脅威!! 特級幻想精霊「サンタクロース」
卯月 幾哉
前編 司令「サンタクロースをやっつけろ!」
「やったー! 二学期終わったー!」
「才子は冬休みどうするの?」
「えー、どうしよっかなー」
終業式後の教室にて。
クラスメートに返事をしながら、高校一年生の
年末年始は家族で過ごすとして、目下の悩みは数日後に
恋人のいない才子にとって、いかに心理的ダメージを回避しながらこの一大イベントをやり過ごすかは、切実な問題だ。
そのとき、才子のスマートフォンがブルルと振動した。見れば、チャットアプリからの通知だった。
『【任務】24日17時にJR新宿駅西口集合』
味も
「どうしたの?」
「クリスマスイブにバイトが入っちゃった……」
「あらら……」
クラスメートの同情的な視線を受けながら、才子は肩を落とした。
ここでは「バイト」と
――まあ、デートと考えれば悪くはないかも?
そう考える才子は、その発想が一般的な感覚では残念な部類に入ることに気づいていなかった。
†
終業式から四日後のクリスマスイブの日、才子は動きやすいパンツスタイルにブルゾンを
服は損傷するおそれもあるため安物だが、メイクにはいつもより時間をかけた。
「――珍しく、お前にしては早いな」
トゲのある言葉と共に、才子よりも
「あ、響さん。こんちわッス」
この青年こそ、才子に「任務」の連絡をした張本人――ふだんは都内の大学に通う学生の
才子は
――さあ、この気合を入れたメイクの採点は……
「じゃあ、早速行くぞ」
和音はすっと
「は、はいッス」
才子はガクッとずっこけながらも、
「うわぁ、交通規制までしてるんスね」
「今回は大物が相手だからな。作戦には二百人以上の〈異能者〉が参加している」
「二百人!? あたし、そんな大規模作戦だなんて聞いてなかったッスよ!」
「今言ったからな」
駅から地上に出て、都庁方面に向かって歩く。
才子の左肩には、和音と同じ腕章が付けられていた。
腕章に書かれた文字は「超現対」――〈超常現象対策室〉を縮めたものであり、二人が所属する機関を表している。〈超現対〉の存在は一般には
いつもより
「えっ、響さん。アレってスウェーデンのチーム『フェンリル』じゃないッスか? 去年フィヨルドで起きかけた
「ああ、そうだな。海外からも有力な〈異能者〉たちが応援に来ているぞ」
「……あたし、いる意味あるんスかね? ちょっと念力使えるだけの普通の女子高生ッスよ」
「今回に限っては、人手は多い方がいいからな。実際、俺の能力もあまり役に立てるとは思えない。後方支援という名の
〈異能者〉――超能力など、一般人には見られない特殊な能力を保有・行使できる人間のことだ。
才子も和音も〈異能者〉であり、〈異能〉を発現させたことによって〈超現対〉に強制的に所属させられることになった、という過去の経緯があった。
「なんスか、その『参加することに意義がある』的な感じは……」
「ふむ……。言い得て妙、かもしれんな」
才子の能力は〈
一方の和音の能力は〈
二人が会話をしつつ都庁の横を通り抜けると、新宿中央公園の上空に異様な物体が浮かんでいるのが見えてきた。
「な、なんスか。あれは……」
「あれが今回の対象だ」
上空二百メートルほどを
全体としては球形に近いが、外見からは何で出来ているのか、それが液体なのか気体なのかすら判別することはできなかった。
「――特級幻想精霊『サンタクロース』。子供たちの集合無意識によって生まれると言われる
「サンタクロース!? あ、あの見るからにおどろおどろしい前衛アートの
「正確には、それが生まれる前の〝
「……これはちょっと、小さなお子さんには見せらんないッスねぇ」
才子はそう言ったが、こういった超常の存在はふつう、〈異能〉を持たない一般人の目には見えない。なので、ここで『サンタクロース』が視認されて大騒ぎになることへの
「上からの命令は、あれの『無力化・無効化』、または『少しでも被害や影響を
「……あたしには、どうしていいかわかんないッス。他の〈異能者〉さんたちの働きに期待するッス」
「とりあえず、東京のチームに合流しよう」
その後の二人は、東京の〈異能者〉チームの一つに合流し、『サンタクロース』に立ち向かう者たちの支援を行うことにした。
合流したチームは、超能力者、
しかし、どの攻撃をとってみても、『サンタクロース』には全く効果を発揮していないようだった。
「このままじゃ、まずいッスねぇ……」
(後編へつづく)
次の更新予定
2024年12月25日 00:10
脅威!! 特級幻想精霊「サンタクロース」 卯月 幾哉 @uduki-ikuya
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