愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承

@tbwku42263

第1話一章 戦いと愛の始まり

源流と言われる古来の武術を修める一族が有った。

ヒロはその一族に生まれ祖父からその技術を学んだ。

小さなころから、祖父と旅を重ね、修行を強要され、多くの武術の里で武術を学び

修めた。

ヒロの母は武人の祖父、源三の娘だが体が病弱であったため、

スフィアヒューマンユニオンの医師のユキオと出会い結ばれヒロの姉ヒトミと

ヒロを授かり、産んだ。

そして、ヒロを産んだ後、生来の病弱のため、この世を去った。

姉のヒトミは父の後を継ぎ、ユニオンの医師として争いや貧困で苦しむ人を助ける

仕事をしている。

ヒロはユニオンのエージェントとして戦争や紛争を無くすため、

人類の定めに抗うための活動をしている。

この物語は人類の原罪に抗いながら、悩み苦しみながら生きていく人間たちの

物語である。

先ず物語はヒロが十六歳のころの出来事からスタートする。

そのころ地球では多くの国々で争いがある上に、地球の外の他の人類からの侵略も

受けていた。

ユニオンは国連の委託を受け、ユニオンの科学技術と武力の総力を挙げて

地球外の戦力からの侵略を防ぐため活動していた。

その主力は各国の正式な部隊では無く、裏の武力と言える武人の寄せ集めだ。

ヒロの祖父、源三と魔導士のマリア、中国の武術仙術を極めた男ロンの下で

争いの矛を収め、ユニオンのもとに集まった非公式の武力集団たちだ。

そしてユニオンとマリアの志に賛同した科学者や、金融家、経済人たちが集めた

協力者たちと、武力を持つエージェント達で構成された。

本来、武力、兵力、科学、経済の発展と戦争は大きな関わりを持ち、

それらは戦争のたびに大きな発展をしてきたことは、紛れもない事実であるが、

それらがある特定の国や、特定権力の利益を目的に突き進めば、必ず破滅の道を

歩むのが、歴史の道理でもある。

マリアはあくまで人類が、共存出来るための武力や科学力、錬金術、経済活動の

地球規模の組織を作るため、魔導士会が中心となり、歴史の裏で活動して、後に正式にユニオンを作って活動を続けた。

ユニオンのメンバーはそれに賛同して集まったメンバーたちである。

地球の外の人類の科学力は、当時の地球より優れた科学を当然持っている。

しかし慣れない環境と長旅による疲弊、食料や資源の不足で戦いは拮抗していた。 

ユニオンは、水や食料を相手に取らせない戦いをすることで、戦いを制する

戦略を取った。


しかし相手の武力や科学力も優れていて、戦いは激しさを増し、多くの犠牲を

双方に出していた。

空で迎え撃つ対空攻撃部隊、海上や水上で戦う水上部隊、陸上で相手を抑え込む、

陸戦装甲戦部隊が戦いを広げ、ヒロ達の部隊は陸上と水上双方で戦力を遺憾なく

発揮していった。

ロンやマリアはユニオンの科学力と仙術や魔術を利用して気候や地の利を使い、敵を 

追い出す部隊として活躍、水上や陸上では、水上部隊の水樹達とヒロ達武術家が

戦いの中心となり、水の力や毒蛇、毒虫等の自然の利を生かした兵法を使い、敵を弱らせり、時に白兵戦で武術や武器を使い相手を殲滅に追い込む陸上部隊として

戦っていった。

戦いは激しさを極め、ユニオンは多くの仲間の犠牲を出した。

ヒロと仲の良かった若い世代の先輩や仲間の多くも戦いの中死んだ。

毎日が弔いの日々となり、ヒロの心は荒んでいった。

水樹の部下の多くも戦いの犠牲となったことで、二人の仲に溝が出来き

ぶつかることも増えて来たある日、一緒に武を学んだり、同じ釜の飯を食べたり

兄弟のような関係、武術の世界では師兄弟とも言われ、ホントの兄弟のように

