ミライ

しゅう

ミライ

~♪☆


『私は「ボーカロイド」の、「コスプレ」の、「踊ってみた」、が何よりも好きだった。』


オタク人生を嗜み初めた私のきっかけであり総(すべ)て。


私よりも大人の人達が、まるで宝石の様に、キラキラしながら踊る、その姿が。


ホントは最初、恥ずかしい気持ちがあった。


「大人が……何してるんだ」って。


共感性羞恥心、と言うのに近いんだと思う。


でもそれは私が何も知らなかったから。


今なら解るんだ。


自分を貫く姿が、自分らしさが、結晶化したもの。


どんな希少な宝石にも、特異な宝石にも、敵わない。


~♪☆


「あ~、、、、、」

「入学式だるぅ………、、」

「明日行きたくね~…………、、」

「学校は楽しみなんだけどな~………、、」

軽く飛んでベッドに転がった。


過疎化している動画アプリを開く。

そして手早い手つきで動画を開いた。

「今のターンうまっ!!」

スマホの画面には宝石のような姿で踊る女性が映っている。

ボブのウィッグが軽らかに揺れている。

「楽しそう………」

「かっこいいなぁ……」


ピースが特徴的なダンスを少し傾けたピースで踊るのが印象に残る女性だった。


~♪☆


「中学卒業速くね?」

「そうねぇ~」

「高校だるい」

「蛍は高校嫌なの?」

「藍奈よりも人付き合いうまくないもの、あたり前じゃん」

「周りの皆に恵まれてるだけよ?」


「卒業記念で写真撮るぞーー!」


(周りに恵まれるのも才能だろ………)

ジト目で見つめられているのにも気づかないぐらいふんわりしている。

「行こう?」

「おん…」


藍奈のピースは性格に似合わない、指をグワッと開いたピースだった。


~♪☆


「オタクの資金調達は楽ちゃいますなぁ………、、」

コンビニのスタッフルームの椅子に腰掛ける。

休憩中、またいつもの動画アプリを開こうとする。

しかしスマホにはLINEの通知が届いていた。


『明日アニメイト行かない?』


「おっ、藍奈じゃん」


『いいね!行こ!』


~♪☆


瞼の裏側の思い出を噛み締めるように、目を開ける。


「蛍?」


あの日が直ぐ後ろにある。


そして目の前には親友がいる。


アニメイトに行ったあの日、私達2人はコスプレをしながらボーカロイドに合わせて踊る人を見た。

きっかけはそれだけ。

私が藍奈に頼みこんでここまできた。


あの日見ていた、踊ってみたの動画。

目を輝かせてみた動画。

あの日の気持ちを思い出したくて、誰かに知って欲しくて…、、


「ごめん、やろう!!」


藍奈に声を掛けてカメラを回す。


音楽を掛ける。


~♪☆


被ったウィッグを軽らかに揺らしながら、ターンする。


~♪☆


そして2人でピースを突き出した。


片方のピースは少し傾いていた。

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ミライ しゅう @shyuukorandm

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