侍屋敷家の姉妹
夕食を堪能した後、
「どうも、
「何か用?」
最初に反応してくれたのは、姉の
気の強そうな顔立ちの彼女は、二十一歳の最年長侍女だ。
艶のある黒髪を一つ結びにしていて、目立たない程度に化粧もしている。大人の雰囲気を纏う姿には、
「今日はお話があって来ました」
「それ、絶対に聞かないといけないやつ? 私、暇じゃないんだけど」
深く息を吐いた後、
鋭い眼光に貫かれそうになったので、心だけ華麗に避けておいた。
「もー、色ちゃんが困ってるでしょ」
空気を和ませるように、妹の
くせっ毛の黒髪をふわりと束ねる姿は、大人っぽいのにどこか可愛らしい。
この二人が
どちらも既に結婚していて、日中のみ宮殿で働いている。
「それで、それで! お話って何?」
聞く姿勢を取る
「侍女の配置転換をしようと思います」
「配置転換? 何言ってんの?」
「こらこら、最後まで聞く。ごめんね、続けてちょうだい」
怖い顔をする
「
「じゃあ、もう私達は用済みか?」
「風ちゃん」
「姫の成長に合わせて、侍女も成長していかなければなりません。ですので、今後は
一拍置いて、
「気になるのは、お二人の今後についてですよね?」
「お二人には、宮殿の仕事に専念して頂こうと思います」
重たい静寂に包まれるなか、
「ねぇ、色ちゃん。配置転換をしようと思った理由って、聞いても良いかな?」
そして、理由を一つずつ声に出していった。
本来の役目では無い侍女として、年下の姫に仕えるのは辛そうに見えたこと。
双子姉妹を侍女として育てる必要があること。
「侍女制度廃止の代替案として考えたのが、配置転換です」
説明を終えた
すると、
「だってよ、風ちゃん。態度に出てたんだね」
視線を逸らしたまま、
「勝手にすれば。私はただ働くだけ」
「『好きなようにやって良いよ。私は与えられた仕事をするから』」
困った表情でため息をついた
「……あとは二人で決めて。私は帰るから」
その言葉を残して、
再び静寂に包まれた部屋から顔を出し、
楽しそうに揺れる声が、強ばった
「怖いお姉ちゃんだよねぇ」
「怖すぎです。今日は特に緊張しましたよ」
「よく頑張りました」
誰かに褒めて貰えるのは久々で、少しだけ気恥ずかしい。
「
「私が居なかったらどうしてたの?」
「とりあえず泣き喚きますね。
「風ちゃんが姫だったら、侍女の私達はどうなっていた事でしょう」
「考えるだけでも恐ろしいですね。私だけ食事を禁じられた世界と同じくらい辛いです」
「大袈裟だなぁ」
「食べる事が趣味なので」
「その割には太らないよね。まだ若いから?」
「あまり気にしていませんでしたけど……確かに将来不安ですね」
年々、一回に食べる量とおやつの頻度は増加傾向にある。
太らないと油断していたら、膨よかな見た目を手に入れてしまうかもしれない。
「でも、食べますよ。美味しい物を見逃していたら、人生損しますから」
「うん。その方が色ちゃんらしい」
笑顔で頷いた後、
「もっとお話したいけど、私もそろそろ帰らなきゃ。ごめんね」
「すみません。突然来たのに、話を聞いてもらって」
「良いの良いの。また時間ある時にゆっくり話そう」
「楽しみにしています」
「うん。またね」
小さく手を振って、
「あ、配置転換の件、私も良いと思うよ!」
すぐに戻って来た
今度は
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