第2話 まさかの真相

 空がどんよりと曇り始めてきた中、宮脇が奥に向かって歩いていると、突然今まで見たことのないような難コースが出現し、彼は目を丸くした。

 所々荒れている、その場所は、さながらモーグルのコースのように大きなコブが散見していた。


(なんだ、これは? こんなの、日本はおろかヨーロッパでも見たことないぞ)


 宮脇はそんなことを思いながらも、とりあえずコースを確認しようと、慎重に滑り出した。

 しかし、一つ目のコブをなんとかクリアしても、次から次へと出てくるコブに対処しきれず、宮脇は幾度となく転倒した。


(くそ。さすが幻のコースと言われているだけあって、このコースを攻略するのは至難の業だな。

でも、もし攻略することができたら、次の大会に向けて、かなりの自信になる)


 その後、何度か滑ってコースを完璧に覚えた宮脇は、雪が激しく降り出してきた中、スタートから全速力で滑り出した。

 コブを次々とクリアしながら、どんどん前に進み、スピードが乗り切ったところで、このコース最大のコブに差し掛かった。


(これをクリアすれば、後はゴールまで一直線だ。かなり苦労したが、ようやくこの難コースを攻略することができた)


 ゴールする前からそんなことを考えていた宮脇だったが、コブをクリアしようとした瞬間、雪の粒がゴーグルに付着し、彼の視界を完全に遮ってしまった。


「うわあ!」


 悲鳴を上げながらコブに激突した宮脇は、そのまま倒れ込み、意識を失ってしまった。




 その後、宮脇は病院のベッドの中で目を覚ました。


「おっ、気が付いたか」


 そこには、彼の知らない中年男性がいた。


「あなた、誰ですか?」


「私はスキー場のオーナーをやっている木村だ。君が倒れているという連絡を受けて、この病院に運び込んだんだよ」


「……そうですか。ちなみに、誰が連絡したんですか?」


「声からすると中年女性みたいだったが、誰かは分からない」


(デーモンさんだ。あの人、俺がなかなか戻ってこないのを心配して、様子を見にきてくれたんだな。でも、なんでオーナーにそう言わなかったんだろう)


 宮脇はそんなことを思いながら、木村に訊ねた。


「それにしても、あの人スノーボード上手ですよね。もしかして昔、オリンピックに出たことがあるんですか?」


「ん? 誰のことを言ってるんだね?」


「幻のコースの手前で見張りをしていた女性ですよ。あの人、従業員なんでしょ?」


「はあ? 何を言ってるんだ、君は? うちにはそんなコースなんてないし、従業員に見張りなんてさせてないよ」


「えっ! ……けど、俺は何度もそのコースを滑ったし、そこで転倒したんですよ」


「君は通常のコースで倒れてたんだよ。君、夢でも見てたんじゃないか?」


(そんな馬鹿な。じゃあ、あの女性は何だったんだ……もしかして、1043歳って言ったのは、ボケじゃなくて本当の……)


 見る見る青ざめていく宮脇の様子を見て、木村は慌てて医者を呼びに行った。


  了






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あるスノーボーダーの不思議な体験 丸子稔 @kyuukomu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画