彩美家の双子姉妹
今度は
きっと、夕食を済ませ、二人で仲良く遊んでいる頃だろう。
双子姉妹の部屋の前に立ち、障子越しに声をかける。
「
畳を歩く小さな足音が近づいてくると、勢い良く障子が開いた。
そして、お揃いの髪飾りをした二人の女の子が姿を現す。
「
落ち着いた声と、明るく元気な声が重なった。
「二人に話したいことがあるので、一旦座りましょうか」
向き合うようにして、
どこか緊張した表情で座る
宮殿に住みながら、立派な侍女になる為の勉強を続けて来た。
その努力の成果を発揮する日が、ようやく二人に訪れる。
「
「「はい」」
「明日から二人には、姉さんの主たる侍女になってもらいます」
ついに告げられた侍女への昇格。
驚きと困惑が入り混じる表情で、二人は本音を吐露する。
「明日からですか……?」
「き、緊張します」
不安の色が滲む瞳が、
「明日の朝、侍女昇格の挨拶に行くので、自己紹介の練習をしておきましょう。私が
それぞれが小さく頷いた事を確認した
「良いですか? では、始めます」
すると、
「姉の
茜色の着物に、丈の短い緑の袴風スカートを合わせ、黒のタイツを履いている。
綺麗な顔立ちと、落ち着いた表情は大人っぽい印象を与えてくれるが、まだ十歳の子供だ。大人になる頃には、
「
頭を下げたことで、三つ編みにした茶髪のおさげが揺れた。
大人っぽい
お揃いの椿の髪飾りを付ける姿も魅力的で可愛らしい。
自己紹介を終えた二人を見て、
「良い感じですね。では、明日からよろしくお願いします」
部屋を去ろうとする
そして、今にも泣きそうな表情で訴えかける。
「あの、
「無理ですよ! 絶対怒られます」
「まだ……私達には……」
「……二人じゃ、出来ないですよ……」
不安な思いを吐露する二人は、言葉の途中で泣き出してしまった。
静かに泣く
小さな二人を抱きしめて、優しい声で告げる。
「大丈夫です。私も一緒ですから」
腕の中から安堵の吐息が聞こえた。
「三人で成長していこっ!」
普段意識している丁寧な話し方ではなく、本来の素直な喋り方で伝えた想い。
二人の心に少しでも届いて欲しくて、
侍女達にとって人生の岐路になる事を、私は見落としていたのかもしれない。
大切な人を思い過ぎて、大切な事に気づけなかった。
進んでしまった以上、後戻りは出来ない。
改革を企てた者として、背負うべき責任を果たそう。
それが今の
二人の心が落ち着くまで、
ごめんね。と囁きながら。
桜色に染まる世界を太陽が明るく照らし出す。
侍女昇格の日を迎えた宮殿は、朝の静けさに包まれていた。
双子姉妹を連れて、
「おはようございます。
「どうぞ」
「失礼します」
姫と侍女の立場で会話する姿を見て、
部屋の中に入ると、身なりを整えた
一歩前に出て
「今日から正式に、この二人が侍女としてお仕えする事になりましたので、何なりとお申し付けください」
そして、少し前に出た二人の小さな背中を見つめる。
「姉の
「
昨日の練習通り、二人は改めて自己紹介を済ませた。それぞれが一礼した後、今度は
「
「それと」
「「……?」」
次の言葉を待つ二人に、
「堅苦しい関係は嫌だからさ、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりするような近しい関係を築いていこう」
「「はい!」」
「私も仲間に入れて欲しいんですけど……」
緊張感の無い
和やかな空気が部屋に広がっていく。
いつになく穏やかな表情の
次の更新予定
珠景色の春風鈴 美珠夏/misyuka @misyuka817
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。珠景色の春風鈴の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます