おそらくボクは、ミッキーマウスに心臓を奪われるだろう。

アリエルは消費者意識を持ちなさい。

　ディズニーの『リトル・マーメイド』という作品を知っているだろうか。

　簡単なあらすじを説明すると、

　人魚のプリンセスであるアリエルは、ある時人間の王子様と出会い、王子様に恋をする。しかし、人間は陸、人魚は海と、お互いの住む世界は異なっている。だからアリエルと王子様が結ばれることは決してないであろう。　しかし、アリエルが人魚であるために王子様と結ばれないのだとしたら、アリエルが人間になってしまえば良いのではないか。アリエルと同様に人魚でありながら悪い魔女でもあるアースラはアリエルにこう囁く。アースラが魔法を使えばアリエルを人間にすることは容易い。しかし、タダでアリエルを人間にしてやる義理はない。交換条件として、「アリエルの美しい声」を差し出すのであれば人間になる魔法をかけてやる、と、アースラはアリエルに取引を持ち掛ける。　こうして、アースラに唆(そそのか)されたアリエルは、自分の声と引き換えにアースラと契約を結んで人間にしてもらい、王子様と良い感じになるのだが、アースラが手に入れたアリエルの声を悪用することで大きな問題になってゆく、というお話である。

　もちろん、『リトル・マーメイド』はディズニー御用達の勧善懲悪ハッピーラブロマンスの物語であるため、最後にはアースラは倒されアリエルも声を取り戻し王子様と結ばれる。　　しかし、私はいつも『リトル・マーメイド』を観ている時にこう思う、

「いや、クーリング・オフせえよ。」

と。

　アースラは「アリエルの声と引き換えにアリエルを人間にする」という契約を悪用することをアリエルに伝えていない。

そのため、アリエルがクーリング・オフを申し出れば契約を破棄することが可能である。

そして、契約を破棄してアリエルが自分の声を取り戻せば、その段階でもう「いつまでも幸せに暮らしました。」になるはずである。

仮に契約の破棄とともにアリエルが人魚に戻ってしまったのであれば、この時点で既に王子様とは良い感じになっているので、王子様を海に引き摺り込むか、アリエルがこれからの生涯をバスタブで過ごせば、あら簡単。

ハッピーエンドの完成である。

　まあ、確かに人魚であればクーリング・オフは認められないかもしれない。しかし、取引が完了した時点のアリエルは、それこそアースラの魔法によって人間になっているわけであるため、人権がある。だからアリエルのクーリング・オフが認められることは十分

アリエールでしょ。

ってね。