雪が降る日、僕は君に恋をした

坂口あーす

雪が降る日、僕は君に恋をした

 ある日、外を眺めようとカーテンを開けた。すると、外は辺り一面真っ白になっていた。

 結構降ったなと思っていたら、自分の家の近くで人が壁に寄りかかっていた。酔っぱらったおっさんが寝ているかなと思ったが、遠くからみてもおっさんではなく、女性だった。

 朝の外の気温は氷点下2℃なのでかなり寒いのにも関わらず、女性...否、彼女はかなりの薄着だった。このままでは死んでしまうかもと思い助けに行こうかとも思ったが、女の人が好きでもない男の家に上がるのは嫌なんじゃないかと。

 でも、このまま見過ごすわけにもいかないので僕は素早く身支度を済ませて、彼女の方へと急いで向かった。

 扉を開けて外に出た瞬間ものすごく寒かった。でも、この寒さの中彼女は薄着でずっといたのだからそっちの方がもっと寒いし、なんなら、マジで死んでいるかもしれないと思った。 

 僕は彼女がいるところへ向かった。

 「あのー。大丈夫ですか?」

 「・・・・・」

 呼びかけても返事がなかったので彼女の体を揺さぶってみることにした。

 そしたら、彼女は顔を上げて僕の方を見た。彼女の顔はとても整っていた。同じ人間とは思えないほどに美人だった。僕は彼女の顔を見た瞬間、心拍数が上がった気がした。

 「えーと、こんなところにいないで、家に帰った方がいいと思いますよ。」

 「....帰る、家が、ない。」

 そんなことを言った彼女の声は寒さのせいで声が震えているのか、それとも.....

 「....失礼ですが、おいくつですか?」

 「・・・・」

 僕がその言葉を言った瞬間彼女は鋭く僕を睨んできた。正直怖かった。

 「すみません。別に無理に答えなくても...」

 「十七歳。あなたは?」

 「あなたと同じ十七歳です。あと、同い年なんですから敬語やめません?」

 「分かった。」

 彼女と話していたら急に風が吹いてきた。とても寒くて僕はぶるぶる震えていたが、彼女の方は本当に死にそうな震え方をしていた。

 そんな彼女を見て僕は、「家に来ませんか?僕の家すぐそこなんで。」

 彼女はコクリと頷いた。 

 

 彼女は自ら立ち上がろうとしていたが、やはり自力で立ち上がれず僕が彼女をお姫様抱っこをして運んだ。

 なぜ、お姫様抱っこをしたかというと、美少女にこいうことをするのは今後絶対にないし、なんなら、そいうのに縁がないからこの機会にしたかったというただの私利私欲のためでやったことだった。

 普通に考えてたら、僕最低だな。

 

 幸いなことに家が近いので、僕は彼女を持ったまま家へと走って、彼女に風呂に入るよう促した。

 それから、彼女はよろめきながらも風呂場へと向かった。

 自分の着替えしかなかったので、とりあえず着なくなった服を脱衣所に置いた。

 

 十分くらい経った頃に彼女は風呂から上がってきた。

 「ありがとう。服まで貸してもらって。」

 「全然...」

 僕は彼女の方を見た瞬間目を疑った。

 彼女は顔は美人だとは思っていたが、スタイルまでいいとは思ってもいなかった。

 僕の服は少し大きすぎて、胸はそこまで強調はされてはいないが、そこそこ盛り上がっている。

 この服でそこまで盛り上がっているということは、かなり大きいと思う。

 僕は彼女の体をまじまじと見てしまっていた。

 「何?なんか、変?」

 「あ、いや、別に。」

 (あなたをエロい目で見てました、なんて言えねえよ)

 「あ、そう言えば自己紹介はまだしてなかったわね。私の名前は、鞍馬梨々香くらまりりか。あなたはの名前は?