水樹のことを姉さま、姉ちゃんとヒロは呼んでる。

戦いの中、同じようにヒロが兄と慕う、ムエタイ戦士のユンチャオが

ヒロを庇い致命的な傷を負った。

ヒロが無防備に敵に突っ込みそれを庇うたのが原因だった。

ヒロが泣きながら謝るのを彼は笑顔でヒロの責任じゃないと

笑顔で答え、ヒロがもっと強くなって皆を守るナックムエ(戦士)になって欲しいと

願いをヒロ残し、戦いを託した。

彼の最後の言葉はタイに残した彼の妻とお腹の子供のことだった。

明るい性格のユンチャオは戦いの中でも明るい雰囲気を作り、

皆から愛される存在であった。

彼の技は立ち技最強と言われる、古式ムエタイを継承し、

一撃の蹴りの威力は、部隊最強と言われ、惜しみもなくヒロにも技を享受してくれた。

彼が死に、皆が涙して彼を惜しんだ。

ヒロは言葉も失うほど落ち込み、自分の甘い行動で、兄とも慕う人間を亡くした

ショックで戦う気力さえ無くしてしまった。

ヒロは水樹に【姉様、俺はもう無理だ戦えない、もう仲間が死ぬのも

見たくないし、俺がいると皆の迷惑になる】と訴える。

そこにはマリアや中国武術の師匠のロンもいた。

皆が沈黙を守るなか、水樹がゆっくり口を開く。



【ヒロお前はホントにそれで良いのか、ユンチャオはお前に何かを託したのでは

ないのか?アイツの技を一番託されたのはお前だったと思ったが、その魂はお前に

受け継がれてなかったんだな。

このままお前が負け犬で源三先生に私はなんて報告したら良いんだ

ユンチャオの子供にはなんて言い訳をするつもりなんだ?

死んで行った仲間の家族にはこのまま会えるのか?】と言う。

ヒロの目に涙があふれる。水樹の目にも同じように涙が見えた。

更に水樹がヒロに【お前は弱い、仲間の分まで強くなるしか無いんだよ、

ユンチャオもお前が強くなり技を受け継いでくれると思いお前に

ムエタイの蹴りを教えたんじゃないのか?私も死んだ部下の荷物を全部

私が背負うしか無いのさ。それが生き残った人間の出来ることだと思うがな】と言う。

その日から水樹は自分の先祖たちから受け継いだ秘伝をヒロに教え込み、

ロンも中国の武術や仙術の秘伝をヒロに修行し、一緒に戦った。

幸い敵は長い遠征での資源不足と遠征と戦いによる損失が膨らみ戦いの矛を収め地球を去っていった。

皆がボロボロになり戦い抜き勝ち取った平和であった。

これが第一回目の地球外人類との紛争である。

戦いが終わり、一時の平和と休息が訪れ、姉でユニオンの医師のヒトミの勧めで

ヒロは大学に通った。

ヒロにとっては唯一の青春の期間と言える時期だが、大学の恩師は勉強も遊びも

徹底的に教える人生の鬼コーチのような存在で、国際的に有名な政治経済の女性学者だ

経済学だけでなく、酒と音楽、人生哲学を徹底的にヒロに教えた恩師である。

このことは後々、いろんな場面で出てくるので、これくらいにして話を進める。

第一回目の戦いが終わって役五年の歳月が経った頃、地球外の軍団は再度地球に

責めて来た、前回より規模の大きな軍だったが、ユニオンも大きく再生して、

経済的にも科学力も、そして武力も格段に大きく強くなっていた。

その理由は前回の戦いで彼らの技術をユニオンの科学者たちが分析して

更に進化させ、マリアやロン、水樹、ヒロの父や姉のヒトミが基金を募り

事業も始め、国連や先進国の依頼を受け、地域の紛争解決や災害の救助等を

事業化し、さらに世界の交易に携わり、武力、科学力、経済力を大きなものに

発展させたからである。

中でも門外不出の軍事科学は、地球外の軍と戦い接触した技術が多い。

特にエネルギーの循環システムの要は、水を水素と酸素に分解し、無限にエネルギーとして循環できるシステムだ、完全な循環エネルギーで、動力や武器へのエネルギーが無限に再生できるといっても過言ではない。

