愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承アリサとの初任務アフリカ篇

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三章アリサとの初任務アフリカ篇

アカデミーをアリサたちが卒業して、それぞれの任務に配置された。

アリサとヒロの任務はアフリカの商船を海賊から守る事だ。

彼らは組織的に商船を襲って物品を盗み、人質を取り身代金を請求して

生業を立てている。

多くの人間が貧しさから、そのような道に進んでしまうのが、アフリカの貧しい地域の現実でもある。

この任務にはヒロの師兄弟でもある水樹の部下、水の郷の船団のシャチたちも

参加している。

また矢早の里という、ヒロも修行した銃や飛び道具、弓矢、合気柔術にたけた、

矢早の一族のシュウの部隊も参加している。

海賊相手には大げさな武力であるが、これには理由がある。

海賊を退けるだけではなく、彼らを生きたまま捉えて、この地域の海賊の多くと

交渉して、彼らが働ける産業を与える代わりに、多くの海賊たちを説得させて、海賊業から生産的な産業を起こさせる、プロジェクトである。

アフリカの多くの地域は、資源による経済活動が中心の国が大半である。

しかし資源に乏しい国は、非常に貧しく、治安が悪化して海賊や盗賊、強盗などが

横行するのが実情だ。

ユニオンはそれらの国に産業を立ち上げ、そのような連中にも更生の機会を与える

プロジェクトを試し見ようとしているのだ。

海賊達がやる手段は漁船を装い、商戦に近づきロケットランチャーなどを使い動力を奪い、商戦に乗り込んで、制圧する手法だがこちらも、船員を装いシャチの率いる別の船は視覚の外に隠して、連中が乗り込んで来たところを、様々な術式を使い、一網打尽に生け捕りにしてしまう手法である。

船員を装ったユニオンのエージェントが、乗り込んで、海賊を一網打尽に制圧して

逃げる連中は、シャチの船団の船とシュウの部隊が船を沈め全員をとらえた。

アリサを女と侮り、油断した海賊などは無計画に近づいて、アリサの無拍子の蹴りを

受けてあっという間に気を失う始末だった。

捉えた相手のリーダーに、麻薬のような幻覚を見せるマリアのハーブを使い相手の本拠地を案内させ、そのまま、そこも制圧して交渉と説得に入る。

その役割は魔導士マリアの部下が担う。

一見、非合法的だが、最初は強引に進めなければプロジェクトはスタートしない。

あとは生活の保障と産業をユニオンが立ち上げ、その事業に協力してもらう

手順である。

一番肝要なのは、彼らに対するフォローをユニオンが根気強く続けることである。

そのためヒロ達エージェントも産業に携わるメンバーもメンバーを変えながら何年も彼らと生活を共にする。


ヒロとシュウの部隊も、半年はアフリカに滞在して彼らと生活を共にした。

アフリカにいる間、彼らと同じ生業のグループを制圧したり、説得に動いたり

しながらユニオンの事業に参加する人間を増やしていくのだ。

そんな中、アリサがヒロに疑問をぶつける。

【何故、あの人たちは船を襲ったり、人質を取ったりするようなことに

成ったんですかね。それって悪いことって思わなかったのですか?】と聞く。

ヒロは【どうだろうな?良い悪いという概念は立場によって変わるのも事実だしな。

彼らに取って優先すべきは生きて行くことだったのかも知れないだろ。

例えば家族の生活を支えることが法を守るより大切かもしれない。

俺たちの祖先だって数多くの戦に参加して敵将の首を取って生業を立て、暗殺にさえ関わった里もある】と言い。

更に【日本の戦前の軍隊もアジアの国でテロを起こしたり、隣国の后妃の暗殺に関わったりした、それがお国のためだったと信じていたらしい。

この時代に成っても、そんなことを言っている自称愛国者とかいう連中もいる】と

教えた。

また【だいたい俺たちがやっている行為だって、非合法な部分は含まれている。

マリアの魔術なんて俺から言わせたら、非人道的ともいえる。

法治主義とか宣う政治家や、行政は結局自分たちの都合で治政をしたいのさ、

そこに正義が有るかどうかは、不明確極まりないと思う。

結局良い結果を出して行くしか無いのさ】とも言った。

アリサが【良い結果が出せるんでしょうか?】と聞くと。

ヒロは【それは俺たちユニオンとそれに参加した人次第だ。

世の中、確信出来ることなんか殆ど有るものか。

特に俺みたいな凡人は、不安だらけ。

ただ俺の信念はお前を含め仲間を死んでも守る】と答え。

また【まあ生きてりゃ、なんとかなる位のネットワークをユニオンは持っている。

マリアの底力は計り知れないのは確かだ】とも言う。

アリサが【今やっている、ビジネスのプロジェクト、上手く行きますよね】と

質問すると。

ヒロは【それは問題ないと思うよ、何せユニオンの科学技術部実験に実験を重ね、開発した養殖技術とユニオンの交易ネットワークと運輸技術を使い輸出するんだから、

ユニオンも働く彼らも、消費者も皆得をする、ビジネスプランだと思う】と説明する

アリサは【良かった、生活が安定したら彼らも悪いことは

しないですよね】と聞くと。

【そう願いたいね、彼らの中には薬物に侵されている人 間は居なかったようだし】と

とヒロは答えた。

ユニオンの加護の中では、不正は出来ないように、ビジネスが組まれているから

再度海賊や強盗するよりは安全に豊かに暮らせるはずである。

アリサは【早くここで養殖された魚が東京のユニオンで食べられると

良いですね】とアリサが言うと。

ヒロは、【その時は俺が刺身に捌いてご馳走してやる楽しみにしていろ】と言う。

海賊を説得して任務が終わるわけではなく、それはスタートだ。

ユニオンの事業部が立ち上がり、現地にキャンプや工場を建設する。

最初は簡単な施設から作り、工場のメンバーの食事は持ってきた冷凍の肉や

保存のきく野菜、コメなど食料や衣類。

ヒロとアリサの食事は、朝はプロテインとオートミールや、乾燥フルーツ。

昼と夜は調理スタッフの調理したメニューで、足りない栄養素はサプリなどで

補給する。

夜チームで食事しているとアリサは【もう任務食、飽きてきましたね。

アフリカの美味しいものあるかと思っていたのに】と不満を訴える。

それを聞いたシュウが苦笑いして【任務ではこんなものだ。アカデミーでは美味しいものが出るんだな?】とアリサ聞くと。

【アカデミーの寮では栄養を考えたおいしいメニューが選べるんですよ】と言う。

するとヒロが【それは俺がユニオンに言って、栄養を考え美味しく充実したメニューを、プロディースしたからなの。現場では同じようには行かないから、我がまま言うなな】と言って、アリサのホッペをつねる。

【チヅルちゃんは東側の国で美味しいもの沢山あると、メール送って来ましたよ】と

アリサが言うと。

ヒロはそれを聞いて逆に心配になった。東側での任務はきっと大変な任務で

有ることは違いない。

チヅルは語学も堪能で頭脳も明晰な娘であるため、情報部の任務に就任した。

どんな任務も楽な任務などはない皆が無事で帰ってきてほしい。

ヒロはアリサに【解ったたよ、帰ったら沢山、好きなものご馳走するから我慢しろ】

と宥めるのであった。

ユニオンは超特急でプラントを作り現地のスタッフも集めたり、就業のための教育も

ユニオンの事業部が進めた。

ヒロ達の任務はプラントの警備と治安も兼ねていた。

アフリカに行って8カ月が過ぎたころ、ヒロ達の任期が終わり日本のユニオンに

帰ってきた。


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