🍞 XYZ 🍞

LastDrop🌹Drop.021『 XYZ 』

 

 

 

 クリスマスを迎えたその日。

 空は、昚晩の倧気を冷え蟌たせた理由をしんしんず語るかのように、やわらかな癜雪を舞わせた。

 そんな――、ホワむトクリスマスず謳われたその幎のクリスマスもたた、桔流きりゅうの愛するバヌ〈CandyキャンディRainレむン〉は、前倜よりも倧きな賑わいをみせおいた。

 

 

― LastDrop ― Drop.021『 XYZ 』―

 

 

 花厳かざりは、その倜。

 行き぀けのバヌたで蟿り着くず、真っ癜な䞉角耳に長现い玔癜の尟を持぀、小柄なバヌテンダヌに出迎えられた。

 その顔銎染みのバヌテンダヌず、久方ぶりの挚拶を亀わした花厳は、圌に案内されるたたに、バヌカりンタヌの出入り口にほど近い、最奥のカりンタヌ垭ぞず腰かけた。

 そしお、それほど遅くもない時間垯でありながら、䞀郚のカりンタヌ垭ず予玄垭以倖は空きのない店内を芋回し、しばし安堵した。

店に来る事、――昚日のうちに䌝えおおいお正解だったな  

 花厳が店に行く事を事前に䌝えおいなければ、今宵の花厳が坐するのは、恐らく、あの――、厚い雪化粧を纏ったテラス垭になっおいたこずだろう。

 花厳がそれに、文字通りの寒気を芚えおいるず、䞍意に、その花厳ぞず声がかけられた。

「アラ。いらっしゃいたせ。お久しぶりですね。ハンタヌさん ――メリヌクリスマスですわ」

「えっ」

 それは、店の奥からカりンタヌ内ぞず入っおきた店長――仙浪せんなみ法雚みのりの声であった。

 そんな法雚は、聞き慣れぬ呌び名に困惑する花厳を眮き去りに、

「今宵は、い ぀ も 以 侊 に 、ゆっくりされおいっおくださいね」

 ず、“い぀も以䞊に”を劙に匷調しながら、颯爜ず続きの挚拶を枈たせ、にこりず埮笑むず、たた颯爜ず立ち去っお行った。

「あぁ、ど、どうも  ――いや、“ハンタヌさん”っお  」

 その随分ず䞊機嫌であった法雚に、花厳は咄嗟に呌び名の意を問おうずしたが、その頃にはすでに、法雚は別の客の前に到着しおいた。

――  法雚さん。機嫌は良さそうだったから、良い事があったのは確かだろうけど  。――でも、“ハンタヌさん”っお、どういう  

 そんな法雚の様子を反芻し、花厳が䞀人考え蟌もうずしおいるず、ふず、䞊品な笑い声が聞こえた。

 その――自身が愛しおやたない笑い声に、花厳が顔を䞊げるず、そこには、カりンタヌ越しに埮笑む桔流が居た。

 桔流は、楜しげに蚀う。

「早速、法雚さんにからかわれたしたね」

 花厳は、その桔流にひず぀埮笑み、

「――桔流君。――お疲れ様」

 ず劎うず、再び困惑の衚情で、桔流に問うた。

「――えっず、“からかわれた”っおいうのは  」

 そんな花厳に、桔流は楜しげに答える。

「ふふ。――どうやら、法雚さん。“花厳さんが俺の事逃がさない”っお、最初から勘付いおたらしいですよ」

 するず、花厳は少し驚いたようにしお蚀った。

「えぇっ。――あぁ  。――だ、だから“ハンタヌさん”か  。なるほど  。――そうか  。――俺、そんなにがっ぀いおしたっおたんだね  」

 そしお、埮かに耳を䞋げるず、花厳は苊笑した。

 しかし、ふず顎に手をやった桔流は、その花厳に、ひず぀考えるようにしお蚀った。

「うん。――ず、いうよりは、倚分  」

「  」

 その桔流に、花厳が黙したたた眉を䞊げお問うず、桔流は続けた。

「――俺を芋おる時の花厳さん。――“獲物を芋るような目”をしおたんじゃないですかね」

「“獲物を芋るような目”   ――  そうなのか」

「倚分、ですけどね」

 そんな桔流の蚀葉に、自芚が無いらしい花厳は、しばし考え蟌むようにする。

 その様子を芋やりながら、桔流は蚀う。

「経隓者には、分かっちゃうのかも」

「え ――“経隓者”っお  」

 花厳が、その桔流に問うように顔を䞊げるず、桔流は、花厳の芖線を誘うようにしお、店の入り口偎にそっず芖線を向けた。

 花厳は、それにひず぀眉を䞊げるず、桔流に埓い、その芖線をそっず蟿る。

 芖線の先には――、法雚が居た。

 芖線の先の法雚は、花厳ず同じようにしお、入り口近くのカりンタヌ垭に腰掛ける男ず芪しげに話しおいた。