マリアはこれを外に出すことを禁じ、厳しい制約を技術者に課した。


このような、進んだ技術は人間の生活を大きく変え便利にすると同時に

人間がそれにより、さらに奢り高ぶり傲慢な生き物として人類自体を

破滅に向かわせることをマリアやユニオンの幹部は案じ、危険なことと捉えたのだ。

核エネルギー、インターネット、多くの便利なものは確かに社会を便利にしてきた、しかし必ず便利さの裏には大きな歪が社会に起きる。

過去人類の歴史を見ても発展とその歪による悲劇は表裏一体とマリアは

捉えているのだ。

人間自体の進化が技術や科学の進化に追い付いてなく科学に振り回される

欲望や人間の業が必ず悲劇を起こすとマリアは考えている。

再度攻めて来た軍隊は前回より大きな部隊では有ったが、

何故か精彩を欠いていた。

それでも粘り強く戦ってきたが、やはり長い宇宙の旅と言うのは想像以上に部隊の

戦意に影響するようだ。

後に判ったことだが彼らの星は終末を迎えつつあり、移住先としての惑星を求め、

地球に来たようだ。

ヒロもユニオンから招集を受け戦いに参加した。

前回の戦いを経て、成長をしたヒロや武力部隊は防御の力を高め

相手を疲弊させることを作戦の要として戦い相手の戦力を削いで

行った。

それでもヒロは直接相手と接触して退ける陸戦部隊である。

他の仲間を守るため、相手の戦意を削ぐため進んで前面に立つ

小さな負傷は日常である。

そこでヒロはユニオンの女性医師、友歌(ユカ)と出会う。

ユカはヒロより一つ年上の美人医師で姉のヒトミも信頼する若手の

エース、外科の技術も内科の知識も評判が高い。

しかし何度も戦いでケガをするヒロには厳しい。

姉のヒトミからも苦言が伝わる。

ヒロは女性が苦手である、何故なら常に姉のヒトミや師兄弟の水樹

ユニオンのリーダーのマリア、大学に恩師の浜、多くの年上女性から

虐げられている、ヒロは自分が女からパワハラとセクハラを常に

受けていると思っている。

しかし友歌の場合は何故か彼女の優しさや、ヒロへの気遣い

を感じ彼女に惹かれていった。

実は友歌はヒロ達が戦っている相手の星の生まれだった。

しかもその星の皇帝の娘、皇女だった女性だ。

彼女は他の星に攻め入ることに反対して友好を結び地球と共生を図るため


ユニオンの医師として、ユニオンに所属することを決め行動に移したのだ。

ヒロの姉ヒトミとユニオンのリーダーのマリアは、それを知って

彼女をユニオンに迎え入れた。

マリアは彼らとの共存は、地球の人類の進化の大きなカギと、考えたのだ。

後々、彼らとの和平にも助力してもらい、共存を図るためのキーマンと考えたのだ。

ヒロはそのことを知らず、恋に落ちていった。

同時にヒロは、自分が女性にもてる訳が無いと思っている。

大学時代も同じゼミに、女性の同級生は居たが、いつも意見が合わず、どうも

敵対視される。

姉や周りの年上女性からは、ダメ出しの嵐の中で生きて来た。

しかし友歌はいつも、ヒロに優しく接してくれる。

ヒロはもてない男の典型的なやり方で友歌に接する、例えば自分の音楽の趣味を

彼女に紹介する、ヒロはジャズやロックの洋楽が大好きで、自分でもギターや

キーボードを弾ける。

大学時代の恩師の影響と、なぜか音楽的素養を持っていたらしい。

彼女に会うと好きな音楽の話をして、その中で女性に受け入れられそうな

スタンダードなラブソングの音源を手渡して、その音源でヒロの好意を

伝えようとしたりする、絶望的な手法である(笑)

