第6話 熊蟄穴【くまあなにこもる】
雨野千晴様
拝啓
本年も余日少なくなってまいりました。
いかがお過ごしですか。
さて、先日のお手紙には、揺らがない【自分】が欲しいとのことを書かれていましたね。
嫉妬や羨望を抱くのは私だってそうだ、と書くと、今の雨野さんには嘘っぽく感じるでしょう。
けれど、そうやって上ばかり見ていてもきりがないのです。文学の世界には、偉大な先達が大勢いますし、異才の後進がこれまた大勢います。しかし、そのなかで、日の目を見ずに消えていった作品や作家はそれよりも多いのも、また事実です。
自分やその作品をその末席に加えてもらうという気持ちでいればいいのではないでしょうか。その評価をされるのは、自分が死んだあとだと思っていればいいのです。
小説を書くことが【好き】という気持ち。
その気持ちを大事に、書き続けること。
そうして書き続けていれば、いずれ【自分】が確立していくのではないでしょうか。
忙しない師走。心身ともに調子を崩しやすくなる時期です。雨野さんにおきましても、体調に気をつけて、ご自愛ください。
敬具
202×年12月12日
降谷小雪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます