先生
みかみ
第1話 先生に贈る小さな灯
先生。
あなたは誰かとお話しになる時、いつだってその長い脚と腕をきつくお組みになっていて、その姿はまるで、予期せぬ衝撃から必死にご自分を守ろうとしていらっしゃるように思えてなりません。
けれどもあなたが紡ぎだす言葉の数々は、大変思慮深くありながらどこまでも本音に満ちていて、透明で、飾り気がなく、時に口にされる難解な一語でさえも、湖に舞い落ちる雪が水面にすっと溶けるがごとく、私の心に染みわたります。
私は、あなたの防御を象徴するきつく組まれた手足と、凍てつく空気の中で落葉枝を広げる真冬の樹木にも似た誤魔化しのない言葉たちの間に、大きな大きな空間を感じます。そこではきっと、途方もない思考がうずまいていて、伝えるべき言の葉の数々を厳選しているのでしょう。
だからこその、透明感なのでしょう。
先生。
あなたのお顔には、いつも何かがぎゅっと詰まっていて、多くの人の表情に在るような隙間を見つけられません。
先生の額や、眉間や、頬や唇の端には、一体何が詰まっているのでしょう。緊張でしょうか。経験でしょうか。それとも恐れでしょうか。
私には判断できません。
多分、先生は大変な怖がり屋なのでしょう。そして誰よりも正直で誠実で、真面目な方なのだと思います。
ええ。残念ながらどれもこれも、私の勝手な想像でしかありません。
私にとって先生は、面と向かって語り合うどころか話しかける事すら恐れ多い、遠い遠い方ですから。
本当のあなたなど、知る由もありません。
けれども、あなたが作りだすものは、苔むした岩や樹木よりも優しく味わい深く、夜空にまたたく星ぼしよりも人の心を照らします。
それだけは、揺らがぬ事実です。
だから私は、あなたに私淑せずにはいられないのです。
~灯~
先生 みかみ @mikamisan
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