俺だけレベルと同接がリンクしてる件~視聴者3人の雑魚配信者だった俺、たまたま助けたアイドルのおかげで同接とともにレベルが爆上がりしました……ってえぇ!?
第5話 判明するレベルアップのカラクリ&アイドルからのまさかのお誘い
第5話 判明するレベルアップのカラクリ&アイドルからのまさかのお誘い
暴走化したゴブリンの撃退後――。
「…………」
な、なんだったんだ、さっきの爆炎は……?
なおも熱気と焦げ臭さの残るダンジョン内。
俺は未だに何が起きたのか理解できず、改めて自分の手のひらを呆然と見つめていた。
ちなみに配信ドローンはすでにオフにしてある。
なんとかピンチを脱することはできたものの、思わぬアクシデントのせいでもはや本来の予定どおりポーションの素材集めなど続けるような空気ではなかった。
その判断は恐らくミカさんも同じだったのだろう。
彼女は彼女で、適当にやや早口な挨拶とともに配信を終えていた。
ただ、そうして状況が一段落したところで――。
「ちょっとアンタ! さっきのはどういうこと!?」
「え……!?」
クルッと振り返ったミカさんがズンズンと詰め寄ってくる。
その剣幕はさながら戦闘中のテンションそのまま。
「ど、どういうことと言いますと……?」
「あのとんでもない威力の炎よ! アンタ何者!?」
「いや、何者って……」
ただの不登校の引きこもりです。
……というのは、さすがに素直には言いづらいので伏せておく。
だいたい今聞かれているのはそんなことじゃない。
それくらいはもちろん俺も理解している。
とはいえ、だからって他に話せることがあるわけでもない。
むしろ俺自身が一番ビックリしているのだ。
というわけで……。
「あの、すいません……。なんと言うか、正直なところ自分でも全然よくわかってなくて……」
「はぁ? よくわからない? 自分でやったことでしょ?」
「ああいや、まあそう言われればそうなんですけど……」
てかミカさん、なんかすげぇグイグイ来るな。
挨拶したときとはまるで別人じゃん。
あれか? もしやこの人、本当はこっちが“素”の人格なのか……?
「えっと……俺としてはただ普通に【火炎】のスキルを使っただけで、まさかあんな感じになるとはとても……。たしかにライターの火で威力の底上げをしようとはしましたけど、それだってせいぜいゴブリンの目が潰せればラッキーくらいのテンションでして……」
「ふ~ん? つまり、アンタとしてもさっきの爆炎は予想外の産物だった……ってこと?」
「はい……まさしく」
素直に頷く。
だが、尚もミカさんの中で俺の疑いは晴れていないようで――。
「呆れた。そんな話信じられるわけないでしょ。だいたいアンタ、レベルはいくつなのよ?」
「え、レベル?」
「そうよ。スキルなんてレベル次第なんだから、それで普通は予想がつくでしょ?」
「まあ……」
たしかに理屈としてはそう。
でも、低すぎて恥ずかしいんからあんま人に言いたくないんだけどなぁ。
いやしかし、この期に及んで誤魔化しても話がややこしくなるだけだし……。
やれやれ、仕方ない――。
「えっと……3です」
「3っ!!?」
ミカさんが叫ぶ。
「ますますありえないわね……アンタ、もしかして私をからかってるんじゃないでしょうね?」
「い、いやいやそんな滅相もない……!」
「……本当かしら?」
ブンブンと首を横に振る俺に対し、ミカさんがジトッとした視線を向けてくる。
……まあ無理もないよな。
いくら環境や
あんなライター程度の種火じゃ、たとえレベル数千であってもあの馬鹿げた威力の炎は説明がつかない。
すると、ミカさんは俺の頭に手のひらをかざしながらこう言った。
「う~ん、怪しいわね。ちょっと試してみようかしら――【
瞬間、ミカさんの手がパアッと緑色に光った。
「さあ、答えなさい。『アンタの今までの発言に嘘はあった?』」
「!」
な、なんだ……口が勝手に……!?
……いや、聞いた事があるぞ。
【真贋】――たしか相手に虚偽の証言をできなくさせるレアスキルだったはず。
でも、たとえそうだとしても……。
「『いいえ、ありません』」
俺の口から出たのは、ハッキリとした否定の言葉だった。
「……驚いた。じゃあガチでなにもかも予想外だったってわけ?」
「まあ……」
お恥ずかしながら……。
「なるほどね。まあスキルまで使った以上、さすがに信じるしかないようね。……でも、本当に全く心当たりすらないの? 例えばなにか予兆とか、あるいは体調の変化とか」
「心当たり……?」
う~ん、そう言われてもな。
なんだろう……なにかあったかな?
