第5話 未来へ

 するとルカが、私の頬を濡らす涙を指で掬った。


「用心棒は今日で終わり。その代わり――」

 少し身をかがめて、彼は私の耳元で囁いた。


「俺と結婚してほしい」

 その言葉に耳が熱くなり、顔が真っ赤になる。


「ふぁっ!?」

 びっくりして逃げようとする私は、ルカにぎゅっと抱きしめられて硬直した。


「俺もおまえのそばにいたい。先に言われてしまったけどな」

 低くて優しい声色に、たまらず涙が堰を切って溢れだす。


「ルカ、大好き!」

 私は彼の背中に手を回してぎゅうっとくっついた。



 こうして私は自分の道を選び、新たな未来へと進む。

いつも笑顔で「おてんば姫」をからかいながら、愛してくれる大切な人がいる未来へ――。


 ちなみに私に「何もしなくていい」と言っていたお姉さまたち。末っ子王女の私がかわいくて仕方なくて、いるだけで良い!って意味だったみたい。どこにも行ってほしくないんだって。


 帝国に嫁ぐ日にはきっと大泣きされるんだろうな。



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六番目の王女は試験から逃げ出したい 宮永レン @miyanagaren

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