しかし、何故か友歌はそれを受け入れてくれているように感じた。

友歌にとっては違う星の文化が新鮮だったのだ。

いつも女性陣にダメ出しをされ続けているヒロにとっては、ユカの反応は女神の

ように感じ、どんどん思いは募ってくる。

そんな様子を姉のヒトミは陰ながら見ている。

姉のヒトミにすれば、ダメな弟で恋愛も社会経験も皆無で、女心なんか掴める訳も

無いと思っているが、親心で何とかうまくいけば良いとも思っている。

ヒトミは友歌にこっそりヒロについての印象を、当たり障りのない程度に

聞いてみた。

すると友歌は(面白い人ですよね)と答える。

普通なら完全にダメな回答パターンだ。

しかしヒトミはダメもとで【あんな野暮ったくて、顔も不細工だし、

武術以外、知らない、人間として片手落ちのダメ男が面白い?】と

逆説的に質問してみた。

すると友歌が【先生、ヒロさんはそんな人じゃ無いと思います

いつも不器用ですけど他人に優しく、男としての生物的な力を持っているのに

それをおくびにも出さず、周りには心遣いを持っている、私の星にはいない、

私の知らないタイプの男性で音楽や文化を愛して、人間愛を、持っている】


【私の星にはあんなタイプの人は居ない、私を口説きたい気持ちで近づく人が

この星のドクターの方にも居ますが、ヒロさんはあの子供みたいな不器用さが

私には新鮮に感じます】と答えた。

つまり女性経験の少なさが功をそうしたと、ヒトミは感じた。

ヒトミはそれでも焦りは禁物と思い、【でも友歌先生はあいつには勿体ない、

高嶺の花だわ、なにせ本当にバカなのよ、大学時代も戦うのは嫌とか言って、

美味しい料理でみんなを幸せにするのが夢とか言って、料亭でバイトをしたり、

私が一流の経済学の教授に頼み込んで大学に入れたのよ。

音楽は人の気持ちを平和志向にするとか言って暇さえあれば好きな音楽ばかり

聴いているし。

本当にバカでしょ?お金にも何にもならない事が好きなんて】と言うと。

友歌は【私は素敵だと思います、お金や利益にばかり興味を持つたり権力志向の

男の人が私の星も多い、きっと人間社会がそうして来たんだと思いますが、

ヒロさんはそれを感じません。何故なんでしょうか?】と聞く。

ヒトミは【それは私たちのお爺ちゃんの影響ね、お爺ちゃんは地球の戦争であらゆる戦いに参加していた武人で武術家だったの、それに嫌気がさして、マリアさんの考え方に賛同してユニオンに参加したのよ。

戦争や争いは常に利益や権利への欲望が引き起こす、武術と言う力と欲望が交われば

必ず周りに悲劇を起こすと言っていた。そしてそのお爺ちゃんに連れられ、

あらゆる武術の郷や家に修行の旅に連れて行かれていたの、普通の子供とは違う育ち方を余儀なくされていたのよ、

だからいつまでたっても子供みたいな所が有って困ることも多いのよ。

でも何故かその影響で料理や家事は家族で一番上手なのよ。

もし嫌じゃなければ、弟の料理一度食べてみてよ。弟の唯一の長所なの】と言った。

友歌は【食べてみたいです、私が育った星は食材も豊かではなく、

栄養価は科学的に計算された食事ですけど,この星に比べれば

味気ないものばかりで、この病院の食堂もホントに美味しいので、

びっくりしました】と答え。

ヒトミが【この病院の食事や食堂のメニューは実は弟がうるさく

プロデュースしたの、食事が美味しくないと病気やけがの治りは

遅くなるとか五月蝿くて、コストも考えず作るから大変だったのよ

大学時代に安くてもコストを抑えて仕入れる方法は有るとかいって、

直に生産者と交渉に行って、型崩れでも品質の良いものを

仕入れるルートを探し交渉し、学生で暇だから出来るのよ、まあ

その経済効果を論文に出来て喜んでいたけど、小賢しい知恵は

有るのよ、バカだけど】と自慢した。


友歌は【ヒトミ先生はヒロさんが可愛いのですね?

私にも妹が一人居ます、先生の気持ちが理解できます】と言った。

数日後ヒロはヒトミとヒトミの夫コウジ夫妻の家に呼ばれ、食事を共にしながら、

ヒトミから友歌について【あんた、友歌先生と仲良くして戴いて、

ケガの治療で、色々お世話になっているらしいわね、友歌先生のことを、

どう思っているの?】と尋ねられた。

ヒロはヒトミを見て【何なんだ急に、別に姉ちゃんに迷惑掛けることはしないよ】と

答える。

ヒトミは【あんたがそう思っていても、迷惑なことが起こることが

あるから、心配しているのよ】と言う。

するとコウジが【まあまあ、落ち着いて、どうも君はヒロ君のこととなると感情的に

なって、思ってもない、発言をしてしまう】となだめ。

【ヒロ君、君を責めているんじゃない、友歌先生のことをどう思っているんだ?

