魔剣クロノスを得るために! Ⅱ
日々菜 夕
第2話
この物語はフィクションです。登場する人物。地名、団体名等は全て架空のものです。
雪が降り始める季節――
その人は、私の住む村に訪れました。
やや大き目な音で木のドアを叩く音がして。
「俺の名は、グレン! ギルドの紹介で来た者だ!」
粗暴な男の人の声が私の耳に届きました。
私は、勉強の手を止めて思わず本音をこぼします。
「最悪……」
あいにく今は、両親が不在。
隣の村まで、薪を取りに行っているからだ。
必然的に、来客と思われる人物の相手を私がしなければならない。
しかし両親からは、本日――来客があることは聞いていないし。
そもそも両親の性格からして、ギルド関連の案件ともなれば後回しにするとも思えない。
つまり、来客ではなく、ただの粗暴な人という可能性の方が大きいのである。
その相手を私のような小娘がしなければならないのです。
――このまま居留守を決め込もうか?
それも妙案かもしれない。
そんな、考えで私の思考が固まりつつあるなか。
「おいっ! 中に誰か居るのは分かっているんだ! 無視するって言うなら俺にも考えがあるぞ!」
声の主は、さらに大きな声で私に訴えかけてきます。
まるで怖い人から脅されているみたいです。
「どうしよう……」
少し悩んだ私は――玄関に歩み寄り。
おそるおそる、ドアを開けて見ました。
そこには、ぎらついた金色の瞳で私を、見おろす――やや大柄な人が居ました。
フードのついた灰色の厚手のマントをはおり。
手袋やマフラー等で防寒対策をしっかりした人でした。
男の人は、私を見て少し驚いた表情を浮かべた後。
顎に右手をあててから――優しい笑みを浮かべます。
「もしかして、お嬢ちゃんしか家に居ないのかい?」
「はい……」
こくりと私が頷くと、男の人は困ったような表情になり。
フードの上から頭をかいています。
「まいったなぁ……」
私は、小さな勇気を振り絞って。
知らない人に要件を聞いてみた。
「あのう……本日は、どのようなご用向きでしょうか?」
「いやな、この村で傭兵を雇ってくれるって話があってだな。つまり、お嬢ちゃんも含めて。この村を守りに来た人ってところかな」
驚きです!
なんと、先ほど恫喝かと思えるような声を発していた者は、この村の守護者になりたいと言っているのです!
確かに、今――この村を守ってくれる専属の人は居ません。
そう言った意味でいったら。
一見、粗暴に見えるこの人にでも頼るしかないのが現状です。
でも、だからこそ不安がよぎります。
――そんな重要な案件があるのに両親がそろって居ない時になぜ来たのか?
――そもそも、これほどの案件ならば村長である父が忘れるはずがない!
――おそらくは、傭兵だとか言って口だけたっしゃな人なのでしょう!
――かといって、私には追い返す度胸も実力もありません……
「どうしよう……」
消え入りそうな――私の、こぼした言葉に男の人が反応します。
「出来る事なら中に入れてもらって、村長が帰って来るのを待たしてほしいところだが……素性の分からん男と二人っきりってのも不安だよな?」
「えと、その、ご、ごめんなさい……」
私が、素直に頭を下げると。
男の人は――顔を、庭の方に向けて、こう提案してきました。
「あそこに、小屋があるが、そこで待たせてもらうのは可能か?」
「えっ? あ、はい、それならば……」
私は、ほっとして胸をなでおろします。
これで両親が帰って来るまで自分は安泰だと――
「そうかい。じゃぁお父さんが帰ってきたら、ギルドから派遣された、グレンってヤツがあの小屋に居るって伝えてくれ」
「わかりました」
私が、そう言うとグレンは、雪が舞う中。
大きな足跡を残しながら小屋へと向かいました。
――そこで私は気が付きます!
――小屋には鍵がかかっていることに!
つまり、鍵をわたさなければ小屋に入る事ができません!
