の日の午後、その公園に男の子の姿がありました。ですが前のようにブランコに座ってゲームをしているわけではありません。その子は自分の方をじっと見つめていました。無表情に。
その手には遠目から見ても、自分が失くしてしまったと思っていたシルバーのGBAが握られているのが分かりました。
その子はこちらをじっと見つめながらこちらを手招きしていましたが、自分はそこでどうしようもなく怖くなって逃げました。その時になってようやくこの不可解さに気づいたのだと思います。
公園から離れてその子が見えなくなったあともしばらく走って逃げ続けました。
それ以降、その男の子の姿を見たことはありません。終わり。
公園の少年 @makkyun
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