第10話 愛のままで
あれから1週間が経った。
私より重傷だったと思うけど、誠は一命を取り留めたらしい。
何も悪くねぇのに責任感じて死なれたら困る。
本当に良かった。
終わらないで本当に良かった。
でも…大丈夫なのか?
もう元気になったから退院だ。
お父さんもお母さんも来てくれた。
警察も一緒じゃ合わせる顔がねぇけど…
「川端美香の取り調べから、君の容疑が固まった。石川薫、不同意性交等罪の容疑で逮捕する」
「不同意?私たちは付き合ってるんだぞ?同意がねぇわけあるかよ」
「被害者が13歳未満の場合、同意があっても無効になる。詳しい話は署でしよう」
私はよく分からねぇまま警察署に連れていかれた。
間違いねぇのは、私のしたことは犯罪だったってこと。
納得いかねぇから反論するけど、次々にやってくる警察は、どいつもこいつも話を聞かねぇ。
誠が12歳だったからダメなのかよ。
同意があっても同意がねぇことにされたら、誠の心は一体なんだってんだよ。
「じゃあよ、誠が13歳ならよかったのかよ」
「加害者と被害者の年齢差が5歳未満の場合、特に問題はない。同年代の行為は処罰の対処にならない」
たった1歳の違いでえらい違いだな。
それに誠の誕生日はその1週間後だ。
1週間待って同じことをしたら、犯罪が犯罪じゃなくなるなんてどうかしてんだろ。
「ただ、彼にアルコールを飲ませたね?」
「飲ませたけど…」
「その上で愛してと有耶無耶な表現で行為を誘導した」
「彼氏に愛してって言っちゃ悪いのかよ!」
「そうは言ってない。これらの要素が複合された場合、被害者が13歳に達していても、同年代であっても、不同意性交等罪は適用される」
何も言い返せねぇや。
私は地雷を上手いこと全部踏んでたってことか。
誠の13歳の誕生日にケーキでお祝いして、エッチしようって言ってれば、私のしたことは罪にならなかったなんてな。
自分の手で愛を罪にしたなんて笑えねぇよ。
どのみちあのイカレたババアに刺される未来は、回避できなかったんだろうけどな。
別に刺されて死んでも良かった。
早死ってロックじゃん。
でも…愛にケチだけはつけたくなかった。
自分でケチつけちまった…
誠と出会うのがもうちょっと遅ければ…
私がもっと強ければ…
――私がもっとロックだったら…
愛は愛のままでいられたのにな。
―END―
愛が罪に変わる時 ひす @hisu1999
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