 「僕は、高石昇たかいしのぼる

 「じゃあ、昇くんって呼ぶわね。あ、私のことは梨々香って呼んでくれると助かる。」

 「分かった。じゃあ、改めてよろしく梨々香。」

 「何がよろしく?私昇くんによろしくされることないんだけど」

 「え。だって、帰る家がないんだろ?」

 「うん。ないけど、私ここに住まないわよ。」

 やばい。普通に勘違いしてた。よく考えてみれば、一緒に住むなんて決まったことでもないし、ましてや、知らない男の家で一緒に住むなんて自分だったら、絶対に一緒には住まない。何やってんだ僕は。

 「ごめん。でも、これからどうするの?」

 「んー。またどっかで野宿とかしてようかなと。」

 「じゃあさ、これから俺と一緒に住まない。俺一人暮らしだから親いないし。しかも、親が奮発して一軒家買ったから、一人だと広すぎて逆にいてほしいなって。」

 「もしかして誘ってる?まぁ、でも、いいの?私達まだ、会って数十分しか経ってないのに。」

 「いやいや、こっちこそいいのかよ。同い年で、しかも、あまり知らない男の人と一緒に同居って嫌だろ。僕だって男だ。もしかしたら、あんなことやこんなことをしてしまうかもしれないし。」

 「昇くんはそんなことを私にするの?」

 「いえ。そんなことはしません。神様に誓ってもそんなことは」

 「ふふ。まぁ、多少男の人と一緒に暮らすことには抵抗はあるけれど、でも帰る家もないから、しばらく居させてもらいたいかな。少なくとも私は昇くんがそんなことしないって信じてるから。」

 

 少しした後、梨々香がお腹を空かせていると思い僕は冷蔵庫にあったもので料理をした。

 カツ丼を作って、梨々香と一緒に食べた。

 「美味しい。カツ丼ってどこも同じ味かと思っていたけれど、なんか昇くんが作ってくれたカツ丼って他のと少し違ってなんか新鮮。」

 「あんまり、美味しくなかった?」

 「そんなことは言ってない。」

 少し、機嫌を損なわせてしまったが、でもあまり人に自分の作ったものを評価されることがなかったので、こう言ってくれると料理をもっとしたくなる気持ちになる。

 

 それから、僕たちは食べ終えて軽い雑談をしていた。

 「部活は何やってるの?」

 「部活はやってない。」

 「そう。因みに私は卓球部よ。」

 「そうなんだ。梨々香は強いのか?」

 「まあね。団体はあんまし強くないけど」

 「強豪校とかに入らなかったのか?」

 「入りたかったけど、家から遠くなっちゃうし、なにより苅沢かるさわ高校は元々あまり強くない方なの。だから、見下されガチで...私は、この高校をこんなにも強かったんだなって周りから言わせてやりたいの」

 梨々香は本気でそう思っていると梨々香のその熱い目をみたら僕もなんだかサポートしたい気持ちになってきた。 

 卓球部。僕は昔卓球部に入っていたことを思い出した。


 中学一年生の時、僕は部活動をどこにするか決めるため最初に卓球部に訪れた。

 体育館の扉を開けると、ボールを強く打つ音が聞こえてきた。

 先輩たちが卓球をしてる姿がとてもかっこよくみえて、僕は卓球部に入るとすぐに決めた。

 それから僕は入部届を先生に渡し、自前のラケットを持って体育館へと足を運んだ。

 体育館に着いて僕は先輩たちにラケットの握り方や、サーブの出し方、基礎を教わった。最初はあまりできなく苦戦していたが、だんだん練習をしていったらできるようになってきた。

 卓球にはフットワークが求められる。素早く動いてボールを相手の所へ返さなければならない。だから、僕は体力作りも欠かさず行った。

 半年経つと僕は、一年生の中では一番上手くなっていた。

 大会では県大会までは行けたが初戦敗退をしてしまった。

 とても悔しくてそれからは、自分のどこが足りなかったのかを探し、それらを重点的に練習をした。

 そしたら、僕は校内で一番強くなった。一年生だが、普通の人たちとは倍の練習量をこなしていた。先輩たちには「一年生なのにすごいね」なんて言われたりもした。

 三年生の先輩たちがこの学校を卒業して、僕は二年生になった。

 夏の大会がもう少しで迫っていてそれに向けて、僕は沢山練習をした。

 大会当日。

 去年と同様僕は優勝した。

 前回の県大会では予選敗退をしてしまったので、僕は次こそは優勝して全国大会に行く。その目標を達成できるように、一年間練習をしてきた。顧問も変わり、うちの中学は市内では一番強い学校となった。去年とは比べ物にならないくらい、普段の練習量は多かった。

