第2話

リナがペンを持った瞬間、手の中から温かな光が生まれた。その光は、目の前の本棚の一冊をまるで誘うように照らし出した。リナはその本を引き出し、表紙に刻まれたタイトルを読んだ。


「未来を記す者」


リナはゆっくりと本を開いた。しかし、そこに書かれていたのは意外にも白紙だった。


「どういうこと?」とつぶやくリナに、黒い羽根を持つ存在――「守護者」と名乗るその者が静かに答えた。


「ここにある本は、書き手の心に宿る物語が具現化したものだ。そのペンを持つ限り、君はどんな物語も生み出せる。ただし、この図書館の物語を書くには、覚悟が必要だ。」


「覚悟…?」リナは尋ね返した。


「そうだ。この図書館に生み出された物語は、ただの空想ではない。それは現実に影響を及ぼす。君が書く言葉一つひとつが、世界に新たな運命を生み出すのだ。」


リナはその言葉を聞き、思わず息をのんだ。しかし、彼女の胸の奥で小さな炎が灯るのを感じた。「それならなおさら、私には書きたい物語がある。」


守護者は満足げに微笑み、片手を上げた。その瞬間、本棚が揺れ、天井が開き、図書館全体が動き始めたかのようだった。リナの前に新たな扉が現れた。


「では、最初の試練だ。この扉の向こうに進み、そこで見たものを書き留めよ。それが君の物語の始まりとなる。」


リナはためらいながらも扉に近づいた。扉を開けると、そこには広大な荒野が広がっていた。空は赤く染まり、奇妙な建造物がいくつもそびえ立っている。


「ここは一体…?」


そのとき、遠くから巨大な影が現れた。それはまるで翼を持つ獅子のような生物だった。リナはその迫力に一瞬怯えたが、ペンを握る手に力を込めた。


「書き手になるというのは、こういうことなのね…!」


荒野に足を踏み出した瞬間、リナの頭の中に言葉があふれ出した。彼女はそのすべてをペンで書き留め始めた。そのペンが紙に触れるたび、目の前の世界が変わり始めた。荒野には緑が広がり、空は青く澄み渡る。


しかし、巨大な影は消えるどころか、リナに向かって突進してきた。


「これも試練の一部なの…?」リナは立ち止まらずに書き続けた。彼女の物語がどう展開するのか、運命の瞬間が迫っていた――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る