第3話

巨大な影はリナに向かって突進してきた。その羽音は嵐のように荒野を揺るがし、獣の咆哮が空気を切り裂いた。だがリナは逃げなかった。ペンを握る手をさらに強くし、心の中で物語を紡ぎ続けていた。


「この物語は私のもの。だから私は、この結末を自分で決める…!」


リナがペンを走らせるたび、獣の動きが少しずつ変化し始めた。その足元に花が咲き、鋭い爪が柔らかな光を帯びた羽に変わる。そして、咆哮は次第に優しい風の音に変わっていった。


すると突然、巨大な影が立ち止まった。リナの前に降り立つと、その目が彼女をじっと見つめた。金色の瞳はどこか懐かしい温もりを帯びている。


「あなたは…私を傷つけるために来たわけじゃないの?」リナは静かに尋ねた。


獣は言葉を発さないものの、ゆっくりと頭を下げた。そして、口から小さな光の球を吐き出した。その光はふわふわとリナの手元に漂い、ペン先へと吸い込まれていった。


守護者の声が背後から響く。

「よくやった。君は恐怖ではなく、創造の力でこの試練を乗り越えた。その光は、君が初めてこの図書館に刻んだ物語の核となるものだ。」


リナがペンを見つめると、インクがきらきらと輝いていた。試練を経て新たな力を得たペンが、さらに深く、豊かな物語を書く力を与えてくれることを感じた。


だがそのとき、図書館全体が再び震え出した。壁に刻まれた古い文字が光り、守護者が少し緊張した面持ちで空を見上げた。


「どうしたの?」リナが尋ねると、守護者は低い声で答えた。

「君の物語が、すでに図書館の中核に影響を与えているようだ。この世界は、君が紡ぐ言葉と共に進化する。だが、それには危険も伴う。」


守護者が指を鳴らすと、目の前に別の扉が現れた。

「次の試練に進む準備はできているか?」


リナはその扉を見つめた。荒野での経験は彼女を疲れさせたが、同時に新たな決意も生んでいた。

「もちろん。私はこの物語を最後まで書き切るわ。」


扉を開くと、リナの目の前にはまるで夜空のように輝く湖が広がっていた。水面には無数の星々が映り込み、まるで宇宙そのものが広がっているかのようだった。


その湖の中心で光り輝く存在がリナを見つめている。それは、これまでのどの存在よりも強大で、神秘的だった。


「君の物語が、私を呼び覚ました。」


湖の声が響き渡ると同時に、新たな試練の幕が上がった――。

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