謎の事故に巻き込まれる航空自衛隊の戦闘機を皮切りに、謎の乗り物に乗った不思議な少年の出現、そして不穏な術を使う怪人物の出現と、畳み掛けるように次々と常識を覆す様な事件が発生し、一気に物語が佳境を迎えたところで、過去のエピソードを交えつつ、徐々に謎が解明されてゆくという、本作は非常に良く出来た歴史改変SF作品です。
物語は序盤からトップスピードで佳境を迎えるので、飽きる事無く読み進める事ができ、また中盤から綴られる過去エピソードは楽しく、ここからが本作の肝であり、近代科学の暴走から太古の日本に於いてSF的な歴史改変が発生し、そこが事件の発端になるという……良く練られたストーリーだと感じます。
登場人物たちはそれぞれリアルな佇まいであり、キャラクターを立たせる為の過剰な部分が少なく、ごく自然な振る舞いに好感が持てたり、清々しかったり、微笑ましかったりしつつ、それでも生きている人間らしい迷いも抱えており、共感できる部分が多く、同時に本作に於いて対立する存在となる者たちの心理もまた、不自然では無く共感出来る部分があった上で、徐々に道を踏み外してゆく姿勢に考えさせられるものがあるという、良いバランスだと思います。
また、登場人物たちと同じく、作品内の街並みや建物、そして過去世界の様子なども丁寧な描写で表現されており、それらが本編に登場する謎と不思議に満ちた超常的な能力、現象を、よりリアルに際立たせていると感じます。
日本神話を題材にした歴史改変SFロマン、非常にしっかりと作られた物語です。お薦めです。