私たちは上手くいけば良いと思って応援をしたいんだ、ヒロ君の本当の気持ちを教えてくれないか?】と言った。

するとヒロは顔を真っ赤にして【素敵な人だなって思っています。

でも俺には高嶺の花で、皆から人気もあるし、近くで憧れているくらいで】と答える。

ヒトミは【まあアンタなんかじゃあね、月とすっぽん、猫に小判、漁師とお姫様ね。

あっ、でも漁師とお姫様は上手くいったのか、まあ無理とは思うけどその昔話みたいに

お世話になっているお礼で自分に出来る、最高に美味しい料理でも一度御馳走したら?へんな下心は起こすんじゃないわよ、身分が違うのだから、

本当に失礼の無いようにね】と言うと。

ヒロが【姉ちゃん、何言っているのか意味解らない。どうしろって言うんだ?】

と尋ねると。

ヒトミは【ともかく、お世話になっているお礼って食事を御馳走するの、

自分で最高の料理を作ってね、話はこっちが通しているから】と答える。

ヒロは訳が解らないまま、ヒトミの言う通り、翌日に友歌に会いに行って

食事を作って友歌に御馳走したい旨を告げる。

姉のヒトミの命令でも有るけど、友歌に自分の作った料理を食べて

ほしいと言う気持ちを伝えた。

料理をご馳走して、美味しさや楽しい時間を一緒に過ごすことは

世界共通の分かり合えるための最高のコミ二ケーションで有ることは

不変の事実である。

美味しい料理と酒にはその魔力が有ると言うのがヒロの持論である。

ヒロは市場まで出かけ最高の材料を揃え、自分で作れる最高の料理と

コレクションしている最高の酒そして音楽を聴いてもらう。


幸いヒロは学生時代友人の家が有名料亭で、ずっとバイトして料理を修行していた。元々、祖父の源三と色々旅を重ねる中、生きるため自炊の料理を叩きこまれた。

また大学の恩師の影響で世界の銘酒を色々と味わい、音楽もその教授の趣味で

色々聞かされた上、自分自身もギターやキーボードを弾いた。

鬼のように課題を出す、担当教授の趣味とバイトの影響がヒロの人生に

幅を持たせてくれたようだ。

ヒロが友歌のために作ったのは、京野菜を比内鶏と煮込み、麹と酒粕、生クリームで

味付けした煮物、比内鶏のスープにキリタンポを入れたもの、クロムツ一匹をさばいて刺身を引きさらに盛ったもの、八角という魚に麹味噌を塗りじっくり焼き上げた

焼き物、食前酒にシャンパンの銘酒クリュグ、これはヒトミのコレクションから拝借

食中酒には日本酒、星泉の純米大吟醸、デザートにブルーチーズに、梅の花のハチミツをかけたもの、食後のお酒にコニャックの銘酒ポールジローの古酒

どれも当時のヒロからすれば高額で最高級のものだ。

幸い友歌は初めて食べる料理の味と美味しい酒を楽しんで喜んでくれ、

ヒロのグルメオタクの話や音楽を楽しんでくれたように感じた。

友歌はヒロの作る料理、音楽、そして地球の豊かな自然が羨ましく感じた。

そしてヒロに質問した【ヒロさんは何のため今、戦っているんですか?

彼らと共存の道を考えることが良いと思いませんか?】と

ヒロは友歌に【そうなれれば死んでいった仲間が戦った意味が有るので

早くそうなったら良いと願っています。

出来れば戦わずそうなれば良いとは思いますが、それには相手にとって私たちが対等に話会えると認められる必要が有るかも知れません。

そのあたりの事はリーダーのマリアがやってくれると信じています】と答える。

友歌は【マリアさんを信用されているのですね】と尋ねると。

ヒロは【うーん、信用と言うより、あの魔女が出来なければ地球の誰がやっても

出来ないと言うのが本心ですかね。

相手の状況や心理をきっと今頃は全て調べて見通していると思います。

今回僕たちがマリアに言われているのは戦いながら相手を傷つけたり

殺すのではなく、とにかく守ることを徹底的に行い相手の心を疲弊させれば

きっと話し合えるか、相手が諦める、こちらのダメージを出さないことを徹底すれば

良い結果になると言っていますから、ある意味、武の本質的戦い方でもあるんです】と答える。

友歌は【何故それが武の本質的な戦い方なのです?