 それでも僕は、普段の練習量と自主練習を毎日こなしていた。だからだろうか。僕はなぜか、全国大会個人と団体両方とも優勝できるんじゃないのかとなんとなくそう思っていた。

 県大会当日。

 僕は、初戦こそは楽勝で勝ったが、二回戦目はかなり苦戦していた。というのも、全国常連の相手と戦っていたからだ。それでも僕は何とか2セット取れた。

 最終セット。このセットを取らなければ負けてしまう。だから僕は、初球からおもっきり打つと決めた。

 相手がサーブをした。回転は下回転だったので、初球から振れた。その後も僕は全部初球で打った。

 「シックスラブ。」 

 審配がそう言って、相手がサーブをする。今度は横回転だった。あまり回転はかかっていなかったので、迷わずラケットを全力で振った。

 11-2で、僕は全国常連に勝った。

 それ以降、あまり強い人とは当たらず、県大会の最終的な結果としては、個人と団体ともに優勝し全国進出を果たすことができた。

 それからは、また一段と練習に力を入れた。

 全国大会当日。

 初日は団体だった。準決勝までは順調に勝ち進んでいたが、決勝戦になり、中学で一番強い三島中学校とあったた。

 僕は、三島中のエースと勝負することになった。

 最初のセットは取られてしまったが、二セット目はなんとかとることができたが、今までが遊びだったかのように三セット目は、2-11で取られてしまった。

 想像以上だった。最初はなんとか行けるかもなんて思っていたが、すべて逆を突かれてボールを返されていた。

 僕の思考を読んでいるかのようにすべて僕が思っていたとこの逆にボールが来た。

 僕はそれに対応が出来なかった。しっかりと対応できるようにもっと練習しとけばとも思ったが、この試合で対応できればもっと強くなれるのではないのかと僕は考えた。

 四ゲーム目。

 このゲームも僕が思っていたところの逆にボールが飛んできた。

 前の僕だったら取れなかっただろう。でも僕は対応できるようになりたい。その一心でボールが飛んできた方向に足を横に移動させて、打ちやすいポジションに入った。

 僕は全力でラケットを振った。

 僕が打ったボールは110キロくらいの速さで相手のコートに入った。

 相手は対応が遅れてボールを取りそこなっていた。

 

 そのあとのゲームはすべて僕が取り、三島中のエースに勝った。

 チーム全体の結果としては、 三島中には負けてしまったが、僕は悔しというよりも一番強い人に勝てたので満足していた。


 団体の次は個人に入った。

 僕は、たくさん強い人たちと戦ってきた。

 だから、もしかしたら優勝できるかもしれないと思っていた。

 でも、そうはいかなかった。

 初戦の最初と次のゲームは取れたが、そこからは、全然ダメだった。

 足が思うように動かず、動くたびに激痛が走っていた。

 それでも勝ちたいと思い痛みに耐えながらも足を動かした。

 でも、勝つことはできなかった。

 悔しかった。

 練習をしすぎてしまった結果がこれだ。

 

 それから、僕は医者に行った。

 「えー。変形性足関節症ですね。多分何回か捻挫をしたり、無理に運動をしすぎたのかもしれませんね。

 「あの、先生。それって治るんでしょうか。」

 「現時点では何とも言えませんがリハビリや、治療等を行ってもらいます。ですが、それでも改善しない場合は手術も検討をしないといけないですね。まぁ、しばらくは運動などはできないですね。」

 「じゃぁ、部活はもうできなくなってしまうんですか。」

 「現時点ではそこまではいかないとは思いますが、前より過度な運動ができなくなってしまいます。」

 

 それから、僕はリバビリなどを頑張り、なんとか普段通りには過ごせるようになったが、運動はあまりできなかった。

 大会に出ても、思うような結果は出ず僕は途中で退部した。

 僕が居ても足手纏いにしかならないし、怪我した時から、今までより活躍ができないのは分かりきっていたことだ。

 なのに、僕は、なぜか泣いていた。

 

