第7話 鱖魚群【さけのうおむらがる】

降谷小雪様


拝啓

 厳しい寒さの中、冬のひだまりがことのほか暖かく感じるこの頃。いかがお過ごしですか。


 さて、評価される作品がある一方で、評価されない作品も無数にあるとのこと、死後に評価されるまで、書き続けること、そのことによって【自分】が確立する、と、降谷先輩は先日のお手紙で書かれていましたね。


 それは、本当に才能があって、小説を書くことが好きで好きでたまらない人の話ではないでしょうか。死ぬまで書き続けるなんて、私のような凡人にはとうてい難しい話です。

 私などは、生きているあいだも日の目を見ず、死んだあとにも作品は残らないのではないか、と思っております。


 文学賞を受賞するなど、目に見えるかたちで評価されれば別ですが、そうでなければ、小説を書くことを好きでい続けるのは難しいです。


 なぜなら、私のような凡人にとって、自分の作品が目に見えるかたちで評価されないということは、自分自身を否定されたのと同じだからです。


 自分の頭の中から生み出した、キャラクター、ストーリー、文章、そして世界。そんなもの、腹を痛めて産んだ子と変わらないでしょう。


 それが否定されるのです。それでも好きでい続けろ、というのは、やっぱり難しい。


 私の考えがすべてだとはいいません。

 創作活動をする以上、【評価される】ということは避けては通れないものだというのもわかっています。


 けれど、できるならば良い評価をされたいし、悪い評価をされたとしても揺らがない、そんな【自分】になりたいのです。

                            敬具


  202×月12月17日

                          雨野千晴

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雨野千晴と降谷小雪の小説執筆にまつわる往復書簡 ヤチヨリコ @ricoyachiyo0

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