第4話
リナは静かに湖へと歩み寄った。水面はまるで鏡のように静まり返り、彼女の一歩一歩が光の波紋を広げていく。湖の中心で輝く存在は、人のようでもあり、星そのもののようでもあった。その瞳には宇宙のすべてが映り込んでいるように見える。
「私を呼び覚ましたのは君の物語だ。」その存在は再び言葉を発した。「私は星々の記憶を守る者。だが今、君が紡ぐ言葉によって新たな未来が生まれようとしている。」
リナはペンを握りしめ、静かに問いかけた。「私が書いた物語が、なぜそんなに大きな力を持つの?私はただ、自分が感じたままに書いているだけなのに…。」
存在は微笑むように光を揺らしながら答えた。「物語とは、世界そのものだからだ。一つの物語が現実を変え、新たな運命を生む。だが、それが正しい方向に向かうかどうかは、君の心次第だ。」
その瞬間、湖の水面がざわめき始めた。リナは振り返ると、湖の縁から暗い霧が立ち込め、影のような存在がじわじわと近づいてくるのを目にした。
「彼らは何…?」
「それは失われた物語の残響だ。記憶されることなく消えていった物語たちが形を持つことで、怨念となったものだ。彼らは新たな物語を破壊しようとする。」
影たちは低い唸り声をあげ、湖の光を吸い取るかのように動き出した。リナは恐怖を覚えたが、同時にペンが震えるように彼女の手を導いているのを感じた。
「今こそ試練の時だ、リナ。」星の存在が厳かに告げた。「君の物語でこの影を浄化するのだ。」
リナはペンを持ち、湖の上に立つ。言葉が湧き上がるままに彼女は書き始めた。
「彼らは失われるべき存在ではない。ただ、再び語られることを待っているだけなのだ。」
その言葉を書き終えると、影たちは一瞬止まり、そして少しずつ形を変え始めた。怨念のような姿は消え去り、彼らは穏やかな光の粒となって湖へと溶け込んでいく。
湖の輝きが増し、星の存在が再びリナに語りかけた。
「君は選んだ。破壊ではなく、再生を。これは簡単な道ではないが、真の書き手だけが進む道だ。」
湖が静けさを取り戻すと、次の扉が水面に現れた。扉の奥からは心地よい風と未知の可能性を感じさせる光が漏れ出している。
「この先に進めば、君の物語はさらに深い試練を迎えるだろう。」
リナは迷うことなく扉に向かって歩き出した。
「私は最後までこの物語を書き切る。どんな未来が待っていようとも。」
扉を開けた先には、輝く星々とともに無数の道が広がっていた。それぞれの道が新たな物語の始まりを告げているようだった。リナはその中から一つを選び、再び歩みを進めた。
彼女の冒険はまだ始まったばかりだった――。
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