 それから、運動は前よりもしなくなった。

 僕はそんな苦い記憶を思い出した。

 梨々香は昔の僕にそっくりだった。

 具体的には、卓球に対する姿勢と眼差し。

 そんな彼女を見ていると、なんだか僕も、卓球をやりたくなってきた。

 でも、やりたくてもできない。

 また、怪我をするのが怖い。怪我して、今度は手術までしないといけなくなるかもしれない。

 それが僕にとってはとても怖かった。

 「そう言えば、昇くんはどこの高校なの?」

 「梨々香と同じ苅沢だよ。」

 「そうなんだ。じゃあさ、卓球部に入ってみない?」

 梨々香に誘われた瞬間少し嫌な顔をしてしまった。

 「あ、ごめんなさい。もしかして、なにか気に障ってしまったかしら。」

 「いや、少し嫌な思い出があってね。」

 「私、そうとも知らずに。本当にごめんなさい。」

 「全然いいよ。もう昔のことだし。」

 

 梨々香はそれ以上は何も聞いてこなかった。

 僕としてはありがたいが、彼女はもしかしたら聞きたかったかもしれない。

 「じゃあさ、今度大会があるから見にきてくれない?」

 「別に構わないけど。」

 「ありがとう!それじゃあ...」

 それから、梨々香は僕に日時と場所を伝えた。

 

 僕は、梨々香に、見にきてほしいと言われ、大会の会場である大体育館に来ていた。

 僕は、梨々香の姿を見つけた。

 ちょうど今から対戦をするようだ。

 そして、梨々香のプレイを見て、この中でも一番強いかもしれないと思った。

 予想は的中していた。見事、梨々香は地区大会優勝を成し遂げた。

 梨々香は僕の姿を見つけて、笑顔で駆け寄ってきた。

 「どうだった?私の卓球。」

 「どの選手よりも強かった。あと、普通に基礎がちゃんと活かせてるんだなって思った。」

 梨々香は顔を赤く染めて、「ありがとう。」と言った。

 それは、照れているのか、それとも恋愛的な感情が生まれて赤くなったのかは今の僕にはまだ分からなかった。

 でも、今回梨々香の卓球を見て、改めて惚れ直してしまった。

 路上で助けた時から綺麗だなとも思ったが、その翌日に、昨日よりも可愛くなっていてびっくりした。なぜ、1日でこんなに可愛くなるのかは分からなかった。

 正直一目惚れをしてしまった。

 だって、こんな可愛い女性を生まれてこの方見たことがなかい。

 可愛いなと思う女性は何人かいたが、これほど抜群で、可愛くて、スタイルも良くて...もう、すべてが整っている。

 僕はそんな彼女に恋をしてしまっている。

 だから、僕はこの感情を、どうしても梨々香に伝えたいと思ってしまった。

 「梨々香。僕、梨々香に伝えたいことがあるんだ。」

 「待って。その続きは、私が全国で優勝したら、聞かせて。」

 「っ、分かった。」

 「ありがと。」

 梨々香はそう言って、チームメイトの方へ行った。


 梨々香は、まだ僕の家に滞在している。

 家に戻った方がいいんじゃないかとも伝えたが、「あの家には帰りたくない」と言っていた。

 「なんで、帰れないの」なんて無責任なことは言えなかったので、あまり深くは触れなかった。

 それから、梨々香は毎日卓球の練習に没頭していた。

 「あまり、練習しすぎない方がいいよ。怪我とかするよ。」

 「私は、もっと強くなりたい。だから、今までの練習だと、全国にはいけない。」

 「だとしてもだよ。もし、足首を何回も捻挫して、我慢して大会に出て、一生出れなくてもいいのかよ。」

 僕は梨々香に向かって少し強い口調で言ってしまった。そんな梨々香はなにか、疑問に思ったようで、僕にこう言った。

 「昇くん、もしかしてだけど、昔卓球とかやってたの?」

 「っ...」

 「やっぱり。なんとなくそんなような気はしてた。で、なんで卓球やめちゃったの?」

 それから、僕は梨々香に卓球をやめた経緯を説明した。

 僕が喋っている間梨々香は真剣に聞いていた。


 「そうなのね。分かった。じゃあ、私が昇くんが叶えられなかった夢を叶えてみせる。」

 何が分かったのかは分からないが、自信満々に梨々香は言った。

 僕は、彼女なら本当に成し遂げられるような気がした。

 「でも、あまり練習は無茶しない方がいいぞ。」

 「分かった。程々にしとくわ。」

 本当にわかっているのかと思ったが、梨々香の性格的に練習を本当に程々にするのだろうと僕は思った。

 