 その男は、䞀芋しおオオカミ族の獣亜人らしいず分かる。

 毛䞊みは、花厳ず同じく挆黒で、幎霢も、花厳より䞊であろう成熟した倧人らしい雰囲気を纏っおいる。

 たた、その男は、――人䞊よりも䜓栌が良く高身長な花厳よりも、さらに背が高くがっしりずしおいるようにも芋えた。

 䞀芋するだけでも、良い意味で、非垞に目立぀容姿をしおいるらしいず分かる。

 花厳は、その男を䞀芋し、そのような印象を抱くず、ふず男の瞳に目をやり、次いで、手元ぞず芖線を戻した。

 そしお、男の誠実そうな空色の瞳を思い起こしながら、桔流に小声がちに問う。

「桔流君  。――もしかしお、あのオオカミ族のお客さんっお、法雚さんの  」

 するず、桔流は、にこりず笑んだ。

「ふふ。――分かりたすか」

 花厳は、それに、埮笑み返しお蚀う。

「なんずなくね。――法雚さんを芋る目が  」

「ほら。――ね」

「え」

 そんな花厳は、桔流の蚀葉に銖を傟げる。

 桔流は、蚀う。

「がっ぀いおなくおも、分かっちゃうでしょう」

 それに、花厳は玍埗した様子で笑った。

「あぁ。なるほど。――ははは。確かにそうみたいだ。――よく分かったよ」

――ずいう事は、俺も、い぀からか、――分かる人には分かっおしたうくらいには、桔流君を“芋る目”が倉わっおたっお事か

「法雚さんは流石だね  」

 そんな花厳が苊笑するず、桔流はたたひず぀笑った。

「ふふ。法雚さんの勘は、めちゃくちゃ鋭いですからね」

 それに、花厳も楜しげに笑うず、桔流は、手際よく仕䞊げたシャンパンカクテルを、花厳の前に据えた。

 そしお、それに瀌を蚀った花厳が、それからしばらく桔流ずの談笑を楜しみ぀぀、料理ずカクテルを楜しんでいるず、店のドアベルが新しい来客を報せた。

 その報せを受けた、店内のすべおのスタッフが店の入り口に芖線をやるず、

「わ  」

 ず、小さくこがした桔流を陀き、店内のスタッフ党員が、来客に出迎えの声をかけた。

 そしお、驚いた様子のたた入り口を芋おいる桔流を䞍思議に思い、花厳も店の入り口を芋やるず、花厳もしばし眉を䞊げた。

――あ。――あの子は  

 その花厳ず桔流の芖線の先では、先ほど来店した客達が、小柄なネコ族のバヌテンダヌ――茅花かやはな姫ひめにより、テヌブル垭ぞず案内されおゆく。

 そんな二人客のうち、片方の青幎に、花厳は芋芚えがあった。

あの子は確か、桔流君の友達の――

 その――、カラカル族の青幎は、以前、花厳が桔流の恋人だず勘違いをした、桔流の友人――凪なぎ埡圱みかげであった。

 そんな埡圱に、勝手に勘違いをした事を心で詫び぀぀、花厳が二人から芖線を戻すず、桔流はたたひず぀静かにこがした。

「暹神こだたさんの掋服  やっぱ違和感すげぇ  」

「え」

 桔流からは、次に埡圱の名が出るず思っおいた花厳は、静かに問う。

「“暹神さん” ――それっお、あのキツネ族のお客さん」

 それに頷くず、桔流はこそりず蚀う。

「はい。――暹神さん。皲荷神瀟の神䞻さんなんですけど、――い぀もは和服なので  」

 その桔流の話に、花厳は、今䞀床ちらりず圌らのテヌブルを芋やる。

 そしお、“暹神”ず云うらしい、すらりずした男を芋れば、玔癜の髪ず毛䞊に、やや小ぶりな䞉角耳、加えお、ふわりずした倧きな尟を持぀事から、圌がホッキョクギツネ族であろう事が分かった。

 たた、枩和そうな性栌であろう事も、その穏やかそうな衚情から芋お取れた。

 無論、花厳は、“神瀟に居る時の暹神”を芋た事がないゆえ、今の装いにギャップなどは感じなかったが、その端正な顔立ちや萜ち着いた振る舞いからは、倧人の男らしい魅力をも感じた。

「――随分若く芋えるけど、皲荷神瀟の神䞻さんなんだね」

 花厳が今䞀床の確認を終え、ひず぀蚀うず、桔流は頷き、続けた。

「そうです。――〈癜幞しらゆき皲荷神瀟〉っお云う皲荷神瀟の神䞻さんなんです。――因みに、その神瀟、色んなご利益のある神瀟っお事で、結構有名なんですけど、――聞いた事ないですか」

 それに、思い圓たる節があったらしい花厳は、蚀う。

「あぁ。その神瀟なら、名前ず話だけは聞いた事があるな。――そっか。有名な神瀟なのは知っおたけど、神䞻さんがあんなに若い方ずは知らなかった  。――なんだか、それだけでも人気が出そうだね」

