ピアノの音色は恋を呼ぶ 〜クリスマス エピソード〜

ばろんさん

メリークリスマス

クリスマスの夜、俺はベッドで寝転がっていた。

窓から見える暗い空の中、白い結晶があちこちに舞っている。


「......ホワイトクリスマスかぁ......」


俺しかいない空間で、俺はそう呟いた。


もし、あの事故で両親を失わなければ、今頃俺は、両親と一緒に食事をとっているのだろうか?

もし、あの事故で両親を失わなければ、今頃俺は、笑顔で両親と話しているのだろうか?


その答えは、わからない。


もしその世界線があるのなら、俺は多分幸せだと言い切れるだろう。

だけど━━━━━━━


ピンポ〜ン!


インターフォンの音が、家全体に響き渡る。

俺は、すぐに階段を降り、外で待っているであろう人物たちのために、鍵を開ける。


「学校で会ったぶりだね、入って入って」


俺は家に来た人達に向かって言う。


「海斗、皿の準備とか出来てんのか?」


「あ」


「だと思ったよ、間宮、手伝ってくれ」


「ちょ.....急に!? まぁいいけどさぁ!」


リビングに入っていく2人を見送り、俺は外に立っているもう一人に視線を戻す。



『だけど』の続きになる。


もし両親がいれば俺は幸せだろう。

でも、その不運な事故を乗り越えたからこそ、見えるものだってある。

それがいいものか悪いものかなんて誰にも分からない。

だけど俺は━━━━━━



「雪、上がって」


「ふふ、カッコつけちゃって」


俺は、目の前にいる大事な人の手を握り、龍希や間宮さんのいるリビングへ歩いていく。



━━━━俺は、不運な事故を乗り越えた先に見えたものが、幸せの塊だったと、断言出来るだろう。

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