おうちにかえろう

相生蒼尉

おうちにかえろう



「つぎはおうち。おうちにとまります」

 そんなアナウンスが流れるのは佐賀県を走る唐津線だ。


 聞いたのが関西の方であればツッコミが入るかもしれない。

「ウチは大阪やで!? ここ九州やんか!?」なんて。


 小さな子と一緒に乗っていたらどうだろう?

「ママ? おうちっていってたよ? おりなくていいの?」なんて、可愛い我が子を抱きしめたくなるかもしれない。


 ただ単にそういう駅名なだけなのだけれど、なんとなく優しいアナウンスに思えるのは郷愁を感じる年齢だからだろうか。


 大学進学を機に一人暮らしをはじめて、それからずっと「おうち」は別になってしまったのだ。

 たまに帰省するだけの場所になってしまった「おうち」に、何も感じない訳ではないのかもしれない。


 親もだいぶ歳をとった。いつどうなるか、分からない。


 だから、「おうちにとまります」というそのフレーズが耳に残った。


 そろそろ今年も終わる。

 さあ、実家へ帰るか。


 旅路で偶然聞こえたアナウンスでそんなことを思った。




 そんな素敵なアナウンスが流れるのは佐賀県を走る唐津線だ。

 あなたも唐津線に乗ってみてはどうだろうか?





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