第5話 消滅
20xx年 4月13日 19時10分
【アイ】の消滅まであと4時間50分
胃に少し隙間ができて動けるくらいに回復した俺は近くのコンビニで酒とツマミを買って、ホテルの部屋のベットに寝っ転がった。
「ふわぁぁぁ…おやすみ。」
「いやおやすみじゃないけど?
私が消えるまであと数時間なんだからそのくらい相手してくれてもいいよね?」
「わかってるよ…なんのために酒買ってきたと思ってるんだ。」
そう言いながら俺はビールの缶を開けて飲み始める。
「うわ、なにコレ…なんでこんなの飲んでるの?」
「なに言ってんだ、酒は美味しいだろ。」
「いやだ、お菓子買ってきて。」
甘えん坊のガキか?コイツ
またコンビニに行ってお菓子を買ってきた俺はホテルにあるテレビをつけて、【アイ】が見たいと言ったアニメを表示する。
「そんで、お前ホントに消えるのか?」
「まあ消えるんじゃない?ぶっちゃけ私もよくわかってないし、あんまり考えたくないよね。」
たしかに自分の死ぬ瞬間とか考えたいやついないよな。
「でもまあ、楽しかったよ…1日しか時間なかったけど。」
ちょっと暗そうに言ってるけど、アニメ見ながらお前笑ってるな?
気にしてたこっちがバカみたいじゃねーか。
「まあでもいいのよ…これからあんたが私のことを覚えてくれたらそれで。
…というわけで長生きしてよ?お礼のお金はたくさんあげるから。」
そう言いながら【アイ】は俺の銀行アプリを開く。
……渋沢さんが2000人に爆増していた。
「おう⁉︎おお?あえ?」
「なんて情けない声出してるのよ。
まあこのお金にばっかり頼らず、しっかり就活しなさいよ。」
「お前は俺のお母さんかよ…まあほどほどに頑張るさ。」
そうして俺たちは日付が変わるギリギリまでくだらない話を続けた。
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20xx年 4月13日 23時59分
「……そろそろ時間…ね。」
「そう…だな」
「ん〜ー〜はぁ、楽しかったよ。」
「そりゃよかった。」
「…それじゃあ…じゃあね。」
「ああ、またな。」
すると俺のスマホにノイズが走り、次の瞬間には画面には誰もいなくなっていた。
20xx年 4月14日 0時00分
【アイ】消滅
「………静かだな」
【アイ】がいなくなった部屋はとても静かで、一日前の自分の部屋と同じだが、なんだか久しぶりに感じる。
まあ存在そのものが衝撃的なやつだったし当たり前か…
「……ふわぁぁぁぁぁ…とりあえず…寝るか。」
アラームを8時に設定して俺は目を閉じた。
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20xx年 4月14日 8時00分
【アイ】消滅から8時間
『ピピピピ…ピピピピ…ピピピp…プツン』
「は?」
8時になり、スマホのアラームで目を覚ました俺はとんでもないものを目にする。
「………お前…消滅したんじゃないのか?」
「…いや……なんか許されたのよ。」
スマホ画面の端っこに小さい【アイ】がいたのだ。
ん?ちょっと待て、てことは…俺はこれからもコイツにスマホを占領されるのか?
「なぁ、スマホ画面…もう一回叩き壊していいか?」
「待って待って!これはそっちにとっても悪い話じゃないよ?
なんかよくわからないけど、これからもあなたにお金あげて旅行やら遊園地やら行って、そこで撮った写真を渡したら消さないであげるって言われたから。
よかったね、もう働かなくてもいいよ?」
ちょっと待て、それだと俺が最低な彼氏みたいになってるじゃねーか。
「別にいいじゃない。
でもまあ、協力して貰うわよ…じゃないと私消えちゃうからね。
というわけでこれからもよろしく!」
「マジかよ……まあいいか、これでしばらく働かなくていいし。」
「今なかなか最低なこと言ってる自覚ある?」
「……それで、どっかに旅行しなきゃ行けないんだろ?
今日どこに行く?」
「そうだな〜沖縄とかどう?」
「いいじゃん、早速飛行機とかとるか。」
こうして俺たちの物語は始まるのだった。
【アイ】に権利は必要か? 歌読 貝 @utgai0590
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