相手を倒すのが武では無いのですか?】と聞くと。




ヒロは笑って【皆、本当の武の意味を誤解しているのです、勿論長い歴史の中で

人を殺す技術を磨き上げたのが武術の技です。

しかし考えてみてください。永遠に相手を殺し続けるなんて可能でしょうか?

そんなものは自ら身を滅ぼす。どんなに最強の武力を持っていてもそれは、

一時の事です、どんな力を誇った文明も、結局は身を滅ぼし自滅の道を必ず

歩んでいます】と答え。 

更に【現在、確かに武は必要悪として存在し必要とされています。 

しかし、それが周りから嫌われ陰で皆から憎まれればその武は必ず滅びます。

本当は武など無くても世界中から愛されその愛に守られて生きることが

最強かも知れません、そんな夢みたいなことに近づくために働いています】と言う。

いつか人間が進化してそんな時代が来れば本当の意味で世界中が幸せを共有しあえるそんな日が来ることを目指して、ユニオンはマリアが作った団体だ。

ヒロは【おれの爺さんも姉ちゃんたちも、当然そのために今は色んな、力を必要とし

努力しました、でもこれだけは言えます、マリアは自分たちの欲望のために力を使用は、決してしません。あの女は化け物的な力を持っていますが自分自身の魔術で自分に縛りを与えて生きているそうです】と主張する。

更に【これは俺の爺さんの受け売りですけど、武は矛を止めると書きますが、

皆が仲良くするために、今は力が必要と言われて俺は小さい頃から、徹底的に

武を無理やり仕込まれたんです、爺さんやロンみたいに別に才能もないし、大体、武術に向いていないんです】と言って。

【この戦いが終わったら、俺は料理人か食や酒をプロディースした商社を自分で

立ち上げて多くの人を豊かにしたいんです、医療と食は密接なかかわりが有るのはご存じと思いますが、友歌先生一緒にやりませんか?】と友歌を見る。

まるで食オタクが計画性も無く語る夢のような話であるが、その理想を恥ずかしげも

無く、語るヒロの純真さに何故か友歌は好感を持ったようである。

ヒロは恋愛経験もない上に身の程知らずのアンポンタンの部分が顔を出して思わず、【俺、今は何にも持ってないけど、先生が好きです。嫌じゃなかったら俺とお付き合いしてもらえませんか?】と神風特攻隊のような、告白までしてしまった。

