第6話 フロッピーディスク

 センター試験の当日、受験生の質問に答えるため、駒場のセンター試験出題センターに詰めていた私は、コートのポケットに手を入れて、

「あれっ」

 と思った。


 そこには、どこかで落としたと思っていた、「物理」の問題が入ったフロッピーディスクがあったからである。

(コートのポケットも調べたはずなのに、なぜここにあるのだ?)

 私は、そう思ったが、外部に流れなかったことは確かだった。


 そう言えば、福岡空港のトイレでこれを落とした時、どこか息子に似ている青年に声をかけられたことを私は思い出した。


 副問題に切り替えた「物理」は、すこぶる好評で、「良問だ」という評価をいただいた。

(こんなことなら、副問題を最初から正規の問題にしておくべきだった。センター試験なんてこんなものか・・・)

 私は、そう思った。


 2年間の物理の出題委員長の業務が終わった私は、出題センターの「物理」の部屋にかかっていた、「川口良太」と書かれている名札を外して福岡への家路についた。

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大学入試センター試験 マッシー @masayasu-kawahara

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