別に朝起きた時点ではいつも通りだった気がする。
まあ朝というか、ぶっちゃけ夕方だけど。
引きこもりになって以降、俺の生活リズムはズタボロだ。完全に昼夜逆転生活。
おかげで日光を浴びる機会がめっきり減り、体調は常時あまりよくない。
でも、そんなこと今回の件に影響があるわけないし……。
それ以外もいろいろ考えを巡らせてみるが、特に思い当たる節はない。
普段通りダンジョンに来て、いつもと同じように配信を始めただけ。
まあ強いて言えば、その配信中に有名アイドルと遭遇するなんていうメチャクチャ幸運なことはあったが――。
「あ」
そこでふと、俺は思い至った。
「なに? なんか思い出した?」
「あーでも、もしかしたらただの勘違いかもしれないんですけど……」
「いいわ、言ってみて」
「そういえば、なんだか配信の途中から急に身体が軽くなったような気がしたな~……って」
「身体が軽く? 途中っていつ頃?」
「ミカさんと出会った直後くらいです。そっちの配信から視聴者がこっちにも流れてきて、うわぁめっちゃ同接増えてるじゃんラッキー、とか思ってたら徐々に……」
もっとも、だからなんだと言う話には変わりない。
あれはあくまで一時的な興奮が作用しただけ。
今回の炎に何の因果関係もない。
けれど俺がそう考える一方で――。
「同接……上昇……レベル……」
口に手を当てたミカさんが、真剣な表情でなにやらブツブツ呟く。
「あ、あの……ミカさん?」
「…………」
「え~っと……」
問いかけるも反応がない。
なんだろう、もしや気づかぬうちに何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか……?
「あの、すいません……だからどうしたって話ですよね。ちょっと待ってください。もうちょっとだけ思い出してみま――」
取り繕うように言葉を紡ぐ。
だが、ミカさんは俺の言葉を遮るように言った。
「……ねえ、ちょっとアンタの配信ドローン貸してくんない?」
「え、ドローン……? なんでまた」
「いいから早くして」
「あ、ああはい!」
いったい何使うんだろう?
そう思いつつも、俺は素直に従う。
「ど、どうぞ」
「ん、ありがと」
取り出したドローンをミカさんに渡す。
すると、ミカさんはすかさず画面を操作した。
「これは……さっきの配信のチャートですか?」
「ええ、そうよ」
ミカさんが開いたのはチャート――視聴者数の推移グラフだった。
当たり前だが開始当初はずっと“3人”のまま変化がなく、あるポイントからグンと右肩上がりしている。
でもってそのポイントとは、もちろん俺がミカさんと出会ったタイミング。
「あの、これがなにか……?」
「次、アンタのステータスのログも見せて」
「あ、はい……」
すごいこの人、まるで自分の手足のごとく指示してくる。
もはや俺を召使いか何かだとでも思っているのでは?
……でもなぜだろう? 不思議と嫌な気分でもないんだよな。
う~む、もしや俺には“そっち系”の素質でもあるのだろうか……?
――と。
「“ステータスオープン”、“ログ参照”」
詠唱とともに空中に浮かび上がるステータスのログ画面。
さっきのチャートと同じ折れ線のグラフ。
とはいえ、俺のレベルはずっと3。
そこには見慣れた底辺を一直線にさまようカスみたいなグラフがある……そう思っていた。
しかし。
「なっ……!?」
こ、コレは……!
そこに描かれていたのは、今まで見たことのない奇妙な流れだった。
ある一定のラインまで真っすぐ底辺を這っていたかと思えば、一転して急上昇。
しかも、その上昇のラインというのが――。
「やっぱり。ピッタリ一致するわね」
配信チャートと、ステータスのログ。
両者を見比べてミカさんが頷く。
そう、紛れもなく両者は連動していた。
どちらも寸分たがわず同じ軌道。
その証拠に――。
「最大レベル……“53,479”!!?」
約5.3万。
つまりは、ミカさんと出会って同接が増えた際に確認した数字といっしょ。
あまりに衝撃的だったからよく覚えている。
「な、なんですかこれ……? いったい何が……」
――俺の身体に起きているんだ?
ありえない現象に頭が混乱する。
まず常識として、こんな急激なレベルの変化なんてありはしない。
しかもそれが同接と連動しているとしたら尚更だ。
だが、そうして
「ねぇ、アンタさ」
「?」
ミカさんは、実に真面目な表情でこう言った。
「私といっしょに組まない?」
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