しばらく沈黙が続き、ヒロが【やはりダメですよね?おれ何もないし顔も

三枚目以下だし、いつも姉ちゃんやマリアや妹のユカにもダメ出しばかりされるんで。

男として全然魅力が無いとかガキっぽいとか、大人になれとか】と言う。

すると友歌が【そんなこと無いですよ、私はヒロさん素敵だと思います。私で良ければお願いします、もっと色んなこと、音楽や文化や歴史のことを教えてください。

ヒロさんのことももっと知りたいです】と答えた。

ヒロにとっては夢のような瞬間でこのあと何を話したかも覚えてない。



夜十時が近くなり友歌の部屋までヒロはちゃんと送りとどけて、

初めてのデートは終わったのだった。

その日の夜は眠れたか眠れてないのかさえ判らない、まるでマリアに幻術をかけられたような夜であった。

朝が来て、ヒロは姉のヒトミに電話を入れる、【姉ちゃん、俺、大変なことをやってしまったかも】と言う。

ヒトミはびっくりして【ないやらかしたの?彼女に酷いことしたなら、死になさい、

死んでお詫びしなさい、アンタの命じゃ足りない、私も一緒に死んで詫びる、とにかく何が有ったか話しなさい】尋常ではない動揺である。

ヒロは【いやいくら俺でも好きな人に酷いことはしてないと思う、ただ雰囲気で告白してしまった】と言う。

ヒトミは一息ついで【それで、振られたんでしょ?どうせ無理だとは思ったけど、

いきなり自爆とは貴方らしい、それくらいならうまく笑い話で済むようにしてあげる。しかしいきなり自爆なんてそれでも武術家?マリアさんや水樹ちゃんに報告して

みんなで笑い話、広めないとね】と言う。

【姉ちゃんそれでも兄弟か?ユニオンの女はどうして、そんな最悪の性格ばかりだ。

自爆じゃないよ、何故かお付き合い出来るこヒロが言うと

ヒトミは【貴方、それ夢を見ていたんじゃないでしょうね、とにかく落ち着け

ここで焦っても自爆するだけ、これは世界大戦を終わらせる位、ナイーブで困難な

プロジェクト、マリアさんにも相談して慎重に事を運ばないと】と言うのだ。

ヒロが【姉ちゃんこそ落ち着けよ、どうして俺の恋愛に世界最強の魔導士が

出てくるんだ?国際問題にでも発展するみたいに動揺しているぞ】と聞くと。

ヒトミが【アンタが恋愛出来るなんて、恐竜が哺乳類になるくらい、画期的な進化。魔導士も科学者も総出でフォローしないと、まずは、お礼の手紙をかけ、つたない文章でも昨日が楽しい時間で、夢のような出来事だったと、そして僕との時間が貴女に取っても、楽しい時間で有るように努力することを誓うと書け、こっちもユニオンの全精力を注いでフォローする】と言うのだ。

ヒロは余計に混乱したが言われるように、手紙を書き、友歌に届くように送って、

任務に出かけた。

そのころ、戦いは少しずつ下火に向かってきて、相手との休戦の交渉を

マリアが行っていた、相手は水や食料の枯渇に苦労していたのだ。

食料や水を相手に供給することで一時的に休戦条約を結ぼうとマリアが

動いていたのだ。

だからと言って、防衛の体制は緩めるわけには行かない。

こちらから攻撃はしなくても、常に警戒を緩めれる状況ではないが、

以前のように激しく接触する状況では無くなっていた。


それが好機となり、二人はデートを重ねることが出来、家族や周りの

フォローも功をそうし、仲を深めることが出来た。

姉夫婦も友歌を家族のように受け入れ、マリアもヒロには黙って

友歌と食事に行き、ヒロの取り扱いマニュアルを説明し、

大学の恩師の浜までもが友歌に合って、ヒロのダメな部分を話しながらも、

良い所も話をしてプッシュをしてくれた。

おせっかいも、甚だしいことだが、何故か二人の仲は深まっていく、周りのプッシュの甲斐が有り、ヒロのプロポーズも受け入れられる奇跡が起こってしまったのだ。

昔の日本の大衆のお見合いの多くは恐らくこんな感じで周りのプッシュや祝福により

結婚に至ることが多かったのではないだろうか?