だから、慌てて呼び止めます!
「ちょっと待って下さい!」
グレンは私の声に反応して振り返ります。
「ん? どうした?」
「えと、そのっ! 鍵がかかっているので! ――」
(少し待っていて下さい!)
と、言うはずの言葉は、
「気にするな、単純構造なら魔法で開けられる」
あっさりと笑みを浮かべたグレンにかき消されていました。
――魔法。
それは、間違いなくこの世界に存在するらしい。
私だって聞いたこともあるし、教科書にものっている。
でも、実際に見たことはない。
ゆえに、好奇心が勝ってしまいました。
――魔法で鍵を開ける瞬間を見てみたいと!
「ほ、本当に、そんなことが出来るのですか!?」
気づけば、私の足はグレンのもとに向かっていました。
そして、一緒になって小屋へと向かいます。
小屋に着くと――グレンは、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべながら私に言います。
「この魔法は、どちらかと言うと盗賊好みの魔法なんでな。あまり言いふらさないでもらえると助かる」
「分かりました」
「ん、じゃ、よーく見てろよ」
グレンがドアのカギ穴に右手をかざしながら小さくも力のこもった声を紡ぎ出します。
「我が道を阻む者に命じる! 主の意志に背き、道を開けよ!」
《ガチャリ》
と、はっきりした音が私の耳にも聞こえました。
そして、ドアを開けて見せるグレン。
「ほれ、簡単だったろ?」
「す、すごい……すごいです!」
先ほどまで、不審者扱いしてたはずなのに。
今では、ワクワクとドキドキが止まりません!
そんな私を見て嬉しそうにしているグレン。
「風と炎よ我が意に従い、春を歌え」
またしても魔法なのでしょう。
冷え切っていたはずの小屋の中から暖かな風が出てきて私の頬を優しくなでます。
まるで、おとぎ話の住人に会ったかのような衝撃でした!
「この、現象も、魔法、なんですよね?」
「あぁ。そうだ。そのかっこうじゃ寒かろうと思ってな」
「あ……」
言われてみて気付きます。
今の私は、ズボンとセーターを着てるくらいで防寒対策と言う点では明らかに問題があることに。
そんな私よりも、小屋の中身に興味を示したらしく、グレンは小屋に入って行きます。
「それにしても、いい趣味してるなぁ。こりゃ錬金窯だろ?」
「あ、はい。父が昔。趣味で錬金術をやっていたみたいでして」
グレンに返答しながら私も、小屋の中に入ります。
「そうかぁ。もったいないねぇ。これだけのもんそろえるとなりゃ結構金もかかってるだろうに」
等と言いながら物色しているグレンの顔は子供みたいで。
少しかわいいと思ってしまう私。
そんな私には今更ながら、とある疑問んが浮かび上がりました。
「あのぅ。もしかして、私が居留守使おうとしてたのも魔法で分かったのでしょうか?」
「まぁ、その手の魔法もあるっちゃあるが。そんな事よりもほれ」
グレンが右手で指し示す先には――
小屋の窓越しに見える煙突でした。
「あ……」
「猛吹雪の中ってんなら話は変わるが、今は昼間だ。煙突から煙が出てるの見りゃ中に人が居るのは当然だろ?」
「そ、そうですよね……」
なんだか、私のしようとしていた事が、実に子供じみていて恥ずかしくなってしまい。
思わずうつむいてしまいます。
そんな私にグレンは、こう言いました。
「警戒心は、無いより持っていた方が長生きする。特に戦場ではな」
もしかして、戦場を経験した人なのだろうか?
そんな疑問が浮かぶと私は、時間がたつのも忘れてグレンを質問攻めにしていました。
その結果。
彼が最前線で戦っていた事や、魔剣クロノスの所有者の一人だったこと分かり。
両親が帰って来る頃には、私にとってグレンは――
粗暴な不審者から憧れの人に変わっていました。
魔剣クロノスを得るために! Ⅱ 日々菜 夕 @nekoya2021
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