第2話 異世界転移
2044年、東京都内のとある街。
銃弾が飛び交い、地雷の埋まる戦場において、人では無くロボットが戦うというのは避けようのない世の中のトレンドで、実際にこれまでも誘導型のドローンなどによる戦闘が日常化している。
俺が首都大学総合研究センターで開発・研究しているロボットは、二足歩行、人型のGRZ24と四足歩行、狼型のGRZ44だった。
どちらも、コンピュータ上のシミュレーションによってAIの運動神経機能の育成を数万世代にわたって進めており、実に滑らかに動くことができる。GRZ24は遠隔操作するタイプでGRZ44は自律的に人型をサポートするタイプだ。
GRZ24は身長三メートルあるものの通常の人間の二倍の速度で動くことができ、発揮する力は十倍ある。GRZ44は身長は二メートルで、普通のシベリアにいる灰色狼と比較してやはり二倍の速度で動くことができる。パワーはGRZ24の方が大きいが、GRZ24を遙かに超える速度で動くことができるため、武装を搭載していなくても恐ろしい戦闘力を発揮する。
GRZ24の人の二倍という速度は、大したことが無いように感じるかもしれないが、実際に見ると、目にもとまらぬ速度で動く、というのが実感だ。走れば、最高時速七十五km程度まで出るし、通常の人の二倍で加速して動くのだ。力に至っては十倍も出力が出る。
おまけに金属でできたフレームには、最新の複合装甲が施されている。通常の兵士の使うライフルや突撃銃では何のダメージも与えることはできない。ましてや、狼型の動くスピードは速すぎて目視できるものではなかった。
弱点と言えば、エネルギー源である電力が一時間も動くと切れてしまうことだった。目下の目標は最低でも二時間は電池の換装なしで動くこと。だが、電気の消費量を下げようとAIを制御すると、動きが悪くなってしまう。それでは元も子もなかった。
次の最終試験が終われば、銃器や小型ミサイル等の搭載についても準備が始まることになっており、AIも既にそれらの武装に対応したヴァージョンが搭載されている。だが、今のところの固定武装は、GRZ24の右手に装備される高周波ブレードナイフ、GRZ44の高周波ブレードの牙と前足の爪だけだ。
お前たちには人殺しはして欲しくないな。
俺は心の中でそう呟くと、二体のロボットの装甲と固定武装を眺めた。
専守防衛が自衛隊の大前提だ。こいつらが他国の侵略のために使われるはずはない。だから、本当の戦闘の機会もそうそうはないだろう。
それに、今までの評価されない人生で、これが最後で最大のチャンスだ。余計なことを考えている暇は無い。
俺は大きく息を吐くと、寝不足の目をこすりながら、ノートパソコンを手に操縦用のコンソールに座った。各数値のパラメータに異常が無いことを確認し、電源を落とそうとした……その瞬間だった。
ゴウッという轟音の後に、ガタ、ガタ、ガタッと周囲のものが激しく揺れだした。
地震かっ!?
そう思ったときには、建物はさらに大きく揺らぎ、床に自分の足では立てなくなった。
ここは研究センターの四階。すぐ下のフロアには高エネルギー物理実験を目的とした衝突型加速器があって、確か今日実験をしていたはずだ。大丈夫なのか!?
そう考えている間にも、揺れは凄まじく大きくなっていった。轟音が鳴り、目の前が真っ白に光る。
一体、何が起こっているのか!? 俺には今起こっている事態が全く把握できなかった。
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魔法ロボ護雷王 岩間 孝 @iwama-taka
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