僕は後悔しているのだろうか ーカクコン10 短編お題『雪』ー

姑兎 -koto-

第1話 僕は、後悔しているのだろうか

久しぶりにあの場所に行く。

今日なら、大丈夫かもしれない。


人っ子一人居ない早朝の公園。

今年初めての雪が降り積もり、全てが浄化された無音の真っ白な世界。

あの日、君の血で真っ赤に染まってたベンチも、今日は、白一色。


ごめんね。

ごめんね。


ちゃんと償うつもりだったんだよ。

逃げたわけじゃないんだよ。

でも、誰も僕を疑わなかったから、無かったことになっただけ。



あの日から、ずっと、僕の心に降り積もる雪。

全てを覆い隠し、嫌なことは上手く忘れてしまえるように。

奇麗な思い出だけを抱えていけるように。

こんこんと降り続く雪。

でも、その真っ白な世界に君は居ない。


時折、ふっと心が温かくなった時に、溶けた雪の下からひょっこり顔を出す記憶が辛いんだ。


僕だけの君にしてしまえば、幸せになれると思っていたのに。

心はずっと凍えたままなんだ。

僕だけの君になったのに、ずっと、孤独なままなんだ。


今、とても、君に会いたい。


君の居ない世界は、とても寒い。


ー完ー








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