積雪。
「おはよう。」
「はよっす。」
いつも通り赤月くんが返事をした。
コートにマフラー、手袋もそろそろ必要だ。
冬。
何もできてない。
愛をもらった。
幸せをもらった。
我慢をさせた。
これからだった。
まだあの子はやりたいことの手伝いしかできていない。
進行中だったあの子の次の仕事は、別の人に引き継がれていた。
あの子の絵はまだ世間に出ていない。
あの子の都市伝説はショート動画のネタにされた。
あの子の仕事先から挨拶が届いた。
まるで死んでしまったかのようにいたわる言葉。
あの子は死んだわけじゃない。
まだ探しているのに、私自身も宝くじを買い続けるような感覚になってしまった。
「今日はホタテグラタンだよ。」
時間になると、茜が温かいご飯を作って迎えに来る。
あの子は牛乳が苦手だったらしい。
「茜も聞いた?アレルギー。」
あの子の仕事先で聞いた。
「聞いたよ。元々は軽度で、成人してからひどくなっていたみたいだね。
見ていたはずなのに、気づいてあげられなかった。」
茜のグラタンをおいしそうに食べていた。
ミルクココアをおいしそうに飲んでいた。
確かにそういった日は早めに寝ていた気がする。
翌日には元気に戻るから気にしていなかった。
玄関の水彩画が目に入る。
涙があふれた。
崩れるように、茜に言った。
「もう、いないの?」
「……。」
茜は何も言わずに、私の背中に手を当てた。
「もっと、ちゃんと、親をさせてほしかった。」
「……僕もだよ。」
日が沈む。
夜が来る。
落ちた陽は、世界を深い黒で包んだ。
宵闇 匿名 @Nogg
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