第5話

リナが選んだ道は、光の小道だった。その先には無数の星々が散りばめられた空間が広がっており、どこまでも続く階段が浮かんでいる。階段の最上段には大きな机と一冊の本が置かれていた。その本は、今まで見たどの本よりも重厚で、金の装丁が光り輝いている。


リナはゆっくりと階段を登り始めた。一歩一歩進むたびに、過去の記憶やこれまで紡いできた物語の断片が脳裏に浮かぶ。荒野での試練、影との対峙、湖の星々…。すべての出来事が今の彼女を作り上げている。


「ここが最後の試練の場所か…。」リナは机の前に立つと、深呼吸をして本を開いた。


本の中は最初のページから最後のページまで白紙だった。しかし、その中央には一つだけ言葉が記されていた。


「この本は書き手の心を映す。」


その言葉を目にした瞬間、リナの手元に光のペンが現れた。これまで持っていたペンとは異なる、彼女自身の意志が具現化したような道具だった。


「書き手の心を映す…私がここに何を書くかで、全てが決まるのね。」


守護者の声が空間に響く。

「そうだ。この本は図書館の中心であり、君が書き上げる物語がすべての物語の結末を決める。この場所では、君自身が信じる未来を選ぶのだ。」


リナは迷いなくペンを握り、本の最初のページに書き始めた。


「物語とは、人々をつなぐ架け橋である。どんなに小さな物語でも、それが誰かの未来を変える力を持つ。だからこそ、すべての物語は存在する意味があるのだ。」


彼女がその一文を書き終えると、本の中から光が溢れ出し、階段や机、さらには図書館全体を包み込んでいった。リナは光の中で目を閉じたが、温かさと安らぎを感じた。


気がつくと、リナは自分の部屋に戻っていた。机の上には、彼女がずっと探していた物語の地図が置かれている。しかし、それは以前の地図ではなく、新たに書き加えられた線がいくつも描かれていた。


リナは地図を見つめながら微笑んだ。「これからが本当の始まりなんだわ。」


彼女はペンを取り、新しい物語を書き始めた。今度は、自分だけでなく、すべての人に希望を与える物語を。


「物語は終わらない。それは書き続ける限り、何度でも新しい世界を生む。」


そしてその日、リナが書き始めた一文が、後に世界中の人々に語り継がれる物語の始まりとなったのだった。


完(仮)

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