書けよ名作、異世界転生ダンジョン配信悪役令嬢クソ喰らえ
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
第没話 書き直し
「んあ?」
「先生、そんな小説じゃ売れませんよ。もっと良いのないですか?」
「わあってるよ、そんなこと。言われなくても。でも書きたくないものを無理して書いても、それじゃあ小説書いてる意味ないだろ」
「でも、先生。『忍び込んだプールでUFOに乗る少女に出会い、赤子を抱えて五七五を詠むオカマが登場し、ホワイトハウスの前で両手にゴールデンガンを持った全裸で記憶喪失の王様のいない国の王子様が相棒』なんて小説誰も読まないですよ。なんですか、それ。書き直してください。それに! なんど没にしても、毎回この設定貫いて原稿書き上げるのは何でですか! タイトルと舞台だけ変えても同じですよ! 売れませんよ、こんなの!」
「なんだよ、文句ばっかり。ほら、新人賞の三百万獲った時も似たようなのだっただろ。俺の作風」
「あの時は『わ〜かめ〜とチャイムが鳴る高校に通う、ドミノ、泥だんご、将棋vsチェス、マジックハンド、消しゴム飛ばし、等を隣の席で授業中遊び続ける男を親友とし、普通の人間には興味がない女の子に振り回され、いつもお菓子を食べている軽音に挨拶をし、召喚戦争を楽しみ、映像研を名乗る集団と共にダンジョンと化した迷宮の校内でレベル五を探しながらサソリと歩きキノコの水炊きを食べる学園モノ』だったから受賞したんですよ。全然違いますよ」
「そうか? 俺にはどっちも同じに思えるけどな」
「違いますよ。先生、お願いですから、新しい設定とキャラクター、ストーリーを今一度、ゼロから考えてください。たとえ売れなくても、読者が楽しめる作品をお願いします」
「そりゃ、そうだろうよ。そうじゃなきゃなんのために小説書いているんだか分かりゃしねぇ。最初から万人受けすることは狙わず、誰かに楽しんでもらうために書くことから始めるしかないんだってことぐらい、わあってるよ。何年書いていると思ってるんだ。一度書いた言葉を全部見直し、表現のおかしさを無くしつつ巧妙で違和感が残る文章を書き、読んでいて苦にならない平易でありながら文芸としての奥ゆかしさを見せる。キャラとかストーリーを尖らせるのはそれからだ。あたりまえだ。んなこたあ分かってる。物書きなら言われなくてもそんなことは誰でもわかってるんだよ。分かってるから困るんだ。誰も分かっちゃくれねぇからな」
「作家は孤独ですよね……」
「お前は最初の読者なんだからよ、だからわかってくれや」
「はい。わかってはいます。しかし、これは売れません。あくまで商売です。ラノベでも新文芸でも作品を作ることに変わりありませんがしかし商品です。売るんですよ、自分も作品も。面白くて売れる作品。勝負できる作品をお願いします。書き直しです」
「んなことあ、……それもわかってるってのに、……わかったよ、書き直すよ」
「お願いします」
是非とも先生の次回作には期待したいところです。
書けよ名作、異世界転生ダンジョン配信悪役令嬢クソ喰らえ 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます