クリスマスの夜、百均にて
のう
クリスマスの夜、百均にて
クリスマスなんてクソくらえだ。
24日も25日も塾、宿題、塾の勉強三昧。
楽しいことなんてありゃしない。
親にも「サンタさんは中学生までしか来ないのよ」と笑顔で言われてしまったし、
もちろんプレゼント交換をするような友達も恋人もいない。
せめて無心で勉強に集中しようと思っていたのに、
運悪くシャー芯が切れていて、買い出しに出る羽目になった。
厭々街に出てみると、案の定そこには楽しそうなカップルだらけ。
……くっそ、羨ましい。なんで私はストックを買っておかなかったんだ。
幸せムードの中を潜り抜け、ようやくたどり着いた百均で私はため息をついた。
店内にもクリスマスソングが大音量で鳴り響いている。
……早く買って帰ろう。
シャー芯と、その他もろもろ文房具をかごに入れていく。
もう二度と同じ過ちはしまいと
ひとしきり文房具のストックを買ったら、まあまあの量になった。
こりゃあビニール袋もらわないといけないなと考えながらレジに向かう途中。
あるコーナーの一角が目に留まった。
「……かわいい」
思わず足を止めて、商品におそるおそる近づく。
ラッピングコーナーの隅に、ぽつんと置かれていた紙袋。
サンタ帽をかぶったクマがプリントされている。
正直地味めなデザインだったが、クマの表情がなんとも言えず愛らしかった。
「うわ、かわいいなおまえ」
思わず声が漏れる。つぶらな瞳は、まるで私に買えと訴えかけているようで。
……ああそうだ、いいな、それ。
数分後、全ての買い物を終えて私は店を出た。
手には、買った文房具たち――が入った例の紙袋。
私の足取りはかすかに、しかし確かに軽くなっていた。
「ふふ、クリスマスプレゼント」
安いし日用品だけど。でもこれは確かに、楽しい気分だ。
帰りにイルミネーションの写真でも撮って帰ろうかな、とか思いながら
私は紙袋に笑いかけた。
クリスマスの夜、百均にて のう @nounou_you_know
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます