絶望したい私と異世界悪魔

藍無

第1話 死ぬのかな

視界が揺らぐ。

視界の中心が定まらない。

「今日も、見つからなかった。」

暗い電気のついていない部屋の中で私はそう呟いてしまった。

今日も、いなかった。

私と同じ人は。

私に共感してくれる人は。

どこにも。

痛かった。

痛くて、痛くて仕方がないの。

だから、痛みを共感してくれる人はいるかな?って思ってネットを見ていたけど、誰も私と同じ思いをしている人はいなかった。

私を助けてくれる人はだれも、いなかった。

分かっているんだ。

私は、助けを求めていい人間じゃないんだって。

でも、それでも私は救いを、助けを求めずにはいられない。

中途半端が一番つらい。

この世界は、絶望を突き付けてきたらすぐに希望の光をみせて、その次にまた絶望を見せる。その繰り返しで、目がチカチカしてくらくらする。

いっそ、闇の中に放り込んでくれたらどれだけ楽なんだろうか。

いや、それもそれで苦しいのかもしれないけれど。

――死にたいな。

もう、疲れちゃった。

でも、死んだら苦しいのかな。今よりも、ずっと。

きっと自殺したら、地獄行きだよね。

地獄に行ったら燃やされるのかな。永遠に火あぶりにされるのかな。肌が焼けただれて、声がかすれるほどの悲鳴を上げ続けても誰にも助けられることなく、永遠とも思える長い時間、苦しむのかな。

だとしたら、死なないほうがましなのかな。

今も十分苦しいけど、この苦しい時間は人生が終われば終わるんだし、苦しむ時間としては死なないほうが短いのかもしれない。

私って、生きていていい人間なのだろうか。

毎日、一つ一つの物事に一喜一憂してさ、疲れちゃってさ、何も感じないふりをしていたら、本当に何も感じなくなっちゃった。

もう、痛みしか残っていない。

だから、この痛みを感じていたことを忘れないように、『印』をつけなくちゃ。

今日も、苦しんでいたあかしを。

ザクっと、カッターで腕の一部を切った。

血が出てくる。

深く切りすぎたかな?

ぽたぽたと血が机の上に落ち、床の絨毯じゅうたんにしみる。

「切りすぎちゃったか。。」

失血死しちゃうかな?

まあ、それならそれで、もういいか。

もう、疲れたよ。

生きることにも、希望を持つことにも、絶望をすることにも。

希望を持ちきれないし、絶望しきれないこの世界が嫌いだ。

私の瞳から見える世界は醜い。

誰かが、世界は美しく魅力的すぎる、と言っていたけど、私にはとてもじゃないけどそうは思えない。

きっと、そう言った誰かの瞳は一点の曇りもなくて、すごく綺麗なんだろうな。

血が止まらない。

止めようとも思わないけど。

なんだかくらくらしてきた。

その場に崩れ落ちる。

「やあ、こんにちは。いや、こんばんわかな?」

誰かの声が背後からする。

誰だろう。

いや、そんなことはどうでもいい。

だってきっともうそろそろ私は死ねるから。

さようなら、醜い世界。

さようなら、絶望しきれなかった人生。

私の意識はそこで途絶えた。

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