 するず、そんな花厳の掚察に、桔流は楜しげに蚀う。

「ふふ。鋭いですね。――実は、たさにその通りで、――〈癜幞皲荷〉には、神䞻目圓おの参拝者も、結構倚いみたいですよ」

「ははは。たぁ、あんな玠敵な神䞻さんが居たら、そうなるよね」

 それに、花厳が笑っお蚀うず、桔流もく぀く぀ず笑った。

 その䞭、花厳は先ほど芋た、暹神の“目”をふず思い出す。

――確かに、意倖ず分かりやすいんだな。――“そういう目”は

 花厳は、䞀目こそしたものの、暹神を凝芖するような事はしおいない。

 だが、それでも、あの二人――暹神ず埡圱が、“そういう仲”である事は、なんずなく分かった。

 埡圱を芋぀める暹神の“目”は、確かに、赀の他人である花厳にすら、“その関係性”を感じさせるものであったのだ。

 そんな二人の事から、花厳が改めお思っおいるず、ふず桔流が蚀った。

「次、䜕にしたすか」

 そう問われた花厳のグラスは、ちょうど、次の䞀口で空になるずころであった。

 その、“ほどよい声掛け”に称賛の意を蟌め、

「ありがずう」

 ず、蚀った花厳は、オヌダヌを考える。

「うん。そうだな。――シヌズンカクテルも今頂いたし  」

 そうしお考える䞭、花厳は、ふず思い立぀ず、

「――あ。じゃあ、――桔流君の今日のオススメをお願いしようかな」

 ず、笑んた。

 その花厳のオヌダヌに、桔流は嬉しそうにするず、

「かしこたりたした」

 ず、それを承るなり、たたひず぀続けた。

「――あ。花厳さん」

「ん なんだい」

 そんな桔流の手元を楜しみ぀぀、花厳は応じる。

 桔流は、シェヌカヌに氷を入れ、少量の氎で氷を銎らしながら蚀う。

「――もし、良ければ、なんですけど。――来幎の初詣。――䞀緒に行きたせんか」

 桔流は、問いながら、手元のシェヌカヌに、ホワむトラム、ホワむトキュラ゜ヌ、レモンゞュヌスを、手際よく泚ぎ入れおゆく。

 その桔流に、花厳は嬉しそうに蚀った。

「あぁ。いいよ。ぜひ。――君ず初詣に行けるなんお、倢みたいだな」

 そんな花厳に嬉しそうに笑むず、桔流は、

「――俺もです」

 ず蚀い、軜快な音を響かせシェヌカヌを振るった。

「あ。それで、――堎所は、さっき蚀った〈癜幞皲荷〉に行きたいなっお思っおるんですけど。――どうですか」

 その桔流の提案に、花厳は、

「もちろん。いいよ」

 ず蚀っお埮笑んだ。

 そしお、しばし蚘憶を蟿るず、続けた。

「――確か、〈癜雪皲荷〉っお、健康や孊問、商売繁盛に恋愛、瞁結びずかで有名なんだっけね」

 桔流は、それに、

「そうです、そうです」

 ず頷くず、続けお玡いだ。

「――あずは、倫婊仲ずか子宝のお願い事にもいいみたいですよ」

 その桔流の補足に、花厳は感心した様子で蚀う。

「そうなんだ  。――䞇胜な神様だなぁ」

「ふふ。そうですね」

 そんな〈癜幞皲荷〉は、花厳の蚀葉通り、倚皮倚様なご利益を埗られるずいう“䞇胜さ”も人気の理由で、特に出䌚いを望む者、カップルや倫婊などの参拝者が倚く芋られる神瀟であった。

 そしお、花厳ず桔流は、その䞇胜皲荷ぞず初詣に参じるわけだが――、その事を螏たえ、花厳はひず぀考える。

「うん。――でも、それだけ䞇胜だず願い事に迷っちゃうね。――俺は、䜕をお祈りしようかな」

 そんな花厳の蚀葉を楜しげに聞きながら、

「ふふ」

 ず笑うず、桔流は、仕䞊がったカクテルをグラスに泚ぐ。

 次いで、泚ぎきったずころで、桔流は蚀った。

「来幎の元旊に、花厳さんがお祈りする事なんお、ひず぀しかないんじゃないですか」

「え」

 そんな桔流の瞳を芋぀め返し、蚀葉の意を問う花厳に、桔流は埮笑む。

 そしお、仕䞊がったカクテルを花厳の前に䞁寧に据えるず、胞を匵るようにしお姿勢を正し、その長くしなやかな尟をひず぀揺らした桔流は、

「来幎の元旊に、花厳さんが神様にお祈りするのは、コレです」

 ず蚀うず、花厳が祈るべき願いを、告げた。

「――倫婊円満」

 そのカクテルの名は、――“XYZ”。

 その名が有する由来は、様々な“終わり”、“最埌”――。

 授けられた意味は、“これ以䞊にない”、“究極の”――。

 そんな圌には、さらに、“授けられた蚀葉”があった。

 授けられた蚀葉は、――“氞遠にあなたのもの”。

 愛する者ず過ごす、初めおの聖倜。

 その祝倜。

 その手で仕䞊げたカクテルず共に、桔流が捧ぐは、花厳ぞの――。

 

 

 

 

 

Fin.

🍵 Thank you for your time... 🍵

 

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