最終試験で腹下り

道楽byまちゃかり

騎士との手合わせ

 数多の試練を乗り越えて最終試験までやってきた。最後の試験は騎士と模擬戦するらしい。


 ここまで死に物狂いでやってきたんだ。耐久力チェックの腹パンや、ヨーグルト早食い競争を制してきた。


 負けてたまるか!


「最終試験だ。ルールは簡単。私が木刀を手放したら君の勝ち。以上!」


 ヴッ。な、なんだこの腹痛は……


 それに、尻から出てはいけないものが出そうだ。


「力量を試させてもらうぞ少年!」


「待て!」


「なんだもう降参か?」


「ちげえよハゲ。今お前が攻撃したら大変なことになるって言ってんだよ」


「少年がただならぬオーラを発しながら尻を押さえている。もしや、尻に隠しているのが君の虎の子だな!?」


 いや、うんこです。


「和式トイレ座りをしてるのも能力を使用するためには必要なのだろう。ならばその能力を使われる前に叩きのめすのみ」


 俺の腰目掛けて木刀でガンガン振り下ろしてくる騎士。対する俺は防御すらままならず、ていうか少しでも防御に意識を逸らせばブツが出てしまう状況……


「お、おい! やめてくれ……!」<ぷゥゥゥッ


「クッ、なんだこの臭い匂いは……まさか物理攻撃に対するカウンターか!?」


 いや、オナラです。


「迂闊に攻撃出来ないな。魔法を扱えない者に対するカウンター魔法。やるじゃないか」


 魔法じゃあない。うんこです。


「だが、私が木刀を手放さなければ試験は終わらないぞ。カウンターを解いて攻撃するしかないな!」


 な、なんだと。つまり、試験が終わらなきゃ便所に行けないってこと!?


 降参してぇ。でもここまで来たのに便意で降参は後で後悔しそう。クソッ、もう出そうだ。ここから動けない。


「なんだこの違和感は? 少年の切羽詰まった顔……まさか、まだ奥の手を隠してるのか!?」


 いや、うんこです。


「少年はこの試験を始めてからずっと尻を押さえている。もしかして、溜め技。溜めた魔力で攻撃する魔法を使っているのか!?」


 確かに溜めてるけど、ただの腹下りです。


「物理カウンターは陽動で、本命は溜めた魔法か。少し君を侮っていたようだ。私も騎士として最大限の敬意を込めて、我が奥義で葬ってやる」


「やめとけ……きっと後悔するぞ……」


「なに?」


「俺を攻撃すればきっと、あたり一面茶色いブツに侵され、お前もタダでは済まない。それと同時に、俺の汚名は末代まで受け継がれてしまうだろう……」


「フッ、放出を我慢してるかのような表情。ハッタリではないんだな。面白い。その茶色いブツとやらも。我が奥義、スターアサルトでぶち抜いてやる!」


 俺は一歩も動けず、騎士のスターアサルトをみぞおちへまともに受けてしまった。途端に尻から大量の汚物が流れていく感触を得た。


 俺は色んな意味で解放された。



         ◇



 凄惨たる景色を前に唖然とした表情の騎士が、気の緩みからか木刀を手放したことで俺は試練に合格した。それと同時に俺は大切なものを沢山失ったのだった。

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