勿論、家同士の政略結婚や恋愛感情も全くない非人道的な縁談も有った

と思われる。

でもお見合いや近しい人の紹介での結婚は割と良い縁談になる

場合も多い。

情熱的な瞬間湯沸かし器のような恋愛結婚も昭和型の紹介による縁談も

良い悪いではなく、選択肢は多く有って良いと思う。

ネットでの出会いについては正直、未知数でまだその影響は解って無い

と感じるが、これも時代の変化なのかもしれない。

ヒロにとって友歌との時間は夢のような時間であった。

周りも全ての関係者が祝福をして友歌とヒロを支えてくれた。

しかし友歌の心には大きな心配があった、自分の出生の秘密である。

勿論ヒトミやマリアはそれを知って全力で二人を支える約束をする。

表向きは、ある国の名家の出だが、訳有って家を飛び出しユニオンで働いてる事に

成っている。

そんなある日、敵の軍の幹部の一人が事故で大きなケガをしてユニオンの病院に

運ばれる。

ユニオンは敵の兵士で有っても必要ならば病院での治療を施す。

これはジュネーブ条約における国際人道法に基づく行為である。

敵兵であっても医療関係者は人の命を最優先に保護するのが医療の役割と言う信念で

ユニオンの医療機関も動いている。

たまたま、友歌を知っている人間と友歌が出会ってしまったのだ。

友歌も敵兵も青ざめるがケガをしている兵士を見殺し、には出来ない。

彼が友歌の星の内状を友歌に訴えたのだ。

彼女の父親の国王が病気で弱っていること、星自体が政情が不安定で

内乱の危険さえ有り得ること、正統な継承者が必要な状況だと言うのだ。

しかし、奇しくも友歌はヒロの子供を身ごもっていたのだった。


ヒロには言えず、ヒトミとマリアにその悩みを話した。

結局、自分の星の安定と平和のために星に帰ることを決めるのだった。

友歌は一年以内に星に戻ることを約束して、その条件として休戦を結び

軍を引き上げて行かせたのだった。

友歌はマリアとヒトミとコウジだけに知らせ地球から去る前にマリアの所でヒロとの子供を産んでマリアに預け自分の星に帰って行ってしまったのだ。

ヒロには二人の時間は人生で一番幸せな時間だったが、自分の個人的な事情でここに居ることが出来なくなった。

ヒトミ先生は知っているけど、そのことでヒトミ先生を責めずに居て欲しい。

責めるなら私を責めてくださいと、書置きを残して身一つで出ていった。

当然ヒロは子供のことも、マリアの所に居ることも知らない。

目の前の視界が真っ白になる程のショックで、まるで竜宮城から浜辺に

打ち上げられ、廃人になった浦島太郎のような状態であった。

そんな状態のヒロの気持ちを切り替えてくれたのは一緒に戦った仲間たちだった。

しかしそれは当たり障りのない、慰め方ではなく、傷口に塩を塗るみたいな方法だ。

師兄弟の水樹などは突然酒を抱えヒロの部屋に殴り込み、笑いながら

【お前が結婚なんて、どうもおかしな出来事が有ると心配していたんだ。

このままでは地球が天変地異で滅びると心配してた。

これで安心して酒が飲める。お前も飲め】と言って68%の度数の酒を

飲ませながら、【私さえ結婚してないのに私を差し置いて結婚することがあったことを神様と私に感謝しろ】とか無茶苦茶である。

更に【自分の顔を良く鏡で見ろ、一瞬でも幸せな時が有ったのは

ユニオンで地球もため働いたご褒美を神様が与えてくれたんだ】と言う。

ヒロが小さい頃から水樹はヒロに武術を教えたり祖父の源三からヒロを預かったり

常にヒロにパワハラを行っていた。

しかしそれは歳の離れた弟をいじめる、姉のようなパワハラであった。

そんなパワハラがヒロに普段の生活を思い出させたのだ。

その上に中国武術の師匠である、ロンなどは良い機会とばかり、

恐ろしいまでの修行をヒロに課した。

その厳しい修行が不思議なことに悲しみを忘れさせた。

朝から晩まで化勁(太極拳の防御)を身に着けるため推手(防御の修行法)をさせ、別の日は半日、田歩という歩法をさせた後、ロンと実戦組手をしたりした。

所謂、地獄のシゴキ的な修行である。

その修行のなかで無意識の技を身に着けることこそ、危険に際して技を

繰り出せると言う。意識の上の技は危険に際してなかなか出すことが出来ない、気が付いたら体が

反応して技が出ることが大切なのだ。

この場合悲しみも無意識に忘れられる二次的効果が有る。

ロンがそんなことでヒロを特訓したかは不明だが。

ヒロは修行もこなしながら、ユニオンの任務もこなし、海外の争いを収束させる任務やテロを未然に防ぐ任務、貧困から起こる紛争国の人に、ビジネスを与えて収入を安定させて防ぐ任務など、様々な任務をこなした。

ユニオンは医療、科学、軍事、生産産業、流通ビジネス、交易を通じ、ビジネスで

お金を生み出し、さらに大きく成って行った。

そんなこんなで十五年が過ぎて行ったのだ。

十五年後のユニオンは更に活動の範囲を広げ世界中に支部を持つ大きな団体に

成って行った。

世界の支部で多くのエージェントやユニオンのメンバーが必要となり色んな分野で

新しい人間を育成する必要が出て来た。

実際に戦う必要がある実戦の武力部隊もヒロより上の世代は現場を去る年齢になり

次の世代の育成が必要に成ってきた。

その戦闘部隊の一部の育成をユニオンはヒロに依頼してきた。

戦う技術を人に教えることを良いとは思っていないヒロだが、その必要性も

認識している。

ヒロは、しぶしぶその任務を受けることに成ったのだ。




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