月下の死神は魔法少女になった
心之助(修行中)
「我は死神、魔法少女ではない!」
私は
なんか
人生オワタ。
えーと、なんだっけ? そうそう、まだ12歳らしい。
嘘やん、たった12年しか生きれなかったんご。
なんか、明日死ぬらしいけど、やっぱさぁ、最後は一人で綺麗な場所で満月でも見ながら死にたいんじゃ。
てなわけで、私は病院を抜け出して近くの展望台に来たんよ。
ほえー、人生最後の満月は綺麗ですなぁ。
「おい、貴様。もうじき死ぬ奴が、こんな所で何をしてる?」
綺麗な女性の声がしたので振り返ると、そこには、ポップな衣装で肌面積も少ない衣装を着て、黒い頭巾から金色の髪が伸びている美しい女性が月光に照らされて立っていた。
しかも手に巨大な大鎌があるけど、なんかステッキみたいなデザインだな。
このコスプレっぽい女性が誰なのか知らないが、職業だけは分かった。
「ま、魔法少女だ!!」
「……は? この姿を見て、なんで魔法少女だと思う?」
「隠しても無駄です。アナタからは、何やら魔力のような波動を感じます」
「ほぉ、死が近いから死神の魔力を感じれるのか」
「なるほど、自称死神の魔法少女ですね。わかります」
「違う!! ワタシは死神のシャルだ! 貴様の魂を奪う為に来たんだぞ!」
「おぉふ、死ぬ前に魔法少女に告白された」
「ネガティブなのか、ポジティブなのかどっちかにしろ!」
私は、自称死神の魔法少女に告白されて普通なら喜ぶべきだが、全然喜べなかった。
いやいや、だって明日死ぬんよ? 私って女の子だしぃ? 死ぬ前に彼女ができても相手が悲しむだけじゃん。
なので、私は丁重に告白を断った。
「綺麗な魔法少女に告白されて嬉しいけど、明日死ぬので、私の魂を奪うと言う素敵な言葉だけ受け取って安らかに寝ます」
「……なぁ、怖くないのか?」
「え? 何にですか?」
「いや、まぁワタシが死神とかどうでも良いが、貴様は明日死ぬんだぞ? 12年しか生きられなかったからと言って、後悔とか無いのか?」
「うーん、無いですね。別に私が死んでも悲しむ人なんて居ませんよ」
「……貴様、本気でそう思ってるのか?」
「だって、明日死ぬって言ってんのにお母さんもお父さんも仕事が大事とか言うし、娘の私の事なんて何とも思ってませんよ」
そう、たかが12年しか生きれなくて、明日死ぬ娘なんてどうでも良いのだろう。
「なるほど、お母さんもお父さんも来ない。ふむ、確かに孤独だな。だが、今の貴様は孤独ではないだろ?」
「え?」
「ワタシは死神として貴様の魂を奪いに来たが、魔法少女だったか? ならば、貴様に奇跡を見せてやる」
魔法少女のお姉さんは、大鎌をくるりと回転させると、蛍のような光の玉が大量に出現して、幻想的に色んな色に変えながら、私の周囲を回り始めた。
「すごい」
「ふふん! どうだ? これで嫌な気分から解放されたろ? そうだな、死後の世界では貴様を天国に送ってやる。閻魔大王のジジイに直談判してやる。これなら文句ないだろ?」
「ほぇー、魔法少女って、閻魔大王様に直談判できるんだ……なんでそこまでしてくれるの?」
「貴様が孤独に死に向き合って、孤独でありながらも努力をやめなかった褒美だ。今夜だけ、貴様の願いを叶えてやる」
「……」
なんだろう? 胸の奥が熱くなってきた。これは何?
私は、目の前の魔法少女に向かって、自分の今の気持ちを伝えた。
「自称死神の魔法少女さん。アナタは優しいのですね。だったら、無茶なお願いだけど、これからも生きる事を諦めた人達の前に現れて、その魔法で人々を救ってくれませんか?」
「む? 急な願いだな。そう言えば、貴様の名前を聞いてなかったな。名前は何と言う?」
「立花と申します」
「そうか、立花。貴様とは一夜限りの出会いだったが、貴様の事は忘れないぞ。小さな努力家さん」
□
翌日、ワタシは病室に訪れると、立花はベッドの上で亡くなっていた。
ワタシは死神、決して魔法少女ではないが、それでも一夜限りの立花との友情を忘れたくない。
ワタシは、死神としての仕事もしながら、孤独に死に向き合う者達に勇気を与える魔法少女としての活動も始めた。
死に向き合う者達に幸福を。
月下の死神は魔法少女になった 心之助(修行中) @sake3671
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