 それから、梨々香は順調に勝っていき、県大会を優勝した。

 僕は、梨々香が怪我をしないようサポートをしていた。

 

 全国大会当日。

 梨々香は、準決勝までは順調に勝ち進んでいた。

 決勝。

 梨々香は、高校生とは思えない巧みな技術で難なく2セットを取った。

 3ゲーム目。

 梨々香がサーブをし、相手がツッツキをして梨々香のサーブを返した。

 返ってきたボールを、梨々香はラケットを下に下げ、思いっきりラケットを上に振った。

 かなりのスピードと回転をかけて相手のところにボールを送った。

 相手は、ブロックをしたがあまりにも回転がかかっていて、ボールが斜めに飛んでしまった。

 それから、ずっとそんな感じが続いていたが、相手が梨々香の強打したボールをフルスイングで梨々香に返し、梨々香もそれに応じて返した。

 しばらくそれが続き、等々相手が打ったボールがネットに引っかかた。

 結果的に梨々香が全国大会優勝を成し遂げた。

 そして、彼女はトロフィーと賞状を掲げて笑顔で僕に見せてきた。

 「昇くんの仇を取ったぞー!」

 「はは。ありがと。」

 「いえいえ。この鞍馬梨々香は、日本の高校生で一番強いですから。」

 僕はそいう梨々香を見てなんだかホッとしていた。

 そして、僕は今日、梨々香に告白をする。


 「梨々香。こんなところで悪いが、梨々香に伝えたいことがあるんだ。」

 心臓が張り裂けそうなほど緊張した。そして、僕は勇気を振り絞って梨々香に伝えた。

 「鞍馬梨々香さん。僕は、あなたのことが好きです。僕と付き合ってください。」

 「っ....じゃあ、私に卓球で勝ったら付き合ってあげる。」

 


 それから、近くのスポーツ施設に足を運んだ。

 「昇くんが無茶をして怪我してもやだから、1セット先取で。」

 「分かった。」

 梨々香から、サーブを出して僕はそのボールをおもいっきり、下から上へとラケットを振った。

 かなりの速度でボールが梨々香の方に向かい梨々香は、反応ができなかった。

 11-4で僕の圧勝だった。

 まだ、鈍っていないことに驚いたが、なにより、こんなにも卓球が楽しかったなんて。

 「昇くん。なんか、楽しそうだね。」

 「梨々香のおかげでだよ。ありがとう。」

 「ううん。昇くんがそう言ってくれて嬉しい。」

 そして、僕は梨々香に向かって再度告白をした。

 「鞍馬梨々香さん。僕と付き合ってください。」

 彼女はこれまでに見たことのない笑顔で、「よろしくお願いします。」と言った。

 僕はそんな彼女の笑顔を見て更に好きになってしまった。


 出会いは最悪だったが、結果的に梨々香と出会えて良かったと思っている。

 もし、僕が怪我をしていなくて、卓球をまだやっていたのだとしたら、結末は変わっていたのかもしれない。

 いや、出会いが変わらなかったら、結末も変わらないだろう。

 

 それから、高校を卒業して、1ヶ月くらい経った頃に、梨々香が僕を誘ってきた。

 前から、梨々香のその豊満な、ゲッホ、ゲッホ、美しいボディーに触れてみたかった。

 まぁ、その後どうなったかはご想像にお任せする。


 これからは、梨々香を大切にしていきたい。なにがあっても、僕たちなら支え合いながら、生涯を共にするのだろうと僕は梨々香の黒く艶やかな髪を撫でながらそう思った。

 

 

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雪が降る日、僕は君に恋をした 坂口あーす @earth_sajaguchi

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