第6話 We will(6)

やっぱ


子どもって環境だよな・・




斯波はつくづく思う。



自分は物心ついたときには


気づいたらピアノをやっていた


あのオヤジは大嫌いだったけど


いつも家にはクラシック音楽がかかってるし



ピアノだってこれ見よがしにあったし。




今、こうして自分だってずっとクラシック音楽をかけて、オケのDVDを見て。




すると翔もじいいいっと観てるようになった。



別に積極的に音楽をやらせようとは思ってないけど


結局



やるようになっちゃうんだろうなあ。





おれはいいけど。



今は単なるサラリーマンだし。


でも


竜生は違う。



あの『北都マサヒロ』と『沢藤絵梨沙』の息子なのだ。



なんか



めんどくさいこと頼まれちゃったな・・



斯波はため息をついた。


子どもが『ピアノのコンクールに出たい』ってそれだけなのだが



絵梨沙にも




真尋にも



いろんな思いが錯綜しているようで



そんな簡単なモンじゃないような気がする。



それを感じていて



きっと竜生は言い出せないのだ。



いきなりこのことを切り出すのも何だかできなくて



斯波はそれを絵梨沙に言うタイミングを見計らっていた。



といいつつ



真尋が来週から日本に戻って来てT響と競演があったり、その他のミニライブの仕事があったりでその準備の仕事に追われていて



忘れてしまっていた。





そんなころ



外出の移動中に携帯の着信があった



絵梨沙からだった。



「はい、」



と普通に出ると



「なんで約束守ってくんないんだっ!!」



子どもの声がしてびっくりした。



「は??」




一瞬パニくった。



「なんでママに話をしてくんないんだよっ!!」



その言葉で電話の相手が竜生だということがわかった。




「りゅ、竜生?」




どうやら絵梨沙の携帯から電話をしてきているようだった。




今の子供はそういうことは頭が回るんだな・・




などと一瞬感心したが



「あ、ご、ごめん。 ちょっと忙しくて・・」



なんで9歳の子どもに謝っているのか



冷静に考えると、ちょっと腹立たしいが



「はやくしないとコンクールしめきっちゃうよ! も~~~!!! しーちゃんのことしんじてたのにっ!」



「わ、わかったよ・・



『しんじてたのに』



まで言われて、思わず返事をさせられた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年1月10日 07:00
2025年1月11日 07:00
2025年1月12日 07:00

My sweet home~恋のカタチ。28--chartreuse green-- 森野日菜